AGV(無人搬送車)は、製造業や物流業を中心に急速に普及しています。しかし、「うちの現場でも使えるのか?」「どのタイプが最適なのか?」と疑問に感じる担当者も多いのが現実です。

そんなときに最も参考になるのが、“他社がどのように導入し、どんな成果を出しているか”という事例情報です。

本記事では、製造業・物流業における代表的なAGV導入事例を目的別・業種別に分類し、導入構成・課題・効果を具体的に紹介します。また、記事後半では共通する成功要因や、自社に合う事例の探し方も解説します。

「どの業界の、どんな目的で、どのようなタイプのAGVが選ばれているか」——実際のパターンから、自社に近いロールモデルを探すことができます。

事例の見方と分類軸について

事例の分類方針

AGVは導入目的や環境に応じて構成が大きく異なります。本記事では以下の分類軸で構成しています。

  • 業種別:製造業/物流業
  • 導入目的別:人手不足対策/搬送効率化/夜間対応/温度環境対応 など
  • AGVタイプ別:低床型/フォークリフト型/AMR/牽引式/小型AGV

読者が「自社に近い環境」「同様の課題」を持つ事例を探しやすいよう構成しています。

製造業編|現場改善につながった成功事例5選

① 電子機器メーカー|多品種・少量生産への柔軟対応

  • 導入背景:頻繁な品番切り替えと変則的な工程により、搬送作業が属人化。人員の調整に苦慮していた。
  • AGV構成:低床型AGV(磁気誘導式)×製造ライン連携
  • 効果:待機工数ゼロ化、稼働率15%向上、2名→1名へ人員最適化

② 自動車部品工場|工程間搬送の標準化

  • 導入背景:工程ごとの搬送が紙ベース・人手依存で、急な工程変更時に混乱が多発。
  • AGV構成:SLAM式AGV×生産スケジューラ連携
  • 効果:搬送ミス削減、突発変更への即応性向上、可視化による改善効果も

③ 食品製造工場|夜間出荷の自動化

  • 導入背景:夜勤帯の出荷業務を最低人数で維持する必要があり、作業負荷が偏っていた。
  • AGV構成:磁気テープ式AGV×仕分けエリア連携
  • 効果:深夜作業の人員0→無人化、出荷処理安定化、クレーム減少

④ 精密機器組立|狭小エリア対応の搬送支援

  • 導入背景:90cm未満の通路で台車が頻繁に詰まり、搬送遅延が発生していた。
  • AGV構成:小型AGV×ピッキングカート連携
  • 効果:狭小エリア対応、作業遅延リスク低減、歩行距離も20%削減

⑤ 医療機器メーカー|検査工程との同期化

  • 導入背景:検査済品の手運びが発生しており、次工程への連携も非効率だった。
  • AGV構成:AMR×検査装置連携(RFID連動)
  • 効果:トレーサビリティ強化、自動搬送による工程再編、工数30%削減

物流業編|倉庫内作業を最適化した事例5選

⑥ 3PL倉庫|入荷搬送の無人化

  • 導入背景:棚入れ作業の集中時間帯に人手が足りず、滞留が常態化していた。
  • AGV構成:フォークリフト型AGV×WMS連携
  • 効果:棚入れ時間30%短縮、作業事故ゼロを更新中

⑦ アパレルEC倉庫|ピッキングの歩行距離削減

  • 導入背景:繁忙期に歩行距離が多く、生産性にムラがあった。
  • AGV構成:棚搬送型AMR×在庫管理システム連携
  • 効果:生産性1.8倍、導線1/3に短縮、熟練度の差も吸収

⑧ 日用品倉庫|出荷エリア混雑の解消

  • 導入背景:出荷処理のピーク時間に作業が集中し、通路が危険な状態になることも。
  • AGV構成:牽引式AGV×仕分けライン統合
  • 効果:混雑の緩和、処理能力20%UP、安全性も向上

⑨ 冷凍食品物流|低温環境対応型AGVの導入

  • 導入背景:−20℃帯での作業者の負担が大きく、出入りのたびに温度変動が起きていた。
  • AGV構成:耐寒仕様AGV×ゾーン間搬送
  • 効果:人の立ち入り回数50%減、品質管理リスク軽減、作業時間短縮

⑩ EC物流センター|人と共存する混在環境対応

  • 導入背景:経験者に作業が偏っており、応援人員への教育がネックになっていた。
  • AGV構成:AMR×人協働エリア運用
  • 効果:誤搬送20%減、作業標準化、作業者のストレスも軽減

横断比較|導入パターン別の成功要因まとめ

製造業編|成功の決め手

事例No業種導入目的AGVタイプ成功の決め手
製造多品種対応低床AGVライン連携・段取り自動化
製造工程間標準化SLAM式AGV柔軟なルート変更対応
製造夜間無人化テープ式AGV単純搬送への集中活用
製造狭小エリア対応小型AGV90cm通路でも安全に稼働
製造検査工程との同期AMRトレーサビリティ強化と工数削減

物流業編|成功の決め手

事例No業種導入目的AGVタイプ成功の決め手
物流入荷省人化フォーク型AGVWMS連携と棚番精度向上
物流ピッキング効率化棚搬送型AMR歩行距離削減と作業導線の最適化
物流出荷エリア混雑解消牽引式AGV交通導線の整備による安全向上
物流冷凍環境対応耐寒AGVゾーン搬送と温度維持の両立
物流人協働エリアの自動化AMR誤搬送削減と標準作業の実現

業界×導入目的別マトリクス

 人手不足対応搬送効率化夜間稼働冷凍環境対応工程間連携・標準化
製造業①,②,④,⑤①,②,⑤②,⑤
物流業⑥,⑦,⑩⑥,⑦,⑧

導入を成功に導いた“現場の工夫”とは?

  • 導入前に現場主導でルート仮設計を実施し、シミュレーションを重ねてから本番適用
  • ベンダー任せにせず、工程ごとの“役割設計”を明文化して社内合意を得た
  • 小規模からのテスト導入(1ライン単位)を行い、失敗コストを抑えながらノウハウを蓄積

導入事例から見えた「失敗を防ぐ視点」

  • 「人手を減らしたい」だけではAGVは活きない → 目的を明確に(再配置なのか標準化なのか)
  • “便利そう”ではなく、“何を代替したいか”を明確にして選定すべき
  • 成功している現場は、目的・ルート・役割がシンプルかつ明確

まとめ|事例は答えではなく“ヒント”

AGV導入の事例には、共通した型もあれば、各社ならではの工夫もあります。

重要なのは、事例を「うちには合わない」と切り捨てるのではなく、自社に置き換えてどう活かせるかを考えること。

この記事を出発点に、自社の課題・目的に近いAGV導入パターンを見つけてみてください。