「この通路幅じゃ、AMRは使えない」——そう諦めかけていた現場が、なぜスムーズな走行を実現できたのか?
カタログに記載された“最小通路幅”では語れない、現場特有のクセや導線の工夫が、成功と失敗の分かれ道になります。
この記事では、AMRが本来の性能を発揮できないとされる狭小スペースで、どのような現場改善や運用設計が効果を発揮したのかを、3つの成功事例をもとに紹介。
単に“スペックが合っていた”のではなく、“現場がAMRに合わせて進化した”実例を通じて、導入前にこそ知っておきたい運用のヒントを徹底解説します。
狭小スペースでAMR導入に成功した理由とは?
通路幅800mm未満でも走行できた3つの成功要因
「この通路幅ではAMRは無理だろう」と判断されがちな800mm未満の現場。しかし、実際には複数の改善策を講じることで、スムーズなAMR走行を実現しているケースがあります。単純に「小さいAMRを入れる」ではなく、棚の配置変更・センサー調整・ルート設計の工夫といった現場の工夫がカギを握っています。
スペックではなく“現場の工夫”が成果を生んだ理由
高性能なAMRを導入しても、現場との相性が合わなければその性能を活かせません。本記事で紹介する事例では、「通れるか」ではなく「使いこなせるか」という視点から現場側が工夫したことで、結果として安定稼働を実現しています。機種選定よりも「環境との最適化」が成功の決め手になったのです。
【成功事例①】棚レイアウトの見直しでAMR走行スペースを確保
レイアウト変更前と後の比較(図解あり)
通路幅が確保できなかった現場では、棚のレイアウトそのものを見直し、「棚の向き・配置・間隔」を再設計することで通路幅を800mm以上に拡張。AMRの旋回スペースも十分確保できるようになりました。
テキスト図解|棚レイアウト変更のビフォー・アフター
【テキスト図解|棚レイアウト変更のビフォー・アフター】
<変更前>
┌─┬─┬─┐
│棚│棚│棚│ ← AMR通過困難(通路幅600mm)
└─┴─┴─┘
<変更後>
┌──┬──┐
│ 棚 │ 棚 │ ← AMRが中央通過(通路幅850mm確保)
└──┴──┘
AMRの寸法・動作域と棚配置の“すり合わせ手法”
この現場では、AMRの本体寸法と旋回半径をベースに、必要な通路幅を逆算し、それに合わせて棚のレイアウトを組み直しました。さらに、安全センサーの反応領域も考慮したことで、棚の角に触れることなく、停止もスムーズ。現場では「AMRが人よりも正確に通過する」と評価されるほどの精度で運用されています。
【成功事例②】センサー補正とマップ調整で精度を高めた工場現場
段差・反射・傾斜を想定したマッピング設計
段差や床材の反射で誤作動するケースを防ぐため、SLAMマップ作成時に事前に環境の癖を登録。物理的な凹凸だけでなく、光の反射や陰の位置まで含めた精密なマッピングを実施しました。その結果、センサーの誤検出や急停止がなくなり、走行が非常に安定しました。
照明の明暗差がAMRの読取精度に与える影響と最適化方法
照明によるQRコードやカメラ視認の妨げを防ぐため、環境光を調整し、均一にする工夫も導入。LEDの色温度や照射角度を調整し、影ができにくい構造に変更することで、読み取りエラーを約80%削減したという結果も得られています。
表|マッピング設計で考慮すべき項目と対策
問題点 | 発生原因 | 具体的な対策 |
---|---|---|
段差による誤停止 | マップに段差情報が含まれない | 現場地図作成時に段差ポイント記録 |
照明による誤認識 | 光の反射がセンサーを乱す | 照明の角度・色温度を調整 |
床の反射・汚れ | センサー視認性の低下 | マッピング時に床条件を加味 |
【成功事例③】動線分離とルート設計で混在エリアもスムーズ搬送
人とAMRを分離して接触リスクをゼロに
混在エリアでのトラブルを回避するため、人とAMRの動線を物理的に分離。柵やマークによる明確なレーン区分で、視覚的にも分かりやすい設計に。従業員からも「歩行ルートが明確になって安心」という声が上がり、安全性と業務効率の両立を実現しました。
一方通行ルート化で走行安定性・効率が大幅向上
さらにルート設計を「一方通行」に変更したことで、旋回の必要が減り、走行が安定。交差ポイントの衝突リスクや、行き違い時の渋滞も大幅に減少。結果として搬送効率が20%以上向上し、同一ルートでも1日あたりの稼働回数が約1.3倍に増加しました。
テキスト図解|人とAMRの動線分離イメージ
【テキスト図解|人とAMRの動線分離イメージ】
┌─────────────┐
│ 人間用通路(作業員) │ ← 通路幅800mm
├─────────────┤
│ AMR専用レーン(走行専用) │ ← 通路幅700mm/一方通行
└─────────────┘
→ 一方通行+物理分離で接触ゼロを実現
まとめ|AMR導入の鍵は“製品選び”ではなく“運用設計”にある
導入成功に必要なのは「現場仕様に合わせる設計視点」
今回紹介した事例ではすべて、通路幅やスペックだけで判断せず、「どこを調整すれば使えるのか」という視点で現場が工夫していました。AMRの導入は、“ロボットが主役”ではなく、“現場が主役”であることを再認識する必要があります。
AMRの性能を活かすには“事前準備と調整”が不可欠
高機能なAMRを入れても、床・光・導線が整備されていなければ、機能は発揮されません。成功事例から学ぶべきは「選定」よりも「設計」と「現場との対話」です。導入を検討する際は、まず自社の課題を明確にし、それに合わせた“現場ベースの運用設計”から始めることが肝心です。
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「この現場じゃ無理かも」と思っていた通路幅でも、AMRは走れる。
そのカギは、機種選定ではなく“現場の調整力”にあります。これまでの成功事例から抽出したチェックポイントを資料にまとめました。