工場と倉庫が別棟に分かれていたり、製造ラインの一部が屋外にある――そんな現場では、人手による搬送に頼らざるを得ない状況がまだまだ多く見られます。しかし近年、天候や地形に左右されずに“屋内外をまたぐ搬送”を自動化したいというニーズが急増しています。
その鍵を握るのが、「屋内外対応AMR(自律走行搬送ロボット)」です。
この記事では、一般的なAMRとの違いをはじめ、どんな現場に向いているのか、どのように選定すべきか、そして実際の導入事例までを網羅的に解説します。
“屋内専用だけでは足りない。でも屋外専用だと運用が分断される”――そんな悩みを抱える方にとって、本記事が判断の軸となるはずです。
AMRの3つのタイプ比較|屋内・屋外・屋内外対応の違いとは
まずは、AMR(自律走行搬送ロボット)の分類を明確に把握することが重要です。AMRは大きく「屋内専用」「屋外専用」「屋内外対応」の3タイプに分かれ、それぞれ対応環境や特徴が異なります。下記の表でその違いを比較してみましょう。
【AMRタイプ別比較表】
項目 | 屋内専用AMR | 屋外専用AMR | 屋内外対応AMR |
---|---|---|---|
主な使用場所 | 倉庫、工場内 | ヤード、構内道路 | 屋内+屋外一体運用 |
地形対応 | 平坦のみ | 不整地・段差あり | 両対応(舗装~段差) |
ナビゲーション | SLAM中心 | GNSSや3D LiDAR中心 | SLAM+GNSS併用型 |
天候・環境への対応 | 非対応 | 雨天・直射日光対応 | 防水・防塵あり |
導入コスト感 | ◎(低) | △(高) | ◯(中程度) |
向いている業種 | 製造、物流 | 資材・建設、屋外施設 | 工場+倉庫複合拠点 |
このように、屋内外対応AMRは、複合環境に柔軟に対応できる一方で、導入費用や設計の難易度はやや高くなります。しかし、複数のエリアを一台でカバーできる点は大きなメリットです。
こんな現場に屋内外対応AMRが向いている【チェックリスト付き】
自社に屋内外対応型が必要かどうか、以下のような条件に当てはまるかを確認しましょう。
- 工場と倉庫が別棟に分かれている
- 構内道路や屋外通路を介して搬送が発生している
- 雨天や風がある環境でも搬送が必要
- 施設が複数棟に分かれた製造ライン構成になっている
- 一部区画だけ屋外という“複合環境”をカバーしたい
上記のうち、2つ以上に該当する場合は、屋内外対応モデルの検討をおすすめします。
屋内外対応AMRの選び方|5つのチェックポイント
機種の選定では、現場の環境条件とAMRの仕様を丁寧に照らし合わせる必要があります。
地形・段差対応
舗装路だけでなく、段差や傾斜、砂利道にも対応できる走行性能が必要です。タイヤ径や車体底面の高さ、サスペンション構造も確認しましょう。
天候・環境への対応
屋外での使用には、IP規格などに基づいた防水・防塵性能が求められます。電子基板やセンサーの防護設計も要チェックです。
ナビゲーション方式
屋内でのSLAMだけでなく、屋外ではGNSSを活用した走行が求められます。位置補正や自動地図切替の有無も重要です。
セーフティ機能
人やフォークリフトが行き交う混在エリアでは、LiDARや超音波センサーのほか、緊急停止やバンパー機能の有無がカギになります。
柔軟な走行モード
屋内と屋外の切替時に、速度や走行パターンを自動調整できるかどうかは、安全性と作業効率に直結します。
【選定フローチャート図解(改良版)】
[搬送ルートに屋外を含む?]
├── No → 【屋内専用AMR】
↓ Yes
[屋外の環境は安定している?(舗装路・天候の影響が少ない)]
├── Yes → 【屋外専用AMR】
↓ No
→【屋内外対応AMR】
屋内外対応AMRの活用シーン
工場と倉庫の建屋間搬送
工場と出荷倉庫が敷地内の別建屋に分かれているケースでは、人による台車搬送やフォークリフト運用が必要でした。屋内外対応AMRを導入することで、これらを完全自動化できます。
構内物流+倉庫内搬送の一体運用
屋外搬送と屋内搬送を分断せずに、ひとつのAMRでカバーすることで、ライン間の停滞を解消し、複数拠点の統合搬送も実現可能です。
屋外型施設での使用(例:空港、資材置場)
広い敷地や野外エリアを含む業種では、屋外走行性能と屋内自動運行を兼ね備えた機体が重宝されます。
屋内外対応AMRの導入メリットと注意点
【メリット・注意点の比較表】
メリット | 注意点 |
---|---|
拠点間の搬送を一台で完結できる | コストがやや高めになる場合がある |
導線変更に柔軟に対応できる | 雨・風の影響を受けるシーンがある |
バッテリー運用の最適化が可能 | ナビゲーション設定が複雑になることもある |
導入効果は大きいものの、現場条件によっては過剰スペックになることもあります。仕様を過不足なく見極めることが大切です。
導入成功事例|屋内外対応AMRの活用パターン
事例1:A社(精密部品メーカー)
工場と倉庫が道路を挟んで分かれており、従来はフォークリフトで搬送していた。AMR導入により、搬送時間と人件費を50%以上削減。交通事故リスクもゼロに。
事例2:B社(物流会社)
敷地内に5棟の建物があり、従来は台車と人による搬送だった。AMRを導入して屋内外を横断搬送できるようになり、業務フローが大幅に効率化。
【建屋間搬送のマップ風テキスト図解】
[工場A棟]───(屋外通路)───[倉庫B棟]
│ ↑
└───(AMRが製品を搬送)────┘
まとめ|屋内外対応AMRの導入を検討している方へ
現在、敷地内の複数棟や屋外構内道路での搬送自動化が求められるケースが増えています。
屋内外対応AMRは、そのような“つなぎ目”を効率化するソリューションとして注目されています。
導入を成功させるためには、搬送対象やルートの洗い出しから始めることが重要です。
【導入ステップテキスト図解】
STEP1:搬送範囲の整理(屋外含む全体地図作成)
↓
STEP2:屋内外の境界条件を確認(段差・開口部・天候リスク)
↓
STEP3:適合するAMRモデルを選定・比較(対応範囲・ナビ方式)
※本記事で紹介した比較表やフローチャートを活用いただくことで、より精度の高い選定が可能です。