工場や倉庫でAMRの導入を検討する際、
「うちは屋内運用だから、そんなに難しくないだろう」と考えていませんか?

しかし、実際には「床材の段差で走行不能」「通路幅が足りず立ち往生」など、屋内であるがゆえの落とし穴が数多く存在します。
さらに、「本体価格は安かったが、周辺設備や保守費用が想定以上だった」というケースも少なくありません。

本記事では、屋内専用AMRの導入で失敗しないために、
“導入現場の条件に適したモデルを選ぶための診断ポイント”と“価格対効果の見極め方”をわかりやすく解説します。

最後には、そのまま使えるチェックリストや選定フローチャートも掲載。
初めてのAMR導入でも「何を基準に選べばいいのか」が整理できる構成です。

屋内専用AMRの特徴と活用の基本

屋内対応と屋外対応の違いとは?

AMR(自律走行搬送ロボット)は、導入される環境に応じて最適な設計が異なります。屋内専用AMRは、比較的安定した床面・一定の明るさ・風雨の影響を受けない場所に特化しており、屋外用と比べて機構がシンプルな分、コストや保守性に優れています。一方、屋外対応モデルは段差・傾斜・雨風・強光など様々な外的要因への対応力が求められ、構造がより頑丈・複雑になります。

項目屋内専用AMR屋外対応AMR
主な利用環境工場・倉庫(屋内)屋外・建屋間
タイヤ構造小型ゴムタイヤノーパンク・全地形タイヤ
必要機能回避制御・人感センサー防水・傾斜対応・RTK測位

この違いを把握することが、選定ミスを防ぐ第一歩になります。

屋内AMRの主な活用現場(工場/倉庫/研究施設)

屋内用AMRは、特に以下のような業種・環境で活躍しています。

  • 物流倉庫:仕分けやピッキング搬送により、人手不足を補う
  • 製造現場:工程間の部品供給や完成品の移載に活用
  • 検査・研究施設:精密機器や書類の安全な自動搬送

これらの現場では、通路幅やレイアウト制限などに応じた“現場適合性”が非常に重要になります。

選定前にチェックしたい「導入適性」の見極め方

通路幅/レイアウト/積載物の条件を整理する

AMR選定で最も重要なのは、実際の使用環境に“フィットするかどうか”です。導入後に「通れない」「止まる」「曲がれない」といったトラブルが多く、現場側の条件整理が甘いと失敗の原因になります。

チェック項目内容想定値/基準
最小通路幅通行時の幅制限600〜900mm
床材の状態段差・傾斜の有無平坦な工場床が前提
積載物のサイズ搬送対象の最大サイズ長さ800mm以内が理想
人との接触共存エリアかありの場合はセンサー必須

これらの条件を事前に把握・整理した上で、適切なモデルを比較検討することが必要です。

現場別に異なる「対応ナビ方式」とその選定ポイント

AMRにはさまざまな誘導方式(ナビゲーション技術)があり、設置環境やレイアウト変更の頻度に応じて最適な選択肢が変わります。

ナビ方式診断フローチャート:
Q1:通路幅は狭い(600mm以下)ですか?
 ├─ Yes → スリム型+マーカー誘導を検討
 └─ No
    Q2:レイアウト変更頻度は高いですか?
     ├─ Yes → SLAM(2D/3D)方式を検討
     └─ No → 磁気 or QR誘導方式が有力

このように自社条件をマッピングしていくことで、モデル選定がぐっと明確になります。

屋内AMRの導入で起こりがちな具体的な失敗例や注意点については、こちらの記事も参考になります。
屋内専用AMRでも失敗する?倉庫や工場の環境条件で起こりがちな導入トラブルと注意点

コストパフォーマンスで見る「失敗しないモデル選び」

初期費用 vs 維持費用のバランスをどうとるか

AMR導入に際しては、「本体価格」だけでなく「周辺工事」「保守契約」「運用コスト」まで含めた総合的なコスト設計が必要です。特に屋内AMRは、複雑な外装や高出力仕様が不要なぶん、トータルコストを抑えやすい特徴があります。

費用項目概要備考
本体価格200万〜500万円スペック・ナビ方式により変動
通信設備・周辺工事50万〜150万円必要に応じて追加
保守費用(年)年間10万〜30万円程度専用保守パックあり
電気代(稼働)月2,000〜5,000円稼働時間・充電方式に依存

こうした費用構成を把握することで、「安いだけで選んで後悔する」といった失敗を避けられます。

価格帯別の導入効果とROIの目安

価格帯主な用途回収目安(年)
200〜300万軽量ピッキング・定型搬送約1.5〜2年
300〜400万部品・資材の工程搬送約2〜3年
400万以上マルチ用途・混在制御対応3年以上(高汎用性)

ROIシミュレーションは、実際の搬送回数・稼働時間・人件費単価などを基に計算します。

モデル選定に役立つチェックリスト付き診断フロー

診断ステップ:現場条件→モデル条件の照合方法

ここでは、実際にどう選べばよいのかを「質問形式」で整理します。

Q1:搬送対象の重量は?
 ├─ 軽量(〜50kg) → 小型AMR系
 ├─ 中量(〜150kg) → 汎用AMR
 └─ 重量(150kg超) → フォークリフトAMRも検討

Q2:搬送エリアに人が多く出入りしますか?
 ├─ Yes → 高感度センサー必須モデルを優先
 └─ No → 精度重視モデルでも対応可能

このフローを用いれば、製品選定前の方向性が明確になり、商談時の質問もスムーズになります。

導入シミュレーションの考え方

以下のような数値試算で、ROIの見通しをつけるのが一般的です。

  1. 月間の搬送回数(例:1日50回×22日=1,100回)
  2. 1回あたりの作業工数×人件費(例:5分×50円=250円)
  3. 年間削減額=250円×1,100回×12ヶ月=330万円
  4. 初期費用が300万円なら、約1年で回収可能

こうしたロジックをもとに、現実的な予算検討・上申資料作成がしやすくなります。

まとめ|自社に合う屋内AMRを効率的に見極めるには

AMRの選定は「難しそう」と感じられがちですが、実際には「現場の条件整理」と「基本的な知識の把握」ができれば、絞り込みは十分可能です。

本記事で紹介したチェックリスト・診断フロー・コスト評価の考え方を用いれば、導入の初期段階での失敗を避け、効率的な選定が可能になります。

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