「AMRを導入すれば、ピッキング作業は一気に楽になる」——そう期待して導入したものの、現場条件とのミスマッチにより想定した効果が出なかったケースも報告されています。とくに、動線の複雑さや棚配置、通路幅などの環境要因がAMRの動作に影響を与えることは少なくありません。

実は、ピッキング作業とAMRの相性には“見えない落とし穴”があります。通路の幅、棚の配置、スタッフの動き。ちょっとした条件の違いが、AMRのタイプごとに成否を分けてしまうのです。

この記事では、現場に合った「ピッキング対応AMR」のタイプをどう見極めればよいのかを、比較表・診断チャート・チェックリストを交えて徹底解説します。最適な1台を選ぶために、まずは“タイプ選定”から始めてみませんか?

なぜ「ピッキング対応AMR」のタイプ選定が重要なのか

ピッキング作業は、倉庫業務の中でも最も頻度が高く、人的負荷も大きい工程です。商品ごとに異なる保管場所や、複雑な動線に対応する必要があり、単純な搬送ロボットでは現場にフィットしないケースも少なくありません。

そのため、「AMRなら何でもいい」という選び方ではなく、ピッキング用途に適したタイプを見極めることが導入成功の第一歩となります。実際に、タイプ選定を誤ったことで停止トラブルが多発した事例や、スタッフとの連携が取れず業務効率が落ちたケースも多数報告されています。適切な選定によって、無理なく既存作業に組み込めるかどうかが大きく変わるのです。

なお、AMR導入時にありがちな失敗パターンや注意点については、こちらの記事も参考になります。

ピッキングAMR導入の落とし穴|倉庫内作業に合わないタイプを選ばないための注意点

AMRの搬送タイプ一覧|ピッキング作業に向く・向かないタイプ

ピッキング作業で使用されるAMRは、大きく以下の3タイプに分類されます。それぞれの特徴と、ピッキングとの相性を整理します。

【表|AMRタイプ別|特性・向き不向き一覧】

AMRタイプ特徴ピッキングへの適性主な活用現場注意点
自律走行型(SLAM方式)柔軟なルート変更、自己位置推定可変レイアウト倉庫、混載ピッキング初期設定とマップ調整が必要
台車追従型人の後ろを追従、直感的操作が可能少量多品種のピッキングエリア人の移動ペースに依存しやすい
定点停止型指定地点で停止し搬送物を受け渡す定型ルート倉庫、工程間搬送柔軟な動線変更には不向き

例えば、頻繁にレイアウトが変更される現場では「定点停止型」は柔軟性に欠け、導入後すぐに再調整が必要になる可能性があります。一方で、定期的なルートで部品や箱を運ぶだけなら、定点停止型で十分なケースもあります。目的と環境によって「合うタイプ」は大きく変わります。

倉庫現場の条件でわかる!AMRタイプ診断フローチャート

現場の構造や作業スタイルによって、最適なAMRタイプは異なります。以下のフローチャートを使って、自社に合うAMRの傾向を簡易診断できます。

【テキスト図解|AMRタイプ診断フローチャート】

作業者と一緒にAMRを動かしますか?
 ├─ はい → 台車追従型
 └─ いいえ
   ├─ レイアウトが頻繁に変わりますか?
   │  ├─ はい → 自律走行型(SLAM)
   │  └─ いいえ → 定点停止型

このチャートにより、作業者の動き・棚の位置・レイアウト変更の頻度など、自社の現場状況を整理しながら、導入すべきタイプを絞り込むことができます。

診断結果をどう活かす?AMR選定時のチェックポイント

診断結果をもとに、実際の選定・導入を検討する際には、以下の視点も忘れずに確認しましょう。

導線と棚配置の見直し

ピッキング導線の交錯や棚間スペースの不足は、AMRの走行トラブルの元になります。棚配置や通路幅をAMR基準で最適化できるかを事前に検討します。特に自律走行型の場合、停止ポイントに十分な余白がなければ、誤停止や通行不能のリスクが高まります。

現場オペレーションの再設計が必要なケース

作業者との連携が必須となるピッキングでは、AMRの導入にあわせて作業指示の出し方や工程の組み直しが必要になることがあります。現場のオペレーションが従来のままでは、かえって業務効率が下がる可能性もあるため注意が必要です。

AMRスペックの優先順位を整理

最高速度や積載重量よりも、停止精度やセンサー構成などがピッキング作業には直結します。比較表では見落としがちな運用上の相性を重視しましょう。実際に、停止精度が高いモデルであれば、作業者が迷うことなく荷物の受け渡しができ、時間短縮につながります。

【表|選定時に確認したい現場条件チェックリスト】

チェック項目内容の確認ポイント対応するAMRタイプ例
通路幅800mm以上あるか台車追従型、自律走行型
ピッキング作業頻度ピークタイムが明確にあるか追従型、自律走行型
スタッフ数とスキル操作教育が容易か台車追従型
レイアウトの柔軟性定期的に棚やルートが変わるか自律走行型
停止精度への要求±数cm単位の正確さが求められるか自律走行型(SLAM)

まとめ|ピッキングAMRは「タイプ選定」が9割

どれほど高性能なAMRを導入しても、「現場との相性」が合わなければ本来の力は発揮されません。本記事で紹介した診断フローやチェックリストを活用し、自社に合った搬送方式を見極めることが、ピッキング作業の効率化につながります。

タイプ選定の精度が高ければ、導入後の微調整やオペレーション変更が少なくなり、スムーズな稼働と早期の効果実感が期待できます。検討段階での情報収集と現場の可視化が、成功の分かれ道になるでしょう。

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