AGVは実用化が進む一方で、開発や販売を手がける企業も増えています。しかし、コストやオペレーショントラブルなどにより「思ったように活用できない」企業もたしかに存在します。

導入の成否を分けるのは、綿密な計画と段階的なステップ設計です。
多くの成功企業は、いきなり全社導入するのではなく、段階を踏みながら「現場にフィットするAGV」を見極めていきます。

本記事では、AGV導入を成功させるための正しいプロセスを「検討〜稟議〜試験導入〜本格展開」の4段階に分けて解説します。現場目線のノウハウや、実際に導入を推進した企業の声、チェックリストといった実務で使える資料も掲載しています。

AGV導入の流れとは?導入プロセス4ステップを解説

AGV(無人搬送車)は一度導入すると、現場オペレーションや作業動線に大きな影響を与える存在です。そのため、下記の4ステップを通じて、段階的かつ着実に導入を進めることがポイントとなります。

検討フェーズ 〜 現場の課題抽出 / 情報収集 / 基本方針の確立
稟議フェーズ 〜 テスト導入案の練り上げ / ROI計算 / 稟議紹介
試験導入フェーズ 〜 PoC / 評価指標の設定 / 利用者へのヒアリング
本格導入フェーズ 〜 全面展開 / 作業効率化 / 保守体制

【ステップ1】AGV導入の検討フェーズ|課題抽出と情報収集

現場の課題抽出

まず最初に行うべきは、「なぜAGVを導入したいのか」という目的の明確化です。

  • 搬送業務の属人化による遅延
  • 複数人による重複作業
  • 人手不足により夜間作業が維持できない

こうした現場課題を洗い出し、定量的なデータ(搬送距離・時間・頻度など)で可視化することが、最初の一歩となります。

AGVの概要調査

AGVといっても、種類や走行方式はさまざまです。

  • 磁気テープ式/QR式/SLAM方式などのナビゲーション方式
  • 牽引型/台車型/リフター型といった搬送方法の違い
  • 障害物検知の精度や走行スピード、積載重量などのスペック

これらを比較しながら、候補となる機種を3〜5社ほどピックアップしていきましょう。

補助金情報の収集

中小企業を対象とした補助金や助成金を活用すれば、初期コストを大幅に抑えることが可能です。

  • IT導入補助金(ロボティクス枠)
  • 各自治体のスマート工場化支援事業
  • 展示会出展と連動した補助制度

申請のタイミングや要件もあるため、早めの情報収集がカギになります。

【ステップ2】AGV導入の稟議フェーズ|ROI試算と関係部門の調整

コスト導入案の設計

「いきなり本格導入」はリスクが高いため、まずはPoC(概念実証)やテスト導入のみで稟議を通すことをおすすめします。
これにより、初期投資を最小限に抑えつつ、経営層や現場の合意形成を図ることができます。

計算すべきROI項目

項目内容
AGV本体購入費100万円/1台 など
安全実装費道路仕様変更、機器内設置
統合管理システム連携WMS/本社系などとの連携調整
人件減給規模日付ベースの保障で算出

現場オペレーター1名分の人件費を削減できると仮定した場合、その年次コスト削減効果とAGV本体・運用コストとの回収期間を比較することで、投資の妥当性を示すことが可能です。

各部門との調整ポイント

社内では以下のような部門が関与してきます。調整の抜け漏れがないよう、一覧化して事前に打ち合わせを進めておきましょう。

フェーズ主担当部門関与者
検討生産技術部現場管理者、保守担当者
稟議管理部門経営層、財務、法務、IT部門
試験導入生産技術+現場現場オペレーター、品質管理部門
本格導入全社経営層、人事、購買、IT・保守

【ステップ3】AGVの試験導入(PoC)フェーズ|小規模導入で有効性を検証

PoCの設定ポイント

AGVを導入する前に、実際に自社環境で動かしてみるPoC(概念実証)を行います。

  • 1台だけ導入し、1日の稼働をシミュレーション
  • 工程やフロアを限定して導入
  • 昼間のみ/夜間のみなど、時間帯の限定運用

評価指標テンプレート

項目評価基準
接続効率日付転送回数/計画比
人件減給度AGV代替の人数/給付費減給
実用程度現場上の反応、返信率
故障率1日あたりの故障回数

導入事例|中堅製造業B社の成功ストーリー

B社(従業員150名・自動車部品製造)は、人手不足と作業員の移動距離の長さに課題を感じていた。2024年にAGVの試験導入を開始し、2週間のPoCでは1ラインのみを自動化。結果として搬送作業の工数を43%削減し、現場からも「肉体的な負担が減った」と好評。導入決定後は5台体制で本格展開し、他工程への応用も検討中。

