工場や物流現場で「人手不足」「作業効率の限界」「安全性の確保」に悩んでいませんか?
自律搬送ロボット(AMR)の導入は、こうした課題を抜本的に解決する手段として注目を集めています。
特にオムロンのAMRは、大手ならではの信頼性と拡張性を兼ね備えた選択肢として多くの現場に導入されています。
とはいえ、オムロンだけが選択肢ではありません。中小AMRベンダーも近年は実力を伸ばしており、価格・柔軟性・スピード感において強みを持つ企業も増えています。
本記事では、オムロンAMRの特長・導入事例・技術的優位性を徹底解説した上で、他社との違いまで客観的に比較。「自社にはどのAMRが本当に合っているのか?」を判断するための材料を提供します。
導入の判断に迷っている方、まずは1台だけ試してみたい方にも役立つ内容です。
まずは読み進めて、自社に最適な選定のヒントを掴んでください。
オムロンAMRの実力とは?自律搬送の核心技術と導入メリット
自動化を本格的に進めたい現場において、「人手不足をどう補うか」「限られたスペースで効率をどう上げるか」という課題は非常に切実です。そんな中、オムロンのAMR(Autonomous Mobile Robot)は、単なる搬送ロボットではなく、自律走行・高精度停止・一括制御管理まで備えた“現場適応型ロボット”として注目を集めています。
特に、導入にあたって工場内の改修が不要で、柔軟にレイアウト変更にも対応できるという点は、固定式のAGVやコンベアにはない大きな利点です。
オムロンAMRの具体的な導入メリット
- 磁気テープ・ビーコン不要で初期工事不要
- 走行ルートや停車位置の変更もソフトウェア上で完結
- Fleet Managerで複数台を効率管理できるため、スケール運用が可能
- 高精度停止と多重安全機構により、人との協働も安心
- ERPやMESとの連携も可能で、DX基盤としての拡張性も高い
オムロンのAMRは、単なる“搬送装置”ではなく、生産性・安全性・柔軟性・拡張性のすべてを備えたスマート搬送ソリューションです。
主要シリーズ(LD/MD/HD)の違いと得意分野
シリーズの選定は、AMR導入の成否を左右する最も重要なポイントのひとつです。
オムロンは搬送対象の重量・現場の環境・搬送距離などに応じて、3シリーズ(LD/MD/HD)をラインナップしています。それぞれの特徴を明確に把握することで、「どれを導入すればいいか」という意思決定がぐっと現実的になります。
【シリーズ別比較表】
この表により、現場の用途ごとにどのシリーズが適しているかが一目で分かります。
シリーズ | 最大積載量 | 稼働時間(最大) | 得意な現場/主な用途 | 特筆機能 |
---|---|---|---|---|
LDシリーズ | 60〜250 kg | 最大13時間 | 中小部品の搬送、研究施設、クリーンルーム | CAPS(±8mm停止)/HAPS(±0.4°向き制御)/静音設計 |
MDシリーズ | 650/900 kg | 最大10時間 | 工場間搬送、ライン間供給、重量部品搬送 | 回転半径0mm/段差検知・昇降補助あり |
HDシリーズ | 1,500 kg | 最大12.5時間 | パレット/重量物搬送、フォークリフト代替 | Acuity(天井認識)/CAPS+リフト連動/パレット検知機能 |
特にLDシリーズは、高精度停止技術により±8mm以内の誤差で荷下ろしが可能で、AGVでは難しい「細かい位置決め搬送」を得意とします。一方、HDシリーズは従来フォークリフトで行っていた搬送業務を無人化できるため、重量物現場での事故リスクを大幅に軽減します。
搭載技術と強み(自己位置認識、障害物回避、Fleet Manager など)
オムロンAMRのコアとなる強みは、ハードウェア性能に加え、ソフトウェアによる自律走行制御と安全性への配慮にあります。
AMRが自律走行する仕組み
この図は、AMRが施設内で人や他の機器と衝突せず、自律的にルートを判断しながら走行するまでの全体フローを簡略化したものです。
[センサー群] → 施設マップ取得+周囲状況把握
↓
[SLAM技術] → 自己位置認識・ルート判断
↓
[Fleet Manager] → ルート調整・交通管理・複数台制御
↓
[モーター・制御機構] → 指定位置まで正確停止
このように、SLAMによる自己位置把握+リアルタイム交通制御があるため、オムロンのAMRは障害物を自動で回避しながら複数台で効率的に走行できます。Fleet Managerの導入により、最大100台まで同時に一括管理が可能です。
さらに、最新のAI画像認識技術を搭載したAMRによって、色・形・動く物体の高度な判別能力が実現され、より複雑な環境への対応が可能になります。AI画像認識技術については、以下の記事にて詳しくご紹介しています。
