これまでのAGVは「人と距離を取る」のが基本でした。しかし近年、“人と共存しながら動く”ことを前提とした協働ロボット搭載AGVが急速に広がりを見せています。

「人とロボットが一緒に働く」——かつては工場の未来像だったこの姿が、今や現実のものとなっています。

本記事では、協働型AGVの定義や特徴に加え、実際の活用シーンや製品事例、そして導入検討時のチェックポイントまでを体系的に解説します。「安全に人と一緒に使えるAGV」を探している方にとって、現場での活用がイメージできる構成です。

協働ロボット搭載AGVとは?

定義と仕組み

協働ロボット搭載AGVとは、作業者と同じ空間で共存できるよう、安全設計が施された自動搬送ロボットです。場合によってはアーム付き協働ロボットがAGVに搭載されており、部品の受け渡し・ピッキング・持ち上げなども行います。

このタイプのAGVは、人間の近くを走行したり、人の動作に合わせて停止・減速したり、場合によっては荷物のハンドオフ(手渡し)まで行うことができます。

従来型AGVとの違い

比較項目従来型AGV協働ロボット搭載AGV
安全性設計人との接触を避けて停止人の動きを予測・緩やかに回避・停止
動作環境単一ルート・人との分離作業者と共存、混在エリアでも可
機能単純搬送搬送+作業補助(ピッキング・アーム操作)
柔軟性低い(固定ルート)高い(AI判断・経路学習)

従来型AGVは「人がいない場所」でこそ力を発揮していました。一方、協働型AGVは「人がいるからこそ、活きる」ロボットと言えます。

なぜ今、協働型AGVが注目されているのか?

背景①:人手不足と省人化の現実解

製造業・物流業では、慢性的な人手不足が続いています。「完全自動化」が理想だとしても、現場では「作業者の補助をしながら、必要なところだけ自動化したい」というニーズが主流です。

協働型AGVは、“人を補う”というアプローチで現場の負担を減らすことができる現実的な選択肢です。

背景②:安全規格の進化と技術の成熟

  • ISO 3691-4(無人搬送車の国際安全規格)
  • ISO/TS 15066(協働ロボットの安全指針)

こうした規格の整備と、LiDAR・AI・衝突防止センサーなどの技術進化により、“人と機械が一緒に働ける”環境が現実のものとなってきました。

背景③:中小企業・病院・福祉施設でも活躍

大規模工場や倉庫だけでなく、「狭い」「複雑」「人が多い」現場でこそ、協働型AGVは力を発揮します。

活用シーンと導入事例

1. 作業者と並走するピッキング搬送

[棚エリア] ← 作業者 ← 協働AGV(追従)
                       ↓
              ピッキングした商品を搭載
                       ↓
                   [出荷エリア]
  • 作業者が棚を回りながらピッキングする際、AGVが横を走行
  • 荷物を一つずつAGVに載せていくことで、作業者は手ぶらで作業可能
  • 手押し台車を使っていた場合と比べ、ピッキングミスが約30%減少した事例もあります

2. 製造ラインでの部品供給

[部品棚] → AGV(アーム搭載)
                    ↓
              [組立セル1] → [組立セル2]
  • 作業者が手を止めず、ボタン一つで必要な部品を呼び出せる
  • AGVの上部にアームが搭載されている場合、自動でトレイを持ち上げて供給可能
  • 作業者の歩行距離や部品準備工数を大幅に削減できます

3. 病院・福祉施設での搬送補助

[リネン室] → AGV → (エレベーター) → [病棟フロア]
                                            ↓
                                    [薬剤・洗濯物搬送]
  • 人が多く行き来する施設内で、協働型AGVが清掃用具・薬剤・リネンなどを安全に搬送
  • 夜間の自動運転や、エレベーターとの連動運用も可能

製品比較|代表的な協働型AGVと特徴

メーカー名製品名アーム搭載主な特徴活用シーン
OMRONLD + TMシリーズあり自己位置推定機能とアームによる作業補助機能を搭載組立・部品供給
MUJIN協働搬送ロボットなしAI制御により人と共存し、高精度なナビゲーションを実現倉庫内搬送・ピッキング
トヨタL&F自律型AGV(改良型)一部対応フォークリフト型で、人感知センサーを搭載工程間搬送・屋内外兼用
株式会社セキュリティデザイン潜り込み式自動搬送ロボットなしパレット下に潜り込みリフトアップして搬送可能工場・倉庫内の生産性向上
Industry Alpha株式会社汎用型AMR Kagheloなし最薄185mmで最大1000kg可搬、柔軟なカスタマイズが可能物流倉庫・製造現場
Chinoh.Ai株式会社1トン搬送可能なAGVなし直置きパレットの搬送が可能で、スピンターンも可能バースから仮置き場までの搬送

技術解説|センサー・安全・AI制御の仕組み

走行制御と人感知センサー

  • LiDAR、3Dカメラ、超音波などを併用し、障害物・人をリアルタイム検知
  • 進行方向に人が入った場合は減速・停止・迂回を自律判断
センサー種別主な用途特徴
LiDAR障害物検知360度の空間認識が可能で高精度な距離測定に対応
3Dカメラ人の動作認識人間の骨格・動きの認識により協働性を向上
超音波センサー近接物体検知短距離での障害物感知に優れ、誤検知が少ない

安全設計のポイント

  • ISO 3691-4:無人搬送車の国際安全規格
  • TS15066:協働ロボットの安全距離と速度制限に関する指針
  • 非接触式緊急停止、速度リミッターなどを標準装備

AI・ナビゲーション機能

  • 作業エリアでの“人の動き”を学習し、最適なルートを選択
  • スケジューリングや在庫連携システム(WMS等)とも接続可能

導入時のチェックリスト

  • 安全距離の確保:人とすれ違う場面の動作は安全か?
  • センサー性能の確認:床材・照明などによる誤動作リスクは?
  • 搬送対象の条件整理:重さ・サイズ・受け渡し方法は?
  • 動線設計と人の動きの整理:AGVと人がぶつかる動線はないか?
  • 社内ルールと受け入れ準備:人がロボットと協力する文化は整っているか?

まとめ|“共に働く”時代のAGVを選ぶ

協働型AGVは、「人と機械が分業する」から「共に仕事を進める」段階へと進化した象徴です。完全無人化が難しい現場、変化の多い工程、人の判断が必要な作業——そうした状況こそ、協働型AGVの真価が発揮されます。

省人化・安全・柔軟性という三要素を兼ね備えた協働AGVは、これからの“現場力を落とさない自動化”を支える重要な選択肢となるでしょう。