【ステップ4】AGVの本格導入フェーズ|スケーラブルな拡張と定着化

導入機体数の拡大

PoCで成果を確認した後は、複数ラインやフロア全体への展開を視野に入れます。

  • 台数を段階的に増やす(例:1台→3台→10台)
  • 稼働スケジュールや配車ルールを調整
  • バッテリー管理やメンテナンスの体制強化

機器線合理化や作業改善

  • AGV導入にあわせて作業動線を見直す
  • 従来のピッキング・搬送工程との役割分担
  • 他の自動化機器(搬送ロボットやWMS)との連携

教育・保守体制の構築

  • 社内オペレーターへの操作研修
  • トラブル対応マニュアルの作成
  • メーカー・代理店との保守契約の明確化

AGV導入で失敗しないための注意点と対策

  • 現場調整なしで購入し、実運用で使われない
  • PoCの評価もなく本格導入し、手作業に後退
  • 保守やエラー対応を事前に想定せず、遅れを生じる

導入後の運用も含めて設計することで、AGVを「現場に根づいた設備」として定着させることができます。

導入フェーズ別CTA設計(例)

検討段階「AGV導入チェックリスト(Excel)」をダウンロード
稟議段階「ROI計算テンプレート(PDF)」を入手
試験導入段階「PoC支援が可能なメーカー一覧を見る」
本格導入段階「保守契約の選び方ガイドを読む」

導入企業インタビュー事例|導入現場のリアルな声(モデルケース)

以下は業界現場の実態に基づき再構成したモデル事例です。
読者が自社に置き換えてイメージしやすいよう、導入前の課題・改善プロセス・効果をリアルに描いています。

製造業A社|「ライン間搬送の人手不足を自動化で克服」

企業プロフィール:従業員120名/電子部品メーカー/AGV初導入

導入前の課題:
手作業によるライン間搬送を2名体制で1日20往復。作業員の負担が大きく、ミスや遅延が発生していた。

担当者インタビュー:
「現場の声として“1日中カートを押しているだけ”という不満が多く、改善が必要だと感じていました。AGVの試験導入で実際に人の動きが減ったことで、“これは使える”と社内の空気が一変しました」

導入効果:
人件工数 約35%削減/搬送のミスゼロ化/作業員満足度の向上


物流業B社|「属人化していた入出荷搬送を標準化」

企業プロフィール:拠点数3/中型物流センター(3,000坪)/AGV台車型を導入

導入前の課題:
搬送業務はベテラン作業員頼みで、新人の定着が難しかった。歩行距離も1日5km以上。

現場マネージャーの声:
「初めてAGVを見たときは“うちの現場じゃ無理だろう”と思いましたが、試験導入中に『教えなくても動く』という安心感が出て、現場が逆にAGVに頼るようになりました」

導入効果:
教育期間の短縮/属人業務の排除/ヒューマンエラーの減少


製造業C社|「安全対策と多拠点展開の両立を実現」

企業プロフィール:複数工場を持つ大手部品メーカー/AGV導入済み→別拠点に横展開

導入背景:
安全パトロールで「フォークリフトと人の交差」が多数指摘され、本社よりAGV導入検討の指示が下る。

生産技術担当者のコメント:
「安全対策という面から導入がスタートしましたが、結果的に搬送効率まで改善できました。本社へ効果報告をした際、他拠点からも『うちでも導入したい』という声が上がりました」

導入効果:
フォークリフト削減/安全リスクの回避/グループ全体の横展開促進


よくある質問(FAQ)|AGV導入に関する疑問を解決

AGVとAMRの違いは何ですか?

AGV(無人搬送車)は磁気テープやQRコードなどのガイドに沿って走行するのに対し、AMR(自律走行搬送ロボット)は周囲の環境を認識して自律的に走行します。自由度の高さはAMRですが、AGVは構内物流の整備された現場に向いています

小規模な工場でもAGVは導入できますか?

はい、可能です。最近では1台から導入できる小型AGVや、初期工事がほとんど不要なモデルも登場しています。テスト導入を経て、徐々に拡大していく導入手法が有効です。

導入後のトラブル対応はどうなりますか?

保守契約を結ぶことで、定期点検や故障時のサポートを受けることができます。また、トラブル対応マニュアルを社内で整備しておくと、初期対応のスピードも向上します。

補助金の対象になる条件は?

多くの補助金制度では、DX(デジタル化)や省人化、生産性向上を目的とする導入が条件となります。導入目的や導入規模によって対象可否が変わるため、事前に自治体や制度の公募要領を確認しましょう。

稟議の際に一番重視されるポイントは何ですか?

多くの場合、「費用対効果(ROI)」と「安全性の担保」です。人件費削減や業務効率化の定量的データに加え、安全対策の明示があると説得力が高まります。

まとめ|AGV導入のステップを踏んで着実に現場改革を実現

AGV導入は「最初の1台をどう導入するか」で成否が決まります。

段階的に検討・実証・導入を進めていくことで、無理なく現場に浸透し、長期的に活用できる自動化設備となります。自社の課題と向き合いながら、まずはPoCから始めてみましょう。