製造業や物流業界において、品質管理やリスク管理を強化するための最も効果的な手段の一つが「トレーサビリティ」です。製品のロット番号、出荷時刻、搬送経路などのデータが正確に記録され、リアルタイムで追跡可能になれば、現場の安全性と効率性は飛躍的に向上します。

逆に、このプロセスが不完全であれば、重大なミスやトラブルが発生し、最終的には企業に大きな損失をもたらすことも…。

そんな中で重要なのが、トレーサビリティを実現するための「AGV(自動搬送車)」選定です。自動搬送車は、ただの搬送ツールにとどまらず、データ記録を自動化し、作業の可視化を進める強力なパートナーとなります。本記事では、トレーサビリティ強化に不可欠なAGVの選び方を徹底的に解説し、データ自動記録対応モデルの魅力を余すところなく紹介します。

なぜ今、搬送履歴の“見える化”が必要なのか

現代の製造業や物流業界では、搬送履歴を可視化し、データとして管理することがますます重要になっています。特に、食品や医療機器など、品質が命を左右する業界では、製品の追跡と証拠の管理が不可欠です。

製品ロット・出荷時刻の追跡ニーズの高まり

製品の品質や安全性を確保するために、製品ロットや出荷時刻の正確な追跡は必須です。特に、製品に問題が発生した場合、その原因を特定し、どの製品が影響を受けたかを迅速に把握することが求められます。手作業で管理している場合、誤った記録やミスが発生するリスクが高く、その後の対応に時間とコストがかかることになります。

現場で実際に起こりうるリスク
例えば、ある食品工場では、搬送データが手動で入力されていたために、出荷ロットの誤記録が発生。その結果、出荷された製品が市場に流れ、回収対応に大きなコストがかかり、企業の信頼が損なわれました。このようなミスが発生すると、リコール対応にかかる時間やコスト、さらにはブランドイメージの損失などが企業にとって致命的なダメージとなります。

ミス発生時の「原因遡及」と「責任明確化」対策

トレーサビリティが強化されていない現場では、ミスが発生した際に「誰が」「どこで」ミスを犯したのかを特定するのが困難です。トレーサビリティが整備されていることで、ミスの発生場所や原因を素早く追跡し、問題が発生した箇所を即座に改善することが可能となります。

現場で実際に起こりうるリスク
もし、AGVがデータ記録に対応していなければ、製品の移動履歴や搬送経路を確認するのが難しく、ミスの原因を遡ることができません。この場合、ミスを防ぐための対策を施すことができず、再発防止策を立てるのが遅れ、同様のトラブルが繰り返されてしまう危険性があります。

トレーサビリティ対応AGVに求められる機能

トレーサビリティ強化には、搬送データを自動で記録し、リアルタイムで更新するAGVが不可欠です。以下の機能を備えたAGVは、現場での効率化とデータ管理の強化を実現します。

ID搬送/バーコード・RFID対応搬送の基本

搬送中の製品にIDを付与し、そのデータを自動で読み取る機能は、トレーサビリティ強化には欠かせません。AGVがバーコードやRFIDタグを読み取ることで、製品のロット情報や搬送経路が自動で記録され、システムと連携して管理することが可能になります。

表:バーコード vs RFIDの比較

特徴バーコードRFID
スキャン精度高精度非接触で高精度
対応範囲限定的(直線距離)広範囲(数メートル以内)
コスト低価格高価格
スキャン速度やや遅い高速
対象範囲製品の表面やパッケージ部分製品内部にも対応可能
利点コストが安く、導入が簡単スキャン範囲が広く、複数対象同時認識

搬送経路・タイムスタンプ・ステータス記録の自動化

AGVは搬送経路や搬送物の状態をリアルタイムで監視し、データを自動で記録することが求められます。タイムスタンプ機能や搬送経路記録により、各製品がどの経路を通り、どの時刻にどこに搬送されたのかを完全に記録できます。これにより、後から問題が発生した際に原因を特定しやすくなり、迅速な対応が可能になります。

AGVのログデータの取得・保存方式の違い

AGVが記録するデータは、保存方法によって使い勝手が大きく異なります。クラウド連携型とオンプレ記録型のどちらが適しているか、選定時には十分な検討が必要です。

クラウド連携型 vs オンプレ記録型の比較

クラウド型とオンプレ型は、データ保存の方式が異なり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

表:クラウド連携型 vs オンプレ記録型の比較

項目クラウド連携型オンプレ記録型
データ保存容量無制限(プロバイダによる)制限あり(サーバー容量依存)
アクセス速度インターネット依存ローカルネットワーク依存
初期費用低い(サービス利用料)高い(サーバー設備等の投資)
維持コスト定期的な月額料金サーバー管理費、メンテ費用
セキュリティ高度な暗号化、バックアップ内部で管理、セキュリティのカスタマイズ可能

データ容量・保存期間・検索性の違い

クラウド型とオンプレ型では、保存できるデータ容量、保存期間、そして検索性に大きな違いがあります。クラウド型は無制限に近い容量を提供し、柔軟にデータを保存できるため、大量のデータを長期にわたって保存できます。一方、オンプレ型は保存容量に制限があるため、必要なデータのみを管理する必要があります。

システム連携で実現する“現場×上位”のデータ統合

AGVは、WMS(倉庫管理システム)やMES(製造実行システム)と連携することで、データの統合が可能になります。このシステム間のデータ統合により、リアルタイムで現場の状況を把握でき、作業の効率化が進みます。

WMS・MESとのAPI接続とリアルタイム更新

WMSやMESとAPIを使って接続することで、搬送データが自動的に反映され、データの整合性を保ちながら効率的に作業を進めることができます。

フロー図:システム連携とデータ更新

[WMS] API--> [AGV] API--> [MES]
   ↑                               ↓
  データ更新                        リアルタイム搬送データ取得
  (在庫情報、ロット情報など)  (搬送状況、エラーステータスなど)

トレーサビリティ強化に成功したAGV活用事例

実際の現場で、AGVの導入によってトレーサビリティがどのように強化されたのかを見ていきましょう。

食品工場におけるロット搬送と記録連携例

ある食品工場では、AGVを導入することで製品のロット番号が自動で記録され、搬送経路も正確にトラッキングされました。この結果、出荷ミスが減少し、品質管理が強化されました。

医療機器製造現場での出荷追跡システム導入例

医療機器を製造する現場では、AGVによって製品の出荷時刻やロット番号が正確に記録され、万が一のリコール時にも迅速に対応できる体制が整いました。

まとめ|単なるデータ記録ではなく──「有用なデータ」を生むAGVの選定を

トレーサビリティを強化するためには、単にデータを記録するだけでは不十分です。そのデータが実際に役立ち、現場で即座に利用できることが重要です。AGVを選ぶ際は、搬送データ自動記録に対応したモデルを選ぶことが、効率化と品質管理を飛躍的に向上させるカギとなります。

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