「段差にも対応した高性能モデルを選んだのに、なぜ止まる? なぜ脱輪する?」
導入直後からトラブル続出──実はそれ、“AMRのせい”ではなく、“現場とのすれ違い”が原因かもしれません。
本記事では、一度は失敗に終わったAMR導入を、現場主導の分析と再選定によって成功に導いた工場のリアルな記録を紹介します。なぜ失敗し、どう乗り越え、どうやって安定搬送を実現したのか?
段差や傾斜がある現場でAMR導入を検討している方にとって、きっとヒントになるはずです。
導入初期、なぜAMRはうまく動かなかったのか?
AMR初回導入時の背景と期待値
とある工場では、省人化と作業の安定化を目的にAMR(自律走行搬送ロボット)を導入しました。導入前は人手による搬送に時間がかかり、作業の属人化や人手不足が課題とされていました。現場では「AMRを入れればすぐに自動化が進む」という期待が大きく、特段の検証もなく導入が進められました。
段差による停止・脱輪トラブルの連発
しかし、導入直後から走行中の停止や脱輪といった問題が多発。現場スタッフからは「思っていたより頻繁に止まる」「一度止まると手作業で戻すしかない」といった声が上がりました。原因は、工場内に点在する2〜3cm程度の段差。これがAMRの走破性能の限界を超えており、頻繁な脱輪やモーター保護による緊急停止を引き起こしていました。
【テキスト図解|初期導入時の現場マップと問題箇所】
┌──────────────┐
│ 倉庫エリア │
│ ┌──────┐ │
│ │搬送ルート ─────▶ 脱輪箇所A│
│ └──────┘ │
│ ▲ ▼ │
│ 段差(2.5cm) 段差(3cm) │
└──────────────┘
現場が実施したAMRトラブル原因の洗い出し
段差・床材・傾斜の実地調査
導入失敗を受け、現場では各種環境要因を徹底的に再調査しました。段差の高さはもちろん、通路の傾斜角度、床材の状態(滑りやすさ、凹凸の有無)も記録。実測値をもとに「AMRの設計スペックと現場条件の整合性」に焦点を当てて分析しました。
【表|環境チェックシートと対応結果】
確認項目 | 実施内容 | 結果・気づき |
---|---|---|
段差の高さ | 実測(20〜30mm) | 対応スペックを超過 |
傾斜角度 | 傾斜計で測定(最大8度) | スペック限界に近い |
路面材質 | 凹凸+滑りやすい塗床 | センサー誤作動の要因 |
AMRのスペック上の走破力と実環境のギャップ
メーカーのカタログスペックには「段差25mmまで対応可能」とありましたが、現場での運用では積載状態やタイヤ摩耗、段差進入角度などの影響で走破性能が下回る結果に。現場担当者からは「実際の運用では、スペック値ギリギリではなく“余裕”を持った選定が必要だった」との声も聞かれました。
AMR再選定と機種変更のプロセス
AMRの走破性を軸にした再選定ステップ
再選定においては、走破性を最優先条件としました。「段差・傾斜・荷重」の3要素に強いモデルを中心に、複数機種をピックアップ。選定では営業担当や技術者に加え、実際に現場で操作する担当者の意見も積極的に取り入れました。
【再選定のステップフロー】
❶ 現場の段差・傾斜・荷重条件の再整理
↓
❷ 走破性能を重視した候補機種のピックアップ
↓
❸ 実機テスト+データ比較
↓
❹ 現場スタッフを含めた最終評価
メーカーとの調整と実機テストの工夫
選定においては、事前に実機テストを依頼。段差部分だけにコースを設けて、負荷条件(フル積載・連続走行)を再現した上で実走テストを実施。さらに、各モデルの登坂トルクや段差進入角度、タイヤ摩耗率などを比較することで、実環境に即した性能を数値ベースで把握しました。
AMR新モデルでの稼働成果と改善点
安定搬送に成功した要因分析
再導入したAMRは、最大30mmの段差、15度の傾斜にも対応可能なモデル。実績ある産業用タイヤと駆動制御が採用されており、これが高い走破性の実現につながりました。導入から2か月間で、稼働停止トラブルは月1回以下に抑えられ、トラブル対応に追われる日々から解放されました。
【初回導入と再導入の効果比較】
項目 | 初回導入(旧モデル) | 再導入(新モデル) | 改善内容 |
---|---|---|---|
段差での停止頻度 | 毎日2〜3回 | 月1回未満 | 走破性能の向上 |
保守対応頻度 | 月4回以上 | 月1回未満 | メンテ性と事前対応が改善 |
稼働安定度(稼働率) | 約70% | 約95% | 実績に基づく選定の成果 |
運用体制・保守体制の改善ポイント
再導入を機に、AMRの点検・清掃のルーティンが明文化され、週次点検と月次保守が定着。さらに、異常停止時の通知連携も仕組み化され、トラブル発生時の初動対応が迅速になりました。AMR単体の性能だけでなく、“運用体制の再設計”が安定稼働を支える要因となったのです。
まとめ|現場の気づきが生んだ「成功するAMRの再導入」
AMR導入は、「動けば終わり」ではなく、「安定して動き続ける」ことがゴールです。一度失敗したからこそ得られた知見を活かし、現場が主導して選定と改善を進めた結果、今回は“成功する再導入”となりました。
現場環境を正しく見極め、スペックだけでなく“実際の動き”を重視する。そうした姿勢こそが、真の自動化成功のカギとなります。
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