また、Acuity機能を活用すれば天井照明や固定構造物を目印にし、照明条件が変わっても自己位置を見失いません。これは照明変化や反射によって誤動作しやすい他社AMRとの差別化要素といえます。
オムロンAMR導入で得られる効果(省人化、安全性、生産性)
導入した現場で「どのくらい効果が出たのか」という実績は、もっともユーザーが気にするポイントです。以下に代表的な効果を紹介します。
- 月間平均400時間の搬送作業を削減(オムロン社内実績)
- 労働時間の40%を高付加価値業務へ移行可能に
- 360°センサーで人・物の接近を即時検知し、時速1m以下で緊急停止
- ISO 3691-4(産業用移動ロボットの安全規格)に準拠
- Fleet Managerによる最短経路制御で日当たり走行距離を約25%削減
- バッテリー残量に応じた自動充電・バッファ走行管理により、ダウンタイム最小化
導入前は想定しきれなかった効果として、「現場の作業動線が見直され、副次的に全体の生産フローが効率化した」という声も多く聞かれます。
より詳細な導入効果や人手不足解消、ROIの改善事例については、以下の記事をご覧ください。
オムロンAMRの導入事例まとめ|国内外の成功パターン
AMR導入を検討する際、多くの現場担当者が気にするのは「実際の導入先でどう機能しているのか」「どの程度の成果が出ているのか」という点です。
このセクションでは、オムロンのAMRが具体的にどのような現場で稼働し、どのような成果を上げているのかを紹介します。自社の現場にも近い業種や環境があるかどうかを照らし合わせながら読み進めてください。
オムロン社内工場での運用事例(包装搬送など)
オムロンは自社工場にて、AMRを実運用しながら開発と改善を繰り返しており、その知見とフィードバックを製品に反映しています。
包装工程でのデモ運用(LD‑60)
食品工場を想定した包材搬送実験にて、LD-60を用いた実証を実施。以下のような実用性が確認されています。
- レーザスキャナによる自己マッピングとナビゲーション
- 障害物の検知・自律的な迂回ルート選択
- ガイドテープ不要での運用
- レイアウト変更後の再マッピングが最短半日で完了
このレベルの柔軟性は、レイアウト変更が頻繁な現場にとっては非常に大きなメリットです。
オムロン滋賀工場(綾部/草津)
オムロンの拠点工場では、検査ライン・工程間搬送・構内配送など多様な搬送用途で自社AMRを導入。Web動画でも、製品組立〜最終工程まで一貫してAMRが稼働している様子が紹介されています。
他社導入事例(FUJI、Garnet、海外事例など)
以下は、オムロンAMRを導入した他企業の実績の一部です。日本国内外問わず、多様な業種・工程で利用が広がっています。
- FUJI(SMTライン)
自動機メーカーFUJIでは、SMT部品の供給にAMR+スマートローダーを導入。段取り作業を大幅に軽減し、熟練作業者の負荷分散を実現。 - OKIサーキットテクノロジー
山形県の基板製造工場では、AMRによる工程間搬送を導入し、全体生産性を10%向上。 - GlobalFoundries(シンガポール)
クリーンルーム環境にてLD-90を60台導入。24時間稼働体制で労働生産性が5%以上改善。 - Škoda Auto(チェコ)
LD-130CTが1日120回以上稼働、累計35kmを無人搬送。人員の安全性と作業効率を同時に向上。 - Vola A/B(デンマーク)
高級水栓メーカーVolaでは、9台導入から始め、FLOWによる集中制御を評価。段階的に構内全体へAMR展開を進行中。
成果データから見る導入効果(工数削減、搬送精度、安全性)
導入先企業の成果を定量的に見ると、AMRが単なる省人化ツールではなく、業務の再設計やフロー最適化に寄与していることが明確です。
以下は、代表的な導入企業における効果指標を簡潔に整理した表です。単に“無人搬送が可能”というだけでなく、工程設計全体にどれだけのインパクトをもたらすかを確認してください。
導入先企業 | 主な導入効果 | 数値的成果 |
---|---|---|
オムロン(三機工業連携) | 空調検査ロボ連携 | 工数75%削減 |
OKIサーキットテクノロジー | 工程間搬送の自動化 | 生産性10%向上 |
GlobalFoundries | クリーン環境での高頻度搬送 | 労働生産性5%向上 |
Škoda Auto | 日120往復・自律運用 | 搬送コスト削減・安全性向上 |
Vola A/B | フェーズ導入+集中制御(FLOW) | 担当者を他業務へ配置転換 |
