株式会社匠のリフト型AGV「TiTra G500」：大型物流倉庫における棚搬送の自動化を実現

近年、物流現場や製造業における人手不足と作業効率の向上要求により、自動化技術の導入が加速しています。その中でも、移動作業の負担を減らしながら正確かつ柔軟に棚を搬送できるリフト型AGV（無人搬送車）への注目が高まっています。

株式会社匠が開発した「TiTra G500」は、こうした現場の要請に応えるハードウェア性能と運用の柔軟性を兼ね備えた製品です。本記事では、TiTra G500の技術的特徴、適用領域、導入効果についてご紹介します。

TiTra G500の基本スペックと走行性能

最大積載500kg・高精度停止を実現するハードウェア仕様

TiTra G500は、最大積載量500kgと重積載対応でありながら、車体重量245kgという軽量構造を実現しています。本体寸法は950mm（長さ）×720mm（幅）×290mm（高さ）と、狭小エリアでの運用にも対応可能なコンパクト設計です。電源はDC24Vリチウムイオンバッテリーを採用し、バッテリー持ちと充電速度のバランスを取りながら長時間稼働に対応します。

走行速度は用途に応じて5m/minから120m/minまで柔軟に調整可能で、異なる搬送ニーズに対応します。停止精度は±10mmと高精度であり、位置誤差の許容度が小さい設備連携工程でも安定した運用が可能です。

二輪速度差制御とスピンターン機能による柔軟な走行

TiTra G500の操舵は、二輪速度差制御によって行われます。この機構は、車体左右の駆動輪の回転数を独立制御することで、前進・後退はもちろん、その場でのスピンターンも可能にするものです。これにより、狭い通路や障害物の多い搬送ルートでも柔軟な軌道変更が可能になります。

自己位置認識には、床面に敷設された2次元コードを読み取るGRID方式を採用しています。これにより、事前に設定されたルートを正確にトレースすることが可能で、誤差の蓄積による位置ズレを防ぎます。これらの機能が、TiTra G500の高精度搬送を支えています。

TiTra G500の適用領域と導入効果

棚搬送によるピッキング効率の飛躍的向上

従来、人が広大な倉庫内を移動して商品を棚からピックアップする作業には、多くの時間と労力がかかっていました。TiTra G500は、この「人が棚へ行く」作業を「棚が人のもとへ来る」工程に転換する製品です。作業員は定位置でピッキング作業に集中することができ、歩行距離と作業負荷が大幅に軽減されます。

停止精度が±10mmという高精度のため、棚の位置が正確に合わないと作業に支障をきたすような工程、例えばオートピッキングシステムとの連携や仕分けラインとの統合などにおいても、高い適合性を示します。

多品種・大量在庫を扱う大型物流拠点に最適

大型物流倉庫では、多品種・小ロット管理が一般的になっており、ピッキング対象の商品が広いエリアに分散しているケースが多く見られます。このような環境では、1回のピッキングで移動する距離が長くなりがちで、人的リソースの消耗が避けられません。

TiTra G500を導入することで、棚単位で商品を作業員の手元まで搬送できるため、作業のばらつきが減少し、全体のピッキング時間が平準化されます。これにより、作業員1人あたりの生産性が向上し、繁忙期における人員の追加配置を最小限に抑えることが可能になります。

コンベヤ困難エリアや人混在ルートでの有効性

工程間搬送の自動化と人との共存走行への対応

製造ラインにおいては、各工程間をつなぐ搬送部分にコンベヤの導入が難しいケースが多々あります。その理由としては、作業者の導線確保、設備の柔軟性、保守のしやすさなどが挙げられます。

TiTra G500はこうした制約に対応するために、無人搬送ながらも人との共存走行が可能な設計となっています。床面のGRID読み取りにより、定められたルートを逸脱せずに走行するため、歩行者と同じスペースを安全に共有可能です。公共施設や病院、ショッピングセンターなど、不特定多数が往来する空間での運用も視野に入れた設計となっています。

エレベーター連携による多層階搬送への対応

TiTra G500は、エレベーター制御装置との連携によって、複数フロアにわたる搬送業務にも対応可能です。たとえば、1階で荷物を受け取り、3階の仕分けエリアまで自動で搬送するような運用にも適応します。

これにより、ビル型の物流拠点や垂直統合された工場など、従来は搬送に人手が必要だった構造の施設でも自動化の恩恵を受けることができます。

TiTra G500が短納期・低コストでの導入が可能な理由

シンプル導入とルート固定化運用への最適設計

AGVの導入では、多くの場合WMS（在庫管理システム）や上位制御との連携が必要となり、初期投資やシステム開発期間が長期化する懸念があります。TiTra G500は、「決まったルートを繰り返し搬送するだけ」といった用途にも対応しており、WMS連携不要の単独運用が可能です。

これにより、コストを抑えて短期間での導入が可能となり、検証導入や限定エリアでの試験運用といった段階的な導入戦略にも柔軟に対応します。現場の改善ニーズに応じて、導入範囲を徐々に拡張するステップアップ方式が取れる点も、大きな利点です。

既存パレット活用によるフォークリフト代替

TiTra G500は、現在使用している汎用パレットをそのまま搬送可能な設計となっています。これにより、専用の架台や新たな搬送規格を導入することなく、既存の資産を最大限に活用できます。

特に、フォークリフトによる庫内搬送に依存していた現場では、TiTra G500による自動搬送への置き換えにより、労働災害リスクの低減や労務費の削減が可能になります。

TiTra G500：多様な現場ニーズに応えるリフト型AGV

TiTra G500は、最大500kgの積載能力と±10mmの停止精度、高い走行柔軟性を兼ね備えたリフト型AGVです。大型物流倉庫における棚搬送から、工程間搬送、自律走行型のフロア間移動まで、多様なニーズに対応します。

加えて、WMS連携なしの単独運用や既存パレット活用といった柔軟な導入形式により、現場ごとの制約にも対応可能です。

導入による作業負荷の削減、移動時間の短縮、人的ミスの防止といった多方面の改善効果を見込めるTiTra G500は、物流・製造現場の自動化において、堅実かつ効果的な選択肢といえるでしょう。