「AMRを導入すれば、人手不足も解消して効率もアップする」──そう考えて導入した結果、かえって現場が混乱したというケースは珍しくありません。
通路幅と合わず通れない、棚の構造に対応できず止まる、人との動線がかぶって作業が進まない──失敗の多くは、“AMRそのもの”ではなく、“現場との相性”を見誤ったことが原因です。
本記事では、そうした失敗を回避し、現場と丁寧に向き合って「使えるAMR選定」に成功した倉庫の導入事例を詳しく紹介します。選定の工夫や稼働後の改善プロセスまで、他では読めない実例をもとに解説しています。
AMR導入前の現場状況と課題
この倉庫では、特にピッキング工程に課題を抱えていました。
- ピッキング作業が特定作業者に偏り、人によって作業スピードやミス発生率に差がある
- 入出荷数の波が激しく、手作業だけでは対応しきれない日が多発
- パート人材で補おうにも人員確保が難しく、抜本的な効率化が必要に
そこで、ピッキング後の搬送をAMRに任せることで、作業者は「ピック」に集中し、搬送効率を安定させるという案が浮上しました。
現場課題とAMRに求めた解決策
現場課題 | 発生要因 | AMR導入で期待した効果 |
---|---|---|
作業負荷の偏り | ピッキングが一部作業者に集中 | 自動搬送で業務分散 |
作業量の変動対応難 | 日々の入出荷波動が大きい | ピーク対応力の確保 |
ヒューマンエラー | 急ぎ作業で確認不足が多発 | 安定処理によるミス削減 |
ピッキングAMRの選定過程と採用理由
複数候補の検討と比較ポイント
最初に比較したのは3社のモデル。それぞれに特色がありましたが、「現場で確実に使えるか」を重視して比較ポイントを設定しました。
特に確認したのは:
- 通路に対して余裕をもって走行できる本体幅か
- 誤認識の少ないセンサー構成か
- 停止位置の再現性(±mm単位の安定精度)があるかどうか
AMR候補比較表
比較項目 | A社モデル | B社モデル | 採用モデル(C社) |
---|---|---|---|
本体サイズ | 大きめ | 小型 | 中型(倉庫に適合) |
搬送速度 | 高速だが不安定 | 安定だが遅い | 両立(中速+安定) |
通路対応幅 | 900mm〜 | 800mm〜 | 750mm〜(棚間に適合) |
「ピッキング作業に適したAMRの選び方について、より詳しく知りたい方は、こちらの診断ガイドも参考になります。
→ ピッキング作業に強いAMRを選ぶには?倉庫内業務に合う搬送タイプ診断ガイド
実証実験・現場テストの実施内容
- 養生テープで仮ルートを作成し、AMRの走行をテスト
- 棚端や角棚でセンサーが反応するかを重点的に検証
- ピーク時(10:00~12:00)にAMRと作業者の動線が干渉しないかを確認
最終選定の決め手
- 倉庫通路の最狭部(780mm)を安全に通過できたのはC社モデルのみ
- 棚構成の死角に対するセンサー認識率が高かった
- テスト期間中のメーカーの対応スピードと改善提案の質が高く、信頼できた
AMR選定までの流れ
【選定プロセス】
課題整理 → 候補抽出 → 現場検証 → 試走比較 → 採用決定
AMR導入後の運用フローと改善効果
AMR導入後、搬送作業が自動化されたことで、ピッキング作業者の動きが明らかに変わりました。
- 人が移動しないことで疲労が減少
- 搬送ルートが安定したことで作業テンポが一定に
- 日々の稼働ログを分析し、ルートやスピードの微調整が可能に
Before→After 比較
指標 | 導入前 | 導入後 | 改善内容 |
---|---|---|---|
搬送件数/日 | 約200回/人力対応 | 約280回(AMR自動化) | 約40%効率向上 |
作業時間/日 | 7.5時間 | 5.5時間 | 約2時間の時短 |
必要作業者数 | 4名 | 3名 | 1名削減(別工程へ再配置) |
AMR導入成功の裏にあった「選定の工夫」
棚配置と通路幅の再設計
- AMRの最小旋回半径に合わせて棚の角度を微調整
- 見逃しがちな“棚端の干渉ポイント”を実際に搬送ルート上で再測定
段階導入と運用検証のプロセス
- 最初は「高頻度ゾーン」のみでテスト導入
- ログを取って停止時間/手動介入回数を毎日記録し、週次レビューで改善
社内説得資料の工夫(稟議通過のポイント)
- Before/Afterの数値と図解をセットで資料化
- テスト運用中の現場作業者のコメントを添付して、「現場の声がある」説得力を演出
段階導入プロセス
【導入ステップ】
棚・通路再設計 → 限定導入 → 教育+ログ取得 → 全面展開 → 成果共有
まとめ|ピッキングAMR導入事例から学ぶ成功の道筋
この事例が示すのは、導入成功の鍵は“AMRそのもの”ではなく、“現場に合うかどうか”を見極めるプロセスにあるということです。
- 課題を明文化し、「何を解決したいのか」を最初に明確にする
- 候補選定では“現場検証”を中心に判断する
- 限定導入→レビュー→展開という流れでトラブルを未然に回避する
この3ステップを丁寧に踏むことで、失敗を避けながらスムーズな導入が可能になります。
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