この表が示すように、オムロンのAMRは単に搬送を自動化するだけでなく、「作業員の再配置」「安全性の向上」「業務の再設計」といった、現場全体の生産性と柔軟性の底上げに直結しています。

Factory DX
運営事務局
このように、オムロンのAMRは、すでに多様な業界・規模の企業に導入されており、その結果として得られる成果も明確です。
自社での導入を検討している方にとって、これらの事例は「導入後の具体的なイメージ作り」に役立つはずです。どの事例が自社の課題に近いかを照らし合わせることで、次のアクションに踏み出しやすくなります。
オムロンAMR導入フローと支援体制|初期調査から稼働後サポートまで
AMR導入は単なる機器の導入ではなく、「現場環境・業務フロー・人材教育・継続運用」すべてを含んだプロジェクトです。オムロンでは、現場ごとの最適解を見出すためのフェーズを明確に設け、導入後の成果が出るまでをトータルで支援しています。
導入ステップ(現場調査 → シミュレーション → 導入・運用)
AMRの成功導入には、単にロボットを搬入するだけでは不十分です。「現場の特性に応じた調整設計」と「教育・分析による継続的最適化」が不可欠です。以下はオムロンが推奨する導入7ステップです。
この導入ステップは、「まず1台試す」「社内評価後に横展開する」など、企業のフェーズに応じて柔軟にカスタマイズ可能です。
1. 現場調査:
導線幅・床材・障害物・Wi-Fi環境などを確認し、最適なモデルと構成を選定。
2. PoC/シミュレーション:
仮想環境での動作確認や、実機貸出による効果検証。上長・現場担当の納得感を醸成。
3. システム設計・仮導入:
Fleet Manager(FLOW Core)によりルート構成・スケジューリングを事前検討。
4. 本設置:
SLAM方式により、実環境マップ作成・ルート自動設計を最短半日で完了。
5. 操作教育:
現場作業者・管理者へ、運転/停止/設定変更/エラー対応などの研修を実施。
6. 運用最適化:
稼働ログを元に、走行ルート・バッテリー配置・待機タイミングなどを改善。
7. 拡張展開:
成果確認後、同一拠点での多台数運用や、他拠点展開に向けて再設計。
このような段階的設計により、「最初から完璧な全自動化」を目指すのではなく、“試す→学ぶ→広げる”という現場起点の導入プロセスが実現可能になります。とくに、PoC段階での合意形成と社内納得は、AMRの社内定着において極めて重要です。
コスト構造とROIの考え方
「AMRの導入にはいくらかかるのか?」という質問は非常に多い一方で、重要なのは単価ではなく“回収できるか”という観点です。オムロンでは、初期コスト・運用コスト・効果を踏まえたROI試算ツールを提供し、回収期間や貢献度を事前に定量化できます。
【コスト構成とROI要素】
[初期コスト] → AMR本体 + ソフトウェア + 設置工事 + シミュレーション設計費用
[運用コスト] → 保守契約 + 教育研修 + 拡張開発
[導入効果] → 搬送人員の削減 + 工程短縮 + 稼働時間延長 + ヒューマンエラー削減
[結果] → 回収期間の短縮/他拠点転用可否
たとえば、1人の搬送担当者の月額コストを15万円とした場合、1台のAMRがその稼働を代替できれば年間180万円の削減になります。
設置から1.5〜2年での投資回収を実現した事例も多くあります。単なる初期価格の比較だけでなく、「何を削減し、何を高められるか」という視点が重要です。
導入後の保守・アップデート体制
AMRは“設置して終わり”ではありません。日々の使用における消耗・環境変化・業務再編に対応するため、保守とアップデートは不可欠です。
オムロンは、導入後も以下の体制で運用を支援しています。
- 定期保守・予防点検:センサー・バッテリーの劣化監視、ソフトウェア異常の早期検出
- ソフト更新:Mobile Planner/FLOW Core の最新機能を随時反映
- 全国170社以上のSIパートナー網によるオンサイト対応
- FLOW iQによる稼働分析:ルートの偏りや停止頻度を可視化、ヒートマップ化による改善提案
これらにより、導入後のトラブルを最小限に抑え、継続的な改善と成果最大化が図れます。
オムロンAMR導入時の注意点|失敗を防ぐ環境チェックと運用対策
AMRは確かに高度な自律搬送機能を備えていますが、導入しただけで必ず成果が出るわけではありません。現場条件や設定ミス、運用ノウハウの不足によって、期待された効果を得られないケースもあります。
このセクションでは、導入前に押さえておくべき「現場適性の見極め」「複数台運用の落とし穴」「つまずき事例と対策」を整理し、導入失敗を防ぐ視点を提供します。
AMRに適した現場条件とは?
