「屋内で使うだけだし、そこまで慎重にならなくても大丈夫だろう」
──そう考えてAMRを導入し、稼働初日から停止トラブルに見舞われた現場は少なくありません。
実際には、屋内環境こそ“見落としがちな落とし穴”が多く潜んでいます。レイアウト通りに走れない、床材が滑りやすくて動けない、照明の影でQRコードが読めない。こうしたトラブルは、現場の条件とAMRの仕様が噛み合っていないことで引き起こされます。
この記事では、屋内専用AMRの導入において起こりがちな失敗とその原因を明らかにし、導入を成功させるための現場チェックポイントや選定プロセスを具体的に解説します。
チェックリストやマトリクス表も用意しており、「失敗を防ぐために何を確認すべきか」が明確になります。
「屋内だから安心」は間違い?想定外のAMR導入失敗例
倉庫で起きたレイアウトミスによる導線確保失敗
「屋内は障害が少ないから、導入はスムーズにいくだろう」──そう考えて、レイアウトの詳細設計を後回しにしてしまう現場が少なくありません。
しかし実際には、AMRの走行ルート上に「人の立ち位置が固定化している」「棚の出し入れ時に障害物がはみ出す」など、事前には想定しづらい問題が潜んでいます。AMRの通路が確保されていなければ、走行停止や衝突によるトラブルが起きかねません。
工場での床材不適合による走行不能の事例
工場では、耐薬品性や防滑性を重視した床材が使われていることが多く、AMRの小型ゴムタイヤではうまくグリップせず、スリップや空転を起こすケースがあります。
さらに、目視では分かりにくい微小な段差や傾きが、センサーやナビゲーション精度に悪影響を及ぼすことも。こうした問題は、事前に実機を使って走行テストを行うことで初めて発覚します。
トラブル内容 | 原因 | 想定される対策 |
---|---|---|
導線確保できずに停止 | レイアウト変更未反映 | 導入前の動線設計と仮運用の実施 |
脱輪・走行不能 | 床材が滑りやすい・段差あり | タイヤ種類の見直しと走行テスト |
経路ロスが多い | 経路が遠回り設計 | マップ最適化・通行制限の見直し |
こうした床材やレイアウト上の課題をクリアして、屋内専用AMRを成功裏に導入した工場の実例は、こちらで詳しく紹介しています。
→【活用事例】屋内専用AMRでも使えた!床材やレイアウト制限をクリアした工場導入の全貌
失敗の原因はどこに?環境条件と機種選定ミスの関係
段差/傾斜/照度/通信状況とセンサー不具合
屋内だからといって、環境条件がAMRにとって完全に理想的とは限りません。たとえば「照明の死角になる影」や「スロープ状の床材」「Wi-Fiが弱いエリア」など、センサーや制御系に干渉する要因は多くあります。
これらを無視して機種を選定すると、動作停止・ルート逸脱・誤認識といった問題が頻発します。
ナビ方式 | 傾斜あり | 照度変化 | 段差 | 周囲人通り多 |
---|---|---|---|---|
QR誘導 | △ | × | × | ◯ |
磁気誘導 | ◯ | ◯ | × | △ |
2D SLAM | ◯ | △ | △ | ◯ |
3D SLAM | ◎ | ◎ | ◯ | ◎ |
このように、環境とナビ方式の相性をきちんと検討することが、トラブル回避の前提条件になります。
AMRのナビ方式と現場条件の相性ミス
QR誘導はレイアウトが固定された倉庫に向いており、SLAM方式は構造変更が多い製造ラインに適しています。ところが、カタログスペックだけで選定してしまうと「導入直後から認識エラー」「構内レイアウト変更のたびに再設定が必要」など、想定外の手戻りが発生する原因になります。
現場チェックで防ぐ!導入前の見落としポイント
事前検証と実機テストの重要性
AMRの真価は、「実際の現場で使ってみないと分からない」という特性があります。想定上は問題なく見えても、実地検証を通じて初めて分かるリスクは多く、特に段差越えの限界・回避動作の挙動・停止精度のブレなどは実機でしか確認できません。
ベンダーとの調整では、この仮設置テストを必ず条件に含めるべきです。
図面だけではわからない「現場のリアル」
図面上では明確でも、実際の現場では「配線が床を横切っている」「昼と夜で光量が大きく変わる」「通路脇に一時的な荷物置き場がある」など、動作に影響を与える要素が想像以上に多く存在します。
机上の検討だけで完了させず、“現場を歩く”ことが何よりのトラブル予防になります。
確認項目 | 内容 | 現場チェック方法 |
---|---|---|
床の滑り・凹凸 | 滑り止め/段差の有無 | 実機試走・歩行チェック |
光量の変化 | 日差し・夜間照明 | Lux計で測定、時間帯確認 |
通信状況 | Wi-Fi・5Gエリア | 通信速度/死角マッピング |
想定外の障害物 | 柱・台車・人の動線 | 実地観察と写真記録 |
失敗を防ぐ導入プロセスと業者の選び方
ヒアリング・実地調査・仮運用の3ステップ
導入を成功させる現場では、必ず以下の3段階を経ています。
STEP1:ヒアリング(運用目的・課題・搬送対象の整理)
STEP2:実地調査(通路・段差・照明・人の動線を確認)
STEP3:仮運用(導入予定ルートでの試験運転)
この流れを踏むことで、事前にリスクを可視化し、対策を講じたうえで正式導入に移れるため、トラブル発生率が大幅に低下します。
注意すべき導入パートナーの特徴
経験の浅い業者や、価格だけで競争しているパートナーの場合、ヒアリングが不十分で「とりあえず納品」となることもあります。逆に、信頼できる業者は「現場条件のヒアリング」→「導入後の使用シーンまで想定した提案」を行います。“売って終わり”ではなく、“使いこなせる導入”を重視する業者選びが成否を左右します。
まとめ|トラブルを未然に防ぐための注意点とは
屋内対応だからこそ、細かい現場条件の見落としが致命的な結果を招きます。AMR導入で失敗しないためには、実機検証・現地観察・事前仮運用の3つを徹底し、「現場と技術のズレ」をなくす視点が必要です。
加えて、AMRの特性に合ったナビ方式の選定や、長期的な視点でサポートを行うベンダー選びも欠かせません。この記事のチェック項目とプロセスを活用して、自社にとって本当に“止まらないAMR”を導入できるよう、計画的に進めてください。
→ AMR導入を成功させるための「現場チェック&失敗回避ポイント」資料を配布中
導入判断に役立つチェック項目、事例付きで整理。AMR検討中の方に最適な実務向けガイドです。