「レイアウト固定だから問題ない」──そう思って磁気テープAGVを導入した結果、予想外のトラブルに悩まされた工場が後を絶ちません。
なぜ、“安全と思われていた方式”で、失敗が起こるのか？
この記事では、磁気テープ誘導方式AGVの“思わぬ落とし穴”とその回避策を、実際の失敗例・比較・チェックリスト形式で整理。
特に、現場ごとに異なる床条件・レイアウト変更の有無・運用体制に応じて、どんな選定が正解になるかをわかりやすく解説します。
AGV導入現場で実際にあった「よくある失敗」一覧
設置通りにAGVが動かない？事前検証不足の代償
磁気テープAGVは“正しく設置すれば安定稼働”する方式ですが、現場では以下のようなミスが起きがちです。
現場作業者からは「テープは貼った通りなのにAGVが停止してしまう」「同じ場所で繰り返し読み取りエラーが出る」といった声が多く聞かれます。こうした問題の多くは、設計段階での詰めの甘さや現場とのすり合わせ不足に起因しています。
【表｜導入現場で起きた失敗パターン一覧】
| 発生した問題 | 原因例 | 結果／影響 |
|---|---|---|
| AGVが止まる・誤作動する | テープ貼りズレ、走行ルートの誤差 | 工程停止、誤搬送、再敷設発生 |
| テープが剥がれる・読めない | 床材が荒れている、清掃が不十分 | センサー誤認識、ルート離脱 |
| 再施工コストが発生 | レイアウト変更の想定漏れ | 敷設やり直し、数十万円の追加費用 |
ちょっとした「確認漏れ」が、大きな手戻りやコスト増加につながるのがAGV導入の難しさです。
磁気テープ方式AGVならではの見落としがちなリスク
一度敷いたら変更しにくい「柔軟性の低さ」
磁気テープ方式は、初期設置の再現性には優れていますが、一度テープを貼ると簡単にはルート変更できません。ルート変更が発生すると、再敷設と試験走行が必要になり、生産停止や外注費用がかさむ可能性があります。
床材・照明・傾斜…環境が性能に直結する方式
センサーが磁気テープを正確に読み取るには、床面が滑らかで安定している必要があります。
油汚れ・反射塗装・微細な段差があると、誤検知や停止トラブルが起きやすくなります。
また、AGVが通過する部分だけ清掃しても、経路全体で一貫した状態が保てなければ安定稼働は難しいのです。
自動化なのに現場工数が増える？
「貼って終わり」ではなく、定期的な清掃・位置ズレ補正・再敷設など、運用後も“手間がかかる”点に注意が必要です。
結果として、想定よりも現場負荷が増加し、自動化の目的と逆行するケースもあります。
失敗を防ぐための「事前チェックリスト」
AGV導入判断を現場レベルで“見える化”する
導入前に最低限チェックすべき項目を、実務ベースで整理しました。
設計部門や生産技術だけでなく、実際に使う現場担当者も巻き込んでチェックすることが鍵です。
【表｜選定前チェックリスト（設計・運用・設備視点）】
| チェック項目 | 確認内容例 | 推奨タイミング |
|---|---|---|
| 床面状態の確認 | 凹凸、傾斜、塗装、油の有無 | マッピング前 |
| レイアウト変更の有無 | 将来的なライン変更予定／頻度 | 設計初期／ヒアリング段階 |
| 仮設走行テストの実施 | テープを仮敷設して走行・誤差を確認 | 敷設前＋現場検証フェーズ |
この3項目だけでも早期にチェックしておけば、8割以上の導入トラブルは防げるという声もあります。
実際にレイアウト固定環境で磁気テープAGVを安定稼働させた工場の工夫については、こちらの導入事例も参考になります。
→ 【導入事例】磁気テープAGVを使いこなす工場の工夫｜レイアウト固定環境で失敗を防いだ方法
AGV導入前に考えるべき「他方式との比較」
他方式を知らずに“安さ”だけで決めると失敗する
磁気テープ方式は安価で導入できる反面、“柔軟性”が求められる現場には向いていません。
選定の際は、他方式との違いを明確に理解した上で、現場に最適なナビゲーション方式を選ぶ視点が欠かせません。
【表｜ナビゲーション方式比較（適性と導入難易度）】
| ナビ方式 | メリット | デメリット | 適した現場例 |
|---|---|---|---|
| 磁気テープ | 精度高、設置が単純、導入費が安い | 柔軟性なし、変更不可、床依存 | レイアウト固定・短距離搬送 |
| QRコード | 柔軟性あり、テストしやすい | 読取感度が照明や汚れに左右される | 開放空間、ライン変更が多い現場 |
| SLAM | 自由度が高い、ルート変更が自在 | 初期費用が高く、調整に手間がかかる | 改修が多い大規模工場、変則ライン |
比較表を通じて、“何を優先したいか”で選ぶべき方式が変わることを再認識してください。
失敗しなかった工場に共通する「AGV導入成功の仕組み」
現場の声を設計に反映できたかどうか
成功している工場では、設計段階から現場作業者を巻き込んでルート設計や検証を行っているという共通点があります。
「紙上の図面では問題なかったのに、実際に走らせてみたら動かなかった」というケースを避けるため、仮設ルートでのテスト走行が必須です。
テープの貼り直しも想定した設計があるか
固定と思っていたレイアウトが、1年後に変更された例もあります。将来の変更に備えて敷設の“柔軟性”を設計に含めたかどうかが、トラブルの有無を分けました。
たとえば、分岐点をあらかじめ余分に敷設しておき、変更時の接続を簡略化するなどの工夫が効果的です。
まとめ｜「磁気テープ＝安全」ではない
磁気テープ方式AGVは、導入時のコスト・シンプルさに惹かれがちですが、現場に合っていなければむしろ運用リスクを増やす結果になります。
見落としがちな床環境の課題、設置後の変更対応の難しさ、そして現場の巻き込み不足。
これらが揃えば、たとえ低コストで導入しても、安定稼働しない・無駄なメンテが増える・やり直しが発生するといったリスクを招きます。
導入後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐためにも、今一度チェックリストと他方式との比較を丁寧に行い、自社にとって“最適”な方式を見極めましょう。
資料でさらに詳しく知りたい方へ
磁気テープAGVの選定、本当に間違っていませんか？
実は、導入後に「他方式の方がよかった」と気づく現場が多数あります。
資料では、ナビ方式の違い／失敗しない選定ポイント／導入効果の比較視点を整理しています。
失敗を防ぐためのチェックリストも掲載。
導入前に必ず目を通しておきたい一冊です。