AMRの性能を最大限発揮するには、「どんな環境でも動く」ではなく「条件を整えて初めて本領を発揮する」と考えるべきです。以下はオムロンAMRを導入する際に特に重視すべき現場条件です。
- 通路幅:本体+安全マージンが必要。一般に900mm以上が理想。HDクラスでは1,200mmを確保したい。
- 床材と段差:滑りやすい素材や2cm以上の段差は搬送誤差・故障原因に。段差解消スロープの設置が現実的対策。
- 照明・反射物:SLAMやAcuityナビは天井光・構造物を基準に位置を認識するため、照明変更やミラー反射には注意。
- 環境条件:油・水分・粉塵が多い現場ではセンサー保護が必須。とくにセンサー前面の汚れは即誤動作に直結。
- 勾配・傾斜:LDシリーズは最大8%(約4.6度)までが推奨範囲。構内スロープの再設計が必要な場合も。

Factory DX
運営事務局
AMRの性能は“どんな現場でも発揮される”わけではなく、事前の環境整備があってこそ本領を発揮します
下記は、導入前チェックで「落としやすい盲点」をまとめたものです。自社の現場に当てはまる点がないか確認してみてください。
□ 床に油・水・粉が落ちやすい/スリップリスクがある
□ 工場内に段差が多く、台車が頻繁につまずく
□ 天井照明が暗い/一部消えている場所がある
□ 通路幅が限られており、フォークリフトと共用している
□ Wi‑Fiの接続が不安定/死角エリアがある
上記のうち複数該当する場合、AMRの基本動作に支障をきたす可能性が高く、環境改善かモデル選定の見直しが必要です。逆に、こうしたリスクをあらかじめ認識し、対策を講じたうえで導入すれば、トラブルのない安定稼働につながります。
複数台運用時の管理方法
AMRの真価は、1台の試験導入ではなく、複数台での協調制御による“構内全体最適化”にあります。ただし、複数台になると管理の複雑性が一気に高まります。
- Fleet Manager(FLOW Core):最大100台の一括制御が可能。ルート分散、バッテリ充電調整、稼働タイミングの最適化が可能。
- フェイルオーバー構成:メイン制御機(EM2100)故障時でも運用継続。BCP対策にも有効。
- MobilePlannerによるゾーニング:進入禁止ゾーンや徐行エリアを設定し、衝突・渋滞のリスクを低減。
- センサー構成の統一:異なるセンサーメーカーが混在すると精度にばらつきが生じる。シリーズ統一が望ましい。
導入初期は“増やすこと”より“正しく制御すること”が重要です。いきなり10台以上導入するのではなく、1~3台から始め、通信負荷や交差エリアのトラブルを把握することが失敗を防ぐ近道です。
よくあるつまずきポイントと対処法
導入企業の多くが経験している“つまずき”には、パターンがあります。以下は、導入後の問い合わせで頻出するトラブルとその予防策です。
下記のような問題が発生するケースは少なくありません。表を通じて「原因はどこにあったのか」「何を見落としていたのか」を事前に把握しましょう。
問題点 | 主な原因と対策 |
---|---|
停止・動作エラー頻発 | センサーの汚れ/段差による揺れ → 定期清掃と段差緩衝材導入 |
ネットワーク切断 | Wi‑Fi死角や干渉 → アンテナ再配置と電波強度調査を実施 |
マップずれ・迷走 | 設備移動後の再マッピング未実施 → SLAM更新を月1回目安で実施 |
稼働率低下 | バッテリー劣化/ルート最適化未実施 → 劣化予測と経路再設計 |
安全性の懸念 | 階段・開口部などの危険エリア未定義 → 仮想バリア・物理ガード必須 |
これらのつまずきは、事前に環境調査とPoCで検証することで防げる問題が大半です。また、保守契約に「予防点検」や「センサー清掃・キャリブレーション」を含めることで、エラー発生率は大きく下がります。
メーカー選定や導入準備にあたって具体的な“失敗回避の7ポイント”と無料チェックリストを自社に取り入れるには、こちらの記事もぜひご覧ください。
現場の課題に合ったAMRを選ぶために、必要なチェックポイントを整理しています。
タイプ別の特徴や選定の落とし穴もわかりやすく解説。
