段差や傾斜のある現場にAMRを導入したのに、「なぜか止まる」「想定より登れない」──そんな声を現場で聞いたことはありませんか?
実はその“うまくいかない理由”、多くの場合がスペックではなく「選定ミス」。
つまり、走破性の高さではなく、“どんな段差や傾斜に強いか”という相性の見極めにこそ、成否の分かれ道があります。
この記事では、現場環境に応じてどんなタイプのAMRが合うのかを、走破性の観点から診断形式でわかりやすく整理。
「スペックだけでは選びきれない」という導入担当者の悩みに、具体的な判断軸を提供します。
停止・空転・故障──実際のAMRトラブルから見る現場の課題
工場や物流現場にAMRを導入したものの、「段差でつまずく」「傾斜を登れず停止する」「床面との摩擦で空転する」といったトラブルは珍しくありません。とくに屋外や傾斜のある倉庫通路では、わずかな地形の違いが走行性能に大きく影響を与えます。これらの問題は、単なるスペック不足ではなく、選定時の「環境との相性」ミスに起因することが多いのです。
AMRの構造と環境対応の関係とは
AMRの走行性能は、本体構造・タイヤ形状・駆動方式・センサー認識など複数の要素に依存します。たとえば、全方向タイヤのAMRは方向転換に優れているものの、段差を超える力には弱く、床材や傾斜角によっては停止や空転が発生します。導入現場に適した構造であるかどうかを見極めることが、安定稼働の第一歩です。
段差・傾斜への対応力を見誤ったことで起きるトラブル事例については、こちらの記事もご参照ください。
→ 段差・傾斜対応AMRの誤選定に注意|現場環境との相性で起こる走破性トラブルとは?
AMRの走破性に影響する主な要素とは?
タイヤ構造(全方向・エアタイヤ・クローラーなど)
タイヤ構造は、AMRが地形を乗り越える力に直結します。たとえば、クローラー式はキャタピラのように地面をつかみながら進むため、段差や傾斜でも滑りにくく、悪路走行にも対応可能です。一方、全方向タイヤはスムーズな回転が得意で屋内では便利ですが、段差を乗り越えるには不向きです。現場の床材や凹凸の有無によって、最適な構造は大きく変わります。
駆動方式と出力(2WD/4WD、登坂力)
AMRの動力源は走破性に直結します。特に傾斜がある現場では、登坂力やトルク性能が求められます。2WDは軽量で消費電力も抑えられますが、4WDのように左右独立した動作ができないため、登坂時に片輪が滑ると立ち往生する可能性があります。傾斜の角度だけでなく、荷重や滑りやすい路面との組み合わせにも注意が必要です。
センサーと地形把握能力(RTK、LiDARの違い)
傾斜や段差を正しく認識し、適切な制御を行うには、AMRに搭載されたセンサーの性能が鍵を握ります。LiDARは屋内での位置推定に優れ、物体との距離測定に強い一方、屋外では反射率や天候の影響を受けやすいです。GNSSとRTKを組み合わせることで、屋外でも高精度な自己位置推定が可能になり、複雑な地形でも正確な走行が実現します。
要素 | タイプ | 特徴/メリット | 対応環境例 |
---|---|---|---|
タイヤ構造 | クローラー | 段差乗り越えに強い | 屋外/不整地 |
エアタイヤ | 衝撃吸収・滑りにくい | 傾斜/段差あり | |
全方向タイヤ | 小回りが利くが段差に弱い | 屋内の平坦路 | |
駆動方式 | 2WD | 軽量・省エネ | 屋内/軽搬送 |
4WD | 登坂・滑りに強い | 傾斜・段差の多い現場 | |
センサー | LiDAR | 幅広い認識、天候に比較的強い | 屋内・屋外両用 |
RTK+GNSS | 屋外特化、高精度位置制御 | 屋外全般 |
環境タイプ別|最適なAMRタイプ診断フロー
段差や傾斜といっても、その組み合わせや使用環境は多様です。以下のフローチャートから、自社に合ったAMRの走破性タイプを診断してみましょう。現場環境に応じて、どの構成要素を重視すべきかが明確になります。
[現場は屋外か?]──はい→[舗装されている?]──はい→[段差がある?]──はい→[4WDタイプAMR]
└──いいえ→[全地形対応AMR(クローラー)]
└──いいえ→[通路傾斜あり?]──はい→[登坂性能重視タイプ(大径タイヤ+4WD)]
└──いいえ→[一般型AMR(全方向駆動可)]
AMR選定時に見落としがちな比較ポイント
同一スペックでも現場条件で性能差が出る理由
カタログスペックだけを見て選定すると、現場での思わぬ落とし穴に気づけません。たとえば、最大段差30mmと表記されていても、段差の前後の傾斜角や荷重条件、床材の摩擦係数によって走破できない場合があります。現場テストやデモ機の確認が有効です。
メーカー比較表で見る対応力の違い(簡易表)
導入実績の多いモデルでも、構造が異なれば性能差が顕著に表れます。自社の導入環境に近い条件での事例を参考にすることが重要です。
モデル名 | 対応地形 | 最大段差 | 登坂能力 | タイヤ構造 | センサー方式 | 特記事項 |
---|---|---|---|---|---|---|
Model A | 舗装/屋外 | 30mm | 10度 | エアタイヤ | LiDAR+RTK | 雨天対応 |
Model B | 不整地/屋外 | 50mm | 15度 | クローラー | GNSS+RTK | 全地形対応 |
Model C | 屋内 | 10mm | 5度 | 全方向 | LiDAR | 小型/狭小スペース |
まとめ|AMRの導入は、まずは「環境」と「走破性」から逆算しよう
走破性の誤判断は、導入後のトラブルにつながりやすい要素です。段差や傾斜は、AMRにとって「越えられるかどうか」の重要な壁です。自社の環境(屋外か、傾斜・段差の有無、舗装状況など)を見極めたうえで、AMRの走破性能とマッチしているかを選定段階から丁寧にチェックしましょう。
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選定時の判断を確かなものにするには、“現場目線”で選ぶための基準が必要です。
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