AGV(無人搬送車)を導入したものの、「ルートを外れる」「停止位置が安定しない」といったトラブルが続くケースは少なくありません。実はこうした問題の多くは、機械や制御の不具合ではなく、磁気テープの施工ミスが原因です。

たとえば、「床の油分をしっかり落としたつもりだったが、数日後にテープが浮いてきた」「急なカーブに無理やりテープを貼ってしまい、AGVがふらつく」といった、小さな見落としが走行精度に大きく影響します。

この記事では、AGVの導入時やルート変更時に必要となる磁気テープの貼り方を、現場で実際に施工を行う人の目線で解説します。施工前の準備から貼付けの基本手順、よくある失敗とその対策まで、初めて施工を行う方や、今後内製化を検討している企業の担当者に役立つ実践的な内容です。

現場での貼り方ひとつが、AGVの安定稼働を左右する。そんな現実に備えて、この記事をチェックリスト代わりに活用してみてください。

磁気誘導式AGVとは?|走行原理とテープの役割

磁気誘導方式のしくみ

  • 床に貼られた磁気テープの磁場をAGVのセンサーが検知
  • センサーがルートを読み取り、自律的に走行・停止・分岐を実行
  • 主に屋内の定型ルート(工場・倉庫)で多く採用

磁気テープの仕様と注意点

  • 幅:一般的に20〜30mm(メーカーにより異なる)
  • 厚み:0.8〜1.5mm程度が標準
  • 表面が摩耗すると検知不良が起こるため、施工精度が重要

施工前に準備すべきものと環境チェック

施工前チェックリスト

チェック項目済/未補足
床面清掃済み□ 済 □ 未油分/粉塵が残っていないか確認
墨出し完了□ 済 □ 未曲線部のRが1000mm以上か確認
ローラー圧着実施□ 済 □ 未テープ全体に均一な力を加えたか
センサーマーク貼付□ 済 □ 未停止位置などのズレがないか確認

使用する道具一覧

道具用途
磁気テープ誘導用ルート形成
清掃用クロス/脱脂剤床面の油分除去
チョークライン・レーザー墨出し器ルートガイド用の基準線作成
カッター/ハサミテープの裁断
ゴムローラー圧着・密着処理用
センサーマーク・停止位置マーク停止精度が必要な場合に使用

基本の貼り方ステップ|誰が見てもできる施工手順

Step 1:ルートガイドの作成(墨出し)

設計図に基づいて、床に基準線を引きます。直線はチョークラインで、曲線部分は自然なRを描くようにします。

例:R1000mmは「直径2mの大きなバケツ」を置いたようなイメージ。あまりに急だとAGVがふらつきます。

Step 2:床面清掃と下地処理

ホコリ・油・水分を完全に除去。特に脱脂は重要で、軽く拭いただけでは意味がありません。

NG例:「掃除機かけたからOK」→ 数日後に浮いて剥がれる原因に。

Step 3:磁気テープの仮置きと裁断

曲線部では“外側をやや伸ばす”ように仮置きすることで、ねじれを防ぎます。

Step 4:圧着とローラー処理

ゴムローラーで押さえながら貼っていきます。手のひらで押すだけでは不十分です。

現場の声:「指で押してもすぐ浮いてきた」→ ゴムローラーを使ったら完全密着した。

Step 5:端部・マーカー処理

端部の浮きやすい箇所は追加で押さえるか、上から補強テープを重ねましょう。マーカーは正確な位置に貼らないと停止精度に大きく影響します。

よくある施工ミスと失敗例

トラブル内容原因回避策
AGVがルートを外れる曲線のRが小さすぎ設計時点でR1000mm以上を確保
途中でテープが浮く油分・湿気・ホコリ脱脂・乾燥処理を徹底
停止位置がズレるセンサーマークの誤差正確な位置決めと事後検証
交差点で誤認識テープ重なりや交差角が急交差点専用マーカーを使用

『ちょっとズレたけど、まあいいか』が後の事故に繋がります。

再施工・貼り直し時の注意点

よくある再施工パターン

  • レイアウト変更(ルート変更による貼り直し)
  • テープ摩耗(走行頻度が高い/重荷重による劣化)
  • 初期施工ミスの修正

再施工時のポイント

  • 旧テープ撤去時は“接着剤痕”を完全に除去
  • 路面材により除去剤の選定が必要(塗装床は注意)
  • 同ルートへの貼り直し時は精度に影響するため位置ズレに要注意

AGVメーカー別:磁気テープ施工条件一覧

メーカー名テープ幅曲率R目安特記事項
メーカーA25mmR1000mm以上分岐用マーカーあり
メーカーB20mmR800mm以上上からクリアテープ推奨
メーカーC30mmR1200mm以上屋外使用は非対応

FAQ|よくある質問

磁気テープは何年くらい持ちますか?

屋内使用なら3〜5年が目安。走行頻度が高い箇所は短くなる傾向があります。

自社で施工できますか?

初回はベンダーの立ち合い施工推奨。2回目以降は内製でも可能です(要マニュアル整備)。

テープ施工の失敗でAGVが壊れることはありますか?

走行不能・誤認識による停止などが発生し、場合によってはセンサー異常として停止するリスクがあります。

テープ施工のあとに何をチェックすべき?

初回走行時に “曲線通過時の揺れ” “交差点での誤認” “停止位置のズレ” を重点確認しましょう。

まとめ|磁気テープ施工は「AGV導入成功のカギ」

AGVの安定稼働を支えるのは、システムでも本体でもなく「走行インフラの精度」です。磁気テープ施工が雑だと、導入効果は半減どころかマイナスにもなりかねません。

本記事で紹介したポイントをもとに、現場で誰が貼っても安定するテープ施工を目指してみてください。導入時だけでなく、再施工・ルート変更時にも応用可能です。