選び方を間違えたくない方は、検討初期の今こそご活用ください。
→ AMR選定のチェックリストを今すぐ見る
オムロンAMRと中小ベンダーの違い|導入判断の3視点
AMRを導入する際、多くの企業が最初に比較するのは「大手メーカー vs 中小ベンダー」です。大手には信頼性とスケールメリットがあり、中小には柔軟性とスピード感がある。重要なのは、自社の導入目的とフェーズに応じた選定です。このセクションでは、選定時に迷いやすい3つの視点から、両者の特徴を客観的に整理します。
現場カスタマイズの柔軟性
AMRは「自律移動する搬送機器」というだけでなく、「現場環境や業務プロセスといかに調和するか」が成功の鍵となります。特に、作業エリアが狭い・搬送物が特殊・ライン構成が頻繁に変わる現場では、カスタマイズ性が選定基準になります。
以下の表では、「現場仕様への対応力」「連携拡張のしやすさ」「導入後の適応性」といった、柔軟性の本質的な違いを整理しています。
観点 | オムロン | 中小ベンダー |
---|---|---|
対応方式 | 標準モジュール(CAPS、Acuity など)を活用し、用途別に機能を選択可能。統合性を重視した設計。 | 顧客ごとの要件に応じて、個別対応や専用構成の設計・実装が可能。柔軟性と迅速性が特長。 |
連携拡張 | 他社製AMRやモジュールとの統合(Mixed Fleet)にも対応。 | 一部は外部連携やAPI活用に対応。現場仕様に特化した開発がしやすい。 |
適応性 | 標準製品ベースの適応で再現性が高い。 | 特注設計により多様な環境・搬送物への対応力がある。 |
オムロンの強みは、製品ごとのインターフェースやソフトウェア統合が整っており、多拠点展開や長期的な保守における安定運用に適している点です。一方、中小ベンダーは、現場の独自要件に応じてスピーディーかつ柔軟な調整ができる点で、実運用へのハードルが低くなります。
サポート体制と導入後の継続性の違い
AMRは稼働してからが本番です。トラブル対応、再設定、システム更新など、運用中のサポート体制が導入判断の重要指標となります。
以下では、導入前後の支援体制・保守の制度設計・トラブル対応の即応性などに関する違いを比較しています。
観点 | オムロン | 中小ベンダー |
---|---|---|
導入支援 | 全国および海外に支援ネットワークあり。SIerや支援センターと連携。 | 拠点・地域によっては密着型のサポートを展開。導入から運用まで一貫対応する事例も多い。 |
保守・更新 | ソフトウェアの定期更新や保守契約制度が整備されている。 | 製品・契約内容によるが、直接的で柔軟な対応が可能。設計担当が保守にも関与する場合がある。 |
サポート形態 | 標準化されたマニュアル・教育体系を提供。 | 個別対応により現場に即したサポートや仕様変更がしやすい。 |
オムロンのような大手は、トラブル時の代替機・技術者派遣の体制が確立されており、BCP観点で安心感がある一方、中小ベンダーは“顔が見える支援”で柔軟かつ即応的な対応を期待できるという強みがあります。自社が重視するサポートの「範囲」と「深さ」を明確にしておくことが重要です。
以下の記事では、人気ベンダーの1つであるHikrobot社のAMRにおける具体的なスペック比較、価格目安、導入事例などを通じて、現場特性にどうマッチするかを詳しく整理しています。
スモールスタート・実証導入への柔軟性
いきなり本格導入するのではなく、まずは小さく試してみたいというニーズは年々高まっています。PoC(概念実証)からの段階的導入における柔軟性の差も、ベンダー選定時に注目すべきポイントです。
下記の比較表では、「初期導入への柔軟さ」「小ロット展開への対応」「拡張時の再設計リスク」などを整理しています。
観点 | オムロン | 中小ベンダー |
---|---|---|
PoC対応 | シミュレーションツールやデモ機による検証支援体制が整っている。 | 顧客との初期調整に注力し、柔軟な構成・短期検証に対応する事例も多い。 |
