AGV（無人搬送車）の導入を検討する際、機種選定にあたっては「搬送質量」「本体サイズ」「けん引方式」「走行速度」など、多角的な仕様確認が欠かせません。
トヨタL&Fが提供する「KEY CART（キーカート）」シリーズは、500kg級・1000kg級の2カテゴリに、それぞれ「基本タイプ」と「ショートタイプ」を展開し、計4機種から構成されています。
本記事では、各モデルの仕様を客観的なデータに基づいて比較・分析し、現場条件に適した機種選定の一助となる情報を提供します。
500kg級 基本タイプ：KEY CART（500kg級 基本タイプ）
積載・けん引を両立する汎用モデル
500kg級の基本タイプは、積載200kg、1点けん引500kg、3点けん引50kgに対応する、多用途型のAGVです。全長1,085mm・全幅495mm・全高250mmというコンパクトなサイズで、限られた通路や狭小エリアでも取り回しやすい設計が特徴です。
搬送方式と走行性能
磁気テープ誘導方式を採用し、専用のExcelツールでコースを設定する運用形態です。最高走行速度は50m/分で、他のモデルと同等のパフォーマンスを発揮します。段差対応能力は5mm（15m/分走行時）で、傾斜は積載時で最大3%、けん引時で最大1%まで対応可能です。
500kg級 ショートタイプ：KEY CART（500kg級 ショートタイプ）
コンパクト設計のけん引専用モデル
500kg級ショートタイプは、積載機能を持たず、けん引専用に特化したモデルです。1点けん引で500kgまで対応し、本体サイズは全長730mm・全幅580mm・全高800mmと、シリーズ中最も短く高さのある設計です。
狭小環境への適応力
小型化により狭小スペースでの旋回性能が高く、パレット台車やカゴ車のけん引用途に特化しています。積載機能が不要なシーンや、シンプルな搬送タスクに適しています。
1000kg級 基本タイプ：KEY CART（1000kg級 基本タイプ）
高荷重対応の積載・けん引両用モデル
1000kg級の基本タイプは、積載500kg、1点けん引1,000kg、3点けん引200kgと、シリーズ中最も高い搬送能力を有します。全長1,540mm・全幅495mm・全高315mmと、サイズは大型ですが、重量物搬送における安定性を重視した設計です。
大型設備・重量物対応の特化モデル
工場内の大型治具や資材搬送を想定した設計で、段差・傾斜対応能力も他モデル同様に保持。標準で障害物センサを搭載し、オプションにより安全性の強化も可能です。
1000kg級 ショートタイプ：KEY CART（1000kg級 ショートタイプ）
高重量けん引に特化した短尺モデル
1000kg級ショートタイプは、けん引専用のモデルで、積載機能は備えていません。1点けん引で1,000kgまで対応し、全長1,000mm・全幅580mm・全高800mmと、コンパクトながら高い搬送能力を発揮します。
スペース効率とけん引力の両立
高重量対応かつ小型設計という特徴から、重量物を狭い構内で搬送する場面に適しています。既設の搬送ルートを大きく変更せずに導入できる利点があります。
共通仕様と機能：KEY CARTシリーズの基盤性能
走行方式とコース設定
全モデル共通で磁気テープ誘導方式を採用しています。一部モデルではSLAM方式（地図生成と自己位置推定）への対応も可能であり、導入後のコース変更に柔軟に対応可能です。ルート設定にはExcelベースの専用ツールを使用し、現場に応じた経路設計が容易です。
安全性と拡張性
標準装備として障害物センサを搭載しており、人や障害物を検知すると自動停止します。オプションでは、バンパー式非常停止スイッチや、産業用安全基準であるカテゴリー3対応センサの追加も可能です。安全性と運用柔軟性の両立が図られています。
稼働時間と運用効率
連続稼働時間は全モデル共通で約8時間ですが、自動充電オプションを併用することで24時間連続運用も可能になります。稼働効率を重視する現場では、自動充電システムとの併用が効果的です。
使用環境と制約事項
KEY CARTシリーズはすべて屋内専用設計となっており、屋外での使用には適していません。また、色変更や塗装の指定には非対応であり、導入時には標準色での提供となります。
KEY CART各モデルの仕様比較一覧
※以下は、4モデルの仕様比較一覧です。
| 項目 | 500kg級 基本タイプ | 500kg級 ショートタイプ | 1000kg級 基本タイプ | 1000kg級 ショートタイプ |
|---|---|---|---|---|
| 搬送質量：積載 (kg) | 200 | – | 500 | – |
| 搬送質量：1点けん引 (kg) | 500 | 500 | 1,000 | 1,000 |
| 搬送質量：3点けん引 (kg) | 50 | – | 200 | – |
| 全長 (mm) | 1,085 | 730 | 1,540 | 1,000 |
| 全幅 (mm) | 495 | 580 | 495 | 580 |
| 全高 (mm) | 250 | 800 | 315 | 800 |
| 最高走行速度 (m/分) | 50 | 50 | 50 | 50 |
この表から、けん引能力はショートタイプ・基本タイプ問わずモデル区分ごとに統一されている一方、積載機能の有無や本体サイズに違いがあることが分かります。用途や構内制約に応じた機種選定が重要です。
まとめ：KEY CARTの導入を検討する企業への提言
トヨタL&FのKEY CARTシリーズは、搬送能力・サイズ・走行方式といった基本仕様が明確であり、用途に応じた柔軟なモデル選択が可能です。
積載かけん引か、500kg級か1000kg級か、ショートか基本かという判断軸を明確にし、自社構内の搬送ニーズと照らし合わせて機種選定を行うことが求められます。
安全性や拡張性、連続稼働性といった共通仕様も確認しながら、最適なAGV運用を実現してください。
本フォームでは、用途や現場環境に応じて最適なモデルをご案内しております。
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