年々増加する出荷量に、現場の負担は限界を迎えていました。
本事例の舞台となったのは、従業員約50名、2交代制で稼働する中規模の組立工場。
製品組立ラインと出荷エリアが離れており、作業員は1日に何十回も台車を押して50m以上の通路を往復していました。
搬送作業に追われるうちに本来の作業に支障が出るようになり、出荷締切時間にも間に合わない事態が続出。
繁忙期には臨時作業員を増員して対応していましたが、それでも荷捌きの滞留は解消されず、現場の疲弊と効率低下は深刻な問題になっていました。
「このままでは納期遅延や作業事故が常態化する」
そんな危機感を受け、導入されたのがAGV(無人搬送車)でした。
本記事では、AGV導入によって搬送時間を大幅に短縮し、業務効率化に成功した実例を、
導入前の課題、導入後の効果、運用設計のポイントとあわせて詳しく解説します。
AGV導入前の搬送時間の問題と課題
搬送にかかる時間が多かった理由
搬送作業は、すべて人力で台車を押して行われていました。
片道50メートル以上の通路を往復するたびに、作業者は5〜7分を費やし、1日に10km以上歩行する日もありました。
また、通路は複数作業が交錯するため、台車のすれ違いや渋滞が頻繁に発生。
この無駄な待機時間が累積し、結果的に搬送効率を大幅に低下させていたのです。
さらに、重量物を手押し搬送することによる作業者の疲労蓄積は深刻で、
荷崩れ事故や、作業ミスによるライン停止もたびたび発生していました。
AGV導入前に発生した作業遅延の具体例
- 出荷締切時間の30分前になっても出荷品が搬送されず、作業が停滞
- 台車同士のすれ違い待機で平均搬送時間が15分以上に増大
- 繁忙期対応で臨時作業員を5名以上追加投入
- 荷崩れ事故による製品破損・再検査の増加
これらの問題は、単なる作業負担増にとどまらず、コスト増大と品質リスクの両面に悪影響を及ぼしていました。
AGV導入による業務効率化の具体的効果
AGVが削減した搬送時間
指標 | AGV導入前 | AGV導入後 | 削減率・効果 |
---|---|---|---|
1サイクル搬送時間 | 15分 | 9分 | 約40%短縮 |
搬送回数(1日) | 20回 | 30回 | 50%増加 |
作業待機時間 | 10分/回 | 2分/回 | 約80%削減 |
AGV導入により、1サイクルの搬送時間は約6分短縮されました。
これにより、1日あたりの搬送回数は20回から30回へと1.5倍に増加。
作業待機時間も80%以上削減され、現場のフローが劇的に改善しました。
こうした効果を最大化するには、導入目的に合ったAGVを選定することが重要です。AGV選びのポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 業務効率化に強いAGVとは?搬送時間を短縮して現場生産性を高める選び方ガイド
AGVによる業務フローの効率化
搬送作業が自動化されたことで、作業者は付帯作業から解放され、
組立・検査・梱包など本来業務に集中できる環境が整いました。
搬送の遅れによるライン停止リスクが減少し、作業全体のタクトタイムも短縮。
結果的に、出荷作業の完了率は95%から99%へと向上し、納期遅延リスクがほぼゼロに抑えられました。
成功したAGV導入事例の詳細
AGV導入時に直面した課題と解決策
導入時の課題 | 解決策・対応 |
---|---|
搬送ルート設計ミスによるAGV立ち往生 | 詳細な現場マッピングとルート最適化 |
充電切れによる搬送中断 | 自動充電ステーションの増設 |
作業員とAGVの接触リスク | 作業員動線とAGV専用動線を完全分離 |
初期導入時は搬送ルートの設定ミスや充電管理不足によりトラブルが発生しましたが、
徹底した現場観察とルール整備により、安定稼働に至りました。
作業スピード向上のために実施した運用改善
- AGV専用レーンの新設による搬送渋滞解消
- 稼働データ分析に基づくルート短縮と動線最適化
- 作業者教育プログラムによる現場運用ルールの浸透
改善活動を積み重ねたことで、AGVのパフォーマンスはさらに向上し、
現場全体の流れも格段にスムーズになりました。
AGVによる時間短縮を最大化するための運用設計
効率的な運行ルート設計とスケジューリング
【テキスト図解】
[導入前]
スタート地点 → 無駄な遠回り → 渋滞待機 → ゴール
[導入後]
スタート地点 → 最短ルート直進 → スムーズ到着 → ゴール
AGV専用の最短ルートを設計し、無駄な迂回や交差点待機を極限まで排除しました。
また、搬送スケジュールも組み直し、ピークタイムの搬送集中を回避する運用設計を実施しました。
定期的なメンテナンスと運用チェック
AGVの安定稼働には、定期メンテナンスと稼働状況のモニタリングが不可欠です。
この現場では、
- 週次のAGV点検(タイヤ摩耗・センサー異常チェック)
- 毎日の稼働ログレビュー
を運用ルールに組み込み、トラブルの予兆を早期発見できる体制を構築しました。
AGV導入後の成果と今後の展望
搬送時間の短縮結果と業務改善の具体例
成果指標 | AGV導入前 | AGV導入後 |
---|---|---|
出荷作業完了率 | 95% | 99% |
搬送作業負担 | 重度 | 軽減 |
残業時間(平均) | 月30時間 | 月10時間 |
離職率 | 年12% | 年4% |
搬送時間短縮だけでなく、
- 出荷作業の安定化
- 作業者の身体負担軽減
- 現場定着率向上
という、副次的な大きな成果も得られました。
今後の運用調整と効率化のさらなる展開
今後は、
- ピッキング作業との連携強化
- マルチフロア間搬送への対応拡張
- 複数台協調制御によるフリート運用
など、さらにAGVの活用範囲を広げ、現場全体の最適化を目指しています。
まとめ|AGV導入による業務効率化を実現するためのポイント
成功ポイント | 内容 |
---|---|
課題の可視化 | 搬送遅延・疲弊リスクを数値化して把握 |
ルート最適化 | 最短・安全な搬送ルートを設計 |
運用ルール整備 | AGVと作業員の役割分担と動線管理 |
継続的改善 | データモニタリングとフィードバック体制 |
AGV導入は単なる設備投資ではなく、
「現場課題を可視化し、最適な運用設計を行い、地道に改善を続ける」ことで、
本当の成果を引き出せる施策です。
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