初期導入の柔軟性 | 標準モデルによる段階導入を推奨。長期計画と相性が良い。 | 導入規模に合わせて段階的にスモールスタート可能。費用感や納期の調整がしやすい。 |
拡張性 | 製品間の統合性が高く、拡張時の再設計が不要なケースが多い。 | 初期設計を柔軟に行える反面、拡張時には仕様変更が必要になる場合もある。 |
大手ではPoCフェーズのサポート体制や資料が豊富で、社内稟議や経営層向けの合意形成に役立ちます。一方、中小ベンダーは「まず1台」からスタートしやすく、納期短縮やコスト圧縮の柔軟性もあります。
導入初期の“心理的ハードル”を下げたい場合には、中小ベンダーがフィットする可能性も高いです。
総合コメント
- オムロンは、標準化された製品体系と支援体制を活かして、長期運用・再現性重視の構成に強みがあります。
- 中小ベンダーは、現場に密着した対応や特注開発への柔軟性が高く、短期実証・小規模導入からの展開に適しています。
選定時には「誰が使い、どの業務をどう変えたいか?」という具体的な目的に立ち返ることが大切です。その上で、費用対効果・拡張性・保守対応などのバランスを踏まえた判断が求められます。

Factory DX
運営事務局
中小だから不安、大手だから安心ではなく、「自社にとっての最適解は何か?」という視点で検討することが、AMR導入成功への第一歩です。
オムロンAMRは最適?自社に合う選び方のまとめ
AMRの導入検討において最も重要なのは、「どのメーカーが優れているか」ではなく、「どの製品が自社の現場と目的に合っているか」です。
本記事で紹介したように、オムロンのような大手と、中小ベンダーとでは、強みのベクトルが大きく異なります。
ここで改めて、両者の特性を最終確認し、自社に最適な選定軸を明確にしておくことが、失敗しない導入への第一歩です。
オムロンは信頼性重視、中小は柔軟性・コスト重視
オムロンは、再現性の高い標準構成・長期運用への対応・全国サポート体制を備えており、大規模工場や多拠点展開を視野に入れた計画的導入に最適です。一方、中小ベンダーは、個別要件への柔軟な対応力や、初期費用の抑制、小ロット・短納期対応などのアドバンテージを持っています。
以下は、自社に当てはめやすくなるように、導入目的別におすすめの選定傾向を整理した比較図です。
導入目的 | 選定傾向 |
---|---|
全国複数拠点に標準展開したい | オムロン |
高精度搬送+Fleet制御が必須 | オムロン |
既存製造ラインと段階的に連携 | オムロン |
まずは1台から試してみたい | 中小ベンダー |
搬送対象が特殊/工程が流動的 | 中小ベンダー |
初期コストを抑えて実証したい | 中小ベンダー |
このように、選定時には自社の導入目的や現場特性に合わせて軸を定めることが重要です。「オムロンは安心だが柔軟性が心配」「中小は親身だが将来の拡張性が不安」といった視点はよく聞かれますが、重要なのは“導入フェーズごとのリスクとリターン”を可視化して判断することです。
複数社比較で最適解を見つける
実際に成果を出している企業ほど、複数社の製品・サービス・実績を比較しながら導入を進めています。「カタログスペックだけで判断するのではなく、PoCやベンダー面談を通じて自社との相性を確かめる」ことが、導入失敗を回避する鍵です。
オムロンをベンチマークに、他の選択肢をどう比較すべきか、以下の3点を明確にしておくと効果的です。
- 自社の業務フローにどこまでフィットするか
- 自社の技術者が運用・保守を現実的に回せるか
- 将来的に拡張したときに追加コストや再構築が発生しないか
どんなに評判が良いベンダーでも、自社に合わなければ意味がありません。
だからこそ、客観的な評価基準と自社の運用条件を明確にしながら、複数社と比較検討することが、最も堅実なAMR導入戦略といえます。
よくある導入失敗の原因と、その回避策をわかりやすく整理しました。
失敗しないためのポイントを、具体的なチェックリスト付きで解説。
事前に知っておかないと、思わぬトラブルに繋がる恐れがあります。
→ 失敗を避けるためのチェックリスト付き資料を無料ダウンロード