2025年、製造業・物流業界では、AGV(無人搬送車)とAMR(自律走行ロボット)の導入が急速に進んでいます。かつては一部の大手企業だけが導入していたこれらの技術が、今では中小企業でも現実的な選択肢となりつつあります。

しかし、技術が急速に進化する一方で、「市場の成長性は本当にあるのか?」「どの分野にどれくらい導入されているのか?」といった疑問を持つ方も多いはずです。

この記事では、世界および日本国内のAGV/AMR市場の最新規模と成長トレンド、導入の背景、業界ごとの傾向などを、2025年の最新情報をもとに網羅的に解説します。導入を検討する企業が「なぜ今AGV/AMRなのか」を理解し、戦略的に取り組むための材料としてご活用ください。

AGVとAMRの違いと市場での位置付け

AGVとは

AGV(Automated Guided Vehicle)は、あらかじめ設定された経路に沿って自動で搬送を行う車両です。磁気テープやマーカーなどを用いた誘導方式が一般的で、走行ルートの固定性と導入のしやすさが特徴です。

AMRとは

AMR(Autonomous Mobile Robot)は、センサーやマッピング技術を活用し、自律的に最適経路を判断して走行するロボットです。環境の変化に柔軟に対応でき、人や障害物を避けて動作できるため、動線が流動的な現場に適しています。

市場での併存関係

現在の市場では、「安定したルートを高効率で搬送したい」場合はAGV、「柔軟な搬送や臨機応変な経路選択が求められる」場合はAMRと使い分けるのが主流です。両者を併用することで、現場全体の搬送効率を最大化する企業も増えています。

世界市場の規模と成長トレンド(2025年時点)

市場規模と成長率

  • 2024年:AGV/AMR市場規模は約69億9000万米ドル
  • 2029年:年平均成長率(CAGR)27.5%で、235億6000万米ドルに達する見込み

この成長を支えるのは、EC市場の拡大、自動化需要の高まり、ロボット価格の低下など、複数の構造的要因です。

出典:Mordor Intelligence「Global Mobile Robots Market」

地域別動向

地域特徴
北米EC拡大により物流倉庫への導入が加速。AmazonやWalmartによる大量導入が市場をけん引。
欧州製造DXの一環として、環境対応やスマート工場化の流れでAMRの導入が進行中。
中国政策主導でロボット化が急進。補助金とインフラ投資によって導入数が爆発的に増加。
日本労働力不足を背景に導入意欲は高まるが、コストや運用体制の課題から中小企業の導入は慎重。

日本国内市場の動向と導入の現実性

市場規模と成長予測(国内)

  • 2020年度:AGV出荷台数 7,055台、出荷金額 161億5,000万円
  • 2025年度:出荷台数 9,950台、出荷金額 274億9,000万円と予測

中小企業でも導入が現実味を帯びてきており、実証実験からスタートして段階的に拡張するアプローチが広がっています。

出典:ロボットダイジェスト「2022年 自動搬送ロボットの市場予測」

導入が進んでいる業種

業種導入目的
物流倉庫ピッキング補助、自動搬送による人件費削減。人的作業と協調する搬送が主流。
製造業(自動車、電子部品)工程間搬送、部品供給の自動化。ラインの停止リスクを減らす運用が求められる。
食品・医薬品工場清潔環境下での人との接触回避、衛生レベルの維持。AMRの非接触搬送が好まれる。

AGV/AMR導入の主な背景と課題

導入が進む背景

  • 慢性的な人手不足:特に夜間・単純作業を自動化したいニーズが強い
  • 安全性の強化:走行ルートの管理により接触事故を防げる
  • 多品種少量化への対応:ロット単位での柔軟な搬送が求められる

企業が抱える課題

  • 初期投資が高額:1台数百万円〜、現場全体では数千万円規模になることも
  • 社内インフラの整備:レイアウト変更やWi-Fi環境、管理ソフトとの連携が必要
  • 運用リテラシーの差:現場での障害対応や簡易トラブル時の判断力が問われる

2025年に注目される技術・導入トレンド

技術トレンド

  • SLAM(自己位置推定)技術の進化により、AMRの走行精度と効率が向上
  • クラウド型運行管理システムにより、複数台の一括制御や稼働ログ管理が容易に
  • ロボット同士や他機器(フォークリフト・ゲートなど)との連携による自動搬送の拡張

運用モデルの変化

  • リース・サブスクリプション導入により初期投資を抑えてスモールスタートが可能に
  • 一部工程のみ自動化し、他は人力で対応する「段階導入」が一般化
  • SIerやインテグレーターが設計〜導入〜保守まで一括支援するサービスモデルが定着

今後の市場成長を支える要因

政策・制度面

  • 補助金活用で初期投資負担を軽減。特に「スマート物流導入促進事業」などが人気
  • 設備投資減税制度や中小企業経営強化税制などとの併用も可能

社会的背景

  • 物流2024年問題により「無人化・省人化」が業界共通の課題に
  • 高齢労働者の退職加速による技能継承難・省力化への対応
  • SDGs・ESG経営の視点から「人に優しい現場づくり」が求められる

導入を検討する企業へのアドバイス

AGVとAMR、どちらを選ぶべきか?

以下は、AGVとAMRの主な違いをまとめた比較表です。自社の搬送ニーズに応じた判断材料としてご活用ください。

比較項目AGV(無人搬送車)AMR(自律走行ロボット)
搬送経路固定ルート自律経路選択(動的)
導入コスト比較的安価やや高め
柔軟性低い(レイアウト変更に弱い)高い(障害物回避・環境適応)
安全性センサー付きで基本安全高度な障害物検知と判断
運用難易度シンプルで教育しやすい高度な設定・管理が必要
適した現場定型業務、工程が安定した製造現場多品種少量、柔軟性が求められる物流・製造

導入時のチェックポイント

  • 搬送物のサイズ・重量・頻度に見合った搬送能力か
  • 経路・レイアウトに適したナビゲーション方式か
  • 社内の「IT対応力」「運用教育体制」が整っているか

まとめ

AGVとAMRは、単なる搬送機器ではなく、企業の生産性・安全性・持続可能性を高める“戦略的な設備”として位置づけられています。

2025年現在、価格・技術・制度の三拍子が揃い、多くの企業にとって導入の現実性が高まっている今こそ、戦略的な検討を始めるタイミングです。自社に合った方式・規模・導入モデルを見極め、段階的な導入計画を立てていくことが成功のカギとなります。