AMR(Autonomous Mobile Robot)は、工場や物流倉庫で自律走行し、荷物を搬送するロボットです。しかし、どのAMRでも良いというわけではありません。現場によって最適なモデルは異なり、選定を誤ると効果を得られないばかりか、運用コストや業務の負荷が逆に増すこともあります。
このガイドでは、現場目線で逆算する形で「AMRを選ぶ際に必ず確認すべき5つの選定ポイント」を徹底解説します。スペック比較に頼らない、新しいアプローチで、最適な1台を導き出すヒントが満載です。
目次
AMR選定:現場タイプ別の早見チャート
▼現場の主な特性を選んでください:
[1] 搬送エリアは?
├─ 屋内・狭い通路 → 台車型AMR・棚搬送型AMR
└─ 屋外・長距離 → 屋外対応型AMR
[2] 搬送物は?
├─ ケースや小物類 → 台車型AMR
├─ 棚・カゴ車ごと → 棚搬送型・牽引型AMR
└─ パレット単位・重量物 → 牽引型AMR
[3] ルートは固定か?
├─ 固定ルート → QRコード/磁気テープ方式
└─ 柔軟に変更したい → SLAM方式
AMRの選定ポイント①|走行ルートの特性を見極める
(※図表:ルート形状別 AMRナビゲーション方式の適合)
走行環境タイプ | 代表的な特徴 | 推奨ナビ方式 | 備考 |
---|---|---|---|
狭小・複雑な屋内ルート | 曲がり角が多い、分岐が多い | SLAM | 自由度が高くルート変更が容易 |
倉庫などの直線ルート | 同じルートを周回する | QR/磁気テープ | 安定稼働、低コスト施工が可能 |
屋外・段差ありルート | 雨・傾斜・障害物などの影響あり | GPS+SLAM | 耐候性と自己補正能力が必要 |
AMRの選定ポイント②|搬送物の「荷姿」と重量に合っているか
(※図表:荷姿と適合AMRタイプのマトリクス)
荷姿タイプ | 重量 | 代表的なAMRタイプ | 運用例 |
---|---|---|---|
ケース | 軽量~中量 | 台車型AMR | 部品搬送、仕分け作業の補助 |
棚/カゴ車 | 中量~重量 | 棚搬送型/牽引型AMR | EC倉庫の棚ピック、カゴ車牽引 |
パレット | 重量物 | 牽引型AMR | 出荷場やライン間の重量搬送 |
AMRの選定ポイント③|システム連携と拡張性
(※テキスト図解:AMRとシステム構成の関係)
+-+
| 倉庫管理システム(WMS) |
+-+
↓ 指示連携
+-+
| AMR本体 |
+-+
↓ 実績データ
+-+
| 製造実行システム(MES) |
+-+
拡張運用を想定する場合、複数AMRとの連携や交通制御ソフトの導入も前提になります。
AMRの選定ポイント④|運用する人と現場の体制に合っているか
(※図表:運用負荷と選定難易度の関係)
運用レベル | 現場対応の自由度 | 推奨するAMRタイプ | 備考 |
---|---|---|---|
高(SIer常駐) | 高い | カスタム型AMR | 独自開発やマルチ連携が前提 |
中(ITリテラシーあり) | 中程度 | GUI操作型AMR | ノーコード設定・ルート編集が可能 |
低(現場中心運用) | 低い | 簡易ナビ型AMR | 定型ルート運用・最低限の操作で対応可能 |
AMRの選定ポイント⑤|導入コストとROI(投資対効果)
(※テキスト図解:ROI試算の考え方)
【ROI=(削減される年間コスト-AMRの年間コスト)÷ 初期投資額】
例:
- 現場作業員2人×年500万円=1,000万円
- AMR導入により1人分削減 → 年500万円のコスト削減
- AMR本体+初期導入費用:1,200万円、年間保守費:100万円
→ ROI=(500万-100万)÷ 1,200万 ≒ 0.33(約3年で回収)
現場別AMRタイプの分類表(再掲)
タイプ名 | 適した荷姿 | 主な利用現場 | ナビゲーション方式 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
台車型AMR | ケース・小型資材 | 工場内の部品供給ライン | SLAM/QR/磁気テープ | 小回りが利き柔軟なレイアウトに対応 |
棚搬送型AMR | 棚を丸ごと | EC倉庫・ピッキング現場 | SLAM/レーザーSLAM | ピッキング効率を大幅に向上 |
牽引型AMR | カゴ車・パレット | 倉庫・出荷場間の一括搬送 | SLAM中心 | 重量物対応・一括搬送向き |
屋外対応型AMR | ケース/パレット等 | 屋外通路・工場間搬送 | GPS+SLAM | 耐候性に優れ、段差や雨天にも対応 |
AMR選定を成功させるためのステップ
[STEP 1] 現場課題の洗い出し
↓
[STEP 2] 荷物とエリアに合わせた分類
↓
[STEP 3] 必須条件・優先度の整理
↓
[STEP 4] 複数社から提案を受ける
↓
[STEP 5] 比較・試験導入・本採用
このステップで選定を進めることで、思いつき導入やスペック重視の誤選定を防ぐことができます。
まとめ|“自社にとっての正解”を選び取る
AMRの選定は、スペックや価格の比較ではなく、「自社の現場に最も合った運用ができるかどうか」が最大の判断基準です。
本記事で紹介した5つの選定ポイントと図解を参考に、導入目的や現場の実態と向き合いながら、最適な1台を見極めてください。