物流や製造業における効率化を目指して、多くの企業がAGV(自動搬送車)の導入を進めています。しかし、AGVの導入には単なる機械の購入に留まらず、現場における作業標準化と属人化排除を進めることが重要です。なぜなら、どれだけ高機能なAGVを導入しても、現場の作業者がその操作方法を習得しきれなければ、その真価を発揮できないからです。
本記事では、現場での属人化を排除し、誰でも簡単に使えるAGVを選ぶためのポイントを解説します。AGVを選ぶ際に重視すべき要素や機能を具体的に紹介し、効率的な導入方法を解説していきます。
なぜ現場で属人化が発生するのか
人によって異なる搬送ルート・手順・判断
属人化が進む主な原因の一つが、作業者ごとの異なるルート選択や手順のバラつきです。例えば、同じスタート地点から同じゴール地点を目指しても、作業者によってルートや手順が異なることがあります。このバラつきが作業の効率を低下させ、他の作業者に引き継ぐ際に混乱を生じさせます。
例:
- Aさんは最短ルートを選ぶ。
- Bさんは安全を優先して迂回路を選ぶ。
- Cさんは自己流のルートを選び、最短でもないし、安全でもないルートを選んでしまう。
このように、同じ目的地に向かっても、作業者が選ぶルートが異なるため、作業の再現性が低くなります。
スタート地点
↓
┌───────┐
│Aさん:最短ルート│ →(矢印①)
└───────┘
┌───────┐
│Bさん:安全重視ルート│ →(矢印②)
└───────┘
┌───────┐
│Cさん:自己流ルート│ →(矢印③)
└───────┘
↓
ゴール地点(バラバラ到着)
経験者に頼った教育体制と手作業の限界
現場では、経験豊富な作業者が新たなスタッフを教育することが一般的ですが、この方法では作業手順が個人の経験に依存することになります。教育を受けた後でも、手作業が多いと、作業者は自分のやりやすい方法で作業を行ってしまうため、作業の標準化が進みません。
さらに、経験者がいなくなると、その作業を引き継ぐのが難しくなり、現場が混乱することがよくあります。手作業による限界があるため、属人化は避けられない問題となります。
AGVによる作業標準化の具体的な効果
ルート固定・自動搬送で作業手順を統一
AGVを導入する最大のメリットは、作業手順を自動化し、標準化できる点です。AGVはあらかじめ設定されたルートを正確に移動し、作業手順も自動的にこなします。このため、作業者による判断の違いはなくなり、どの作業者でも同じ結果を得ることができます。
例えば、AGVは事前に決められたルートを移動するため、毎回同じ道順で移動し、作業を行います。このため、作業の再現性が高まり、作業の質が安定します。
ビフォーアフター図解:
【ビフォー】
スタート→(バラバラな矢印3本)→ゴール
【アフター】
スタート→(一本の直線ルート)→ゴール
(AGVが固定ルートを走行)
再現性のある動作で“人の判断差”を排除
AGVはあらかじめ設定されたプログラムに従って作業を行うため、人による判断の違いがなくなります。例えば、ある作業者が「この道が早いだろう」と直感で選んだルートも、AGVには関係ありません。AGVは設定されたルートをただ進むだけです。この再現性のある動作が、作業の標準化を実現します。
比較表:
項目 | 人手 | AGV |
---|---|---|
ルートの再現性 | バラバラ | 毎回同じ |
判断のバラつき | 大きい | ほぼ無し |
教育コスト | 高い | 低い |
作業スピード | 個人差あり | 一定 |
属人化排除に向いたAGV機能とは
ノーコード設定・簡易操作パネルの有無
AGVを選ぶ際には、操作の簡便さが重要です。操作が複雑であれば、それだけ教育に時間がかかり、現場での属人化が進んでしまいます。特に、ノーコード設定や簡易操作パネルを搭載したAGVを選ぶことで、作業者が特別なスキルや知識を必要とせず、誰でもすぐに操作を覚えることができます。
例えば、ノーコードAGVでは、画面上で出発地点とゴール地点を選ぶだけで、簡単に搬送ルートを設定できます。これにより、作業者が操作方法を学習する負担が減り、すぐに運用に移すことができます。
比較テキスト図解:
【従来型AGV】
┌───────────┐
│ コマンド入力画面 │
│ 例:Move(5,10) │
└───────────┘
→ 難しい/専門知識が必要
【ノーコードAGV】
┌───────────┐
│ □ 出発地点を選ぶ │
│ → □ ゴール地点を選ぶ │
│ → □ 保存ボタン押す │
└───────────┘
→ ドラッグ&ドロップで完了
作業引き継ぎを容易にする運用設計
シナリオ保存・再実行機能の活用
AGVには、作業のシナリオを保存し再実行する機能があります。これにより、特定の作業フローをあらかじめ設定しておき、作業者が変わった場合でも、簡単にそのシナリオを呼び出して再実行することができます。これにより、作業の引き継ぎがスムーズになり、属人化を防止できます。
シナリオ保存・呼び出しフロー図解:
【シナリオ登録】→【保存】→【いつでも呼び出し実行】
教育・運用工数を減らす運用支援機能
スタートアップガイド・動画ナビ付きモデル
AGVの選定では、運用の簡便さも重要な要素です。特に、スタートアップガイドや動画ナビが付いているモデルは、初心者でもすぐにAGVを運用できるため、教育コストを大幅に削減できます。作業者が現場に投入される前に、これらのガイドを見れば、操作方法を簡単に理解でき、誰でもすぐに作業に入れるようになります。
かんたん起動フロー図解:
- 電源を入れる
↓ - スタートガイド画面が自動表示
↓ - 画面の指示に従って進めるだけ
↓ - AGVが起動完了
まとめ|「誰でもできる」を前提にしたAGVこそ、属人化を断つ第一歩
AGVを選ぶ際には、誰でも簡単に使えることが最も重要です。作業手順の自動化や再現性の高い動作、そして操作の簡便さがあれば、現場での属人化を排除し、作業の標準化が進みます。特に、ノーコード設定、簡易操作パネル、シナリオ保存機能などを備えたAGVを選ぶことで、現場での作業の質を高め、引き継ぎや教育の工数も削減することができます。
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