自律移動ロボット(AMR)の導入が当たり前になりつつある今、選定ミスが現場の生産性や安全性に直結する時代が到来しています。数ある選択肢の中でも、「価格」「性能」「柔軟性」のバランスに優れた存在として注目を集めているのが、Hikrobot製AMRです。
とはいえ、海外製だから安い、スペックが高いから安心――という単純な判断では、現場に本当に適した一台は選べません。今求められるのは、製品の“実力”と“現場適性”を多面的に見極める視点です。
本記事では、HikrobotのAMRが持つ特徴を「価格」「性能」「導入事例」の3つの観点から深掘りし、現場で後悔しないための選定ポイントを明らかにします。導入前の迷いを整理し、最適な一歩を踏み出すための情報を、ここで手にしてください。
Hikrobotとは?多機能AMRと最新物流技術で注目の中国発メーカー
Hikrobot(ハイクロボット)は、中国・浙江省杭州市に本社を構えるスマートロボティクス企業であり、映像機器最大手Hikvision(海康威視)のグループ会社として2016年に設立されました。主力製品は、AMR(自律移動ロボット)、産業用カメラ、画像処理プラットフォームなどで、製造・物流領域を中心に急速にシェアを拡大しています。
Hikrobotの最大の特徴は、グループ企業の映像処理技術と統合したセンシング精度の高さと、自社で1,450種類以上のAMRモデルを展開するという、類例のない製品開発スピードです。中国国内では主要な物流倉庫・自動車工場・半導体製造拠点に幅広く導入されており、2023年時点でのAMR出荷台数は年間10万台以上に達しています。
この実績をもとに、現在では欧州、ASEAN、日本を含む海外市場への本格展開が進行しており、日本では複数の代理店を通じて製品供給・技術支援・保守対応が行われています。近年は中小規模の製造業・倉庫業でも導入例が増加しています。

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運営事務局
Hikrobotは、いわゆる「低価格な海外製品」という枠を超え、高度な技術力とモデル多様性を武器に、グローバルAMR市場での標準的存在になりつつある企業です。
特に、API連携によるWMS統合や、無線充電・多台数協調搬送といった機能を実装したモデルも展開しており、現場ニーズに応じた導入が可能となっています。
国内においても、技術サポートの品質や保守体制の信頼性は年々向上しており、「海外製=不安」という先入観を払拭しつつあります。導入検討の際は、モデル選定や使用環境への適合だけでなく、代理店の技術対応力やコミュニケーションの質もあわせて確認することが重要です。
HikrobotのAMR製品ラインの全体像
Hikrobotは、多様なニーズに対応するために、以下のような代表的なAMRシリーズを展開しています。
- 小型台車型:軽量搬送や人追従用途に適したモデル。倉庫内のピッキング作業支援に特化。
- 棚搬送型:可搬棚を載せて目的地へ搬送。物流拠点での仕分けや出荷前搬送に最適。
- 牽引型:複数台車を連結しながらけん引。長距離・大量搬送に強みを発揮。
これらはすべてSLAMやQRコードを活用した高精度ナビゲーションに対応し、現場の変化に柔軟に適応できる設計となっています。
なぜ選ばれる?Hikrobot製AMRが現場で支持される3つの理由
Hikrobot製AMRの主な特徴を現場目線で読み解く
HikrobotのAMR(自律移動ロボット)は、世界140,000台以上の導入実績を背景に、現場ごとに異なるニーズに柔軟に対応できる設計思想と技術力を備えています。特に“多品種・中量生産”が求められる日本の現場においても、選定しやすく、導入しやすいAMRとして注目されています。
特長1:柔軟なラインナップで多様な現場に対応
Hikrobotは「LMR」「CMR」「FMR」「QMR」など、搬送物・走行空間・用途に応じて複数のモデルを展開。小型・低床モデルは通路幅が限られる現場や棚下走行に対応し、牽引型は重量部材・長尺物の搬送にも適しています。
搬送用途 | 適合モデル例 |
---|---|
部品供給 | LMR(潜り込み型) |
完成品搬送 | CMR(棚搭載型) |
パレット搬送 | FMR(牽引型) |
狭小エリア対応 | QMR(四輪旋回・小回り対応) |
現場構成や将来的な拡張にあわせて、必要な機種を組み合わせて運用できる拡張性も魅力の一つです。
特長2:価格と性能のバランスが高水準
中国・杭州本社の量産体制を活かし、導入価格を抑えつつ、走行安定性・SLAMベースの自律走行・高度なセンサ統合といった機能面は国産製品と遜色ないレベルを実現。とくに複数台運用(フリート制御)における動的経路調整や優先順位制御は、実運用での効率化に寄与します。
さらに「まずはPoCから導入したい」といったニーズにも応えられるコスト設計となっており、初期導入リスクを抑えた段階的導入にも適しています。
特長3:FMSとの連携やソフトウェアの柔軟性
HikrobotのFMS(Fleet Management System)は、マルチ台の自動制御、経路最適化、ジョブ割振、リアルタイムトラッキングが可能。さらに、WMS(倉庫管理)、MES(生産管理)、PLC(制御機器)など上位システムとのAPI連携が容易な構造となっており、将来的な設備拡張や運用変更にも柔軟に対応できます。
導入後も、ローカルネットワーク経由でのマップ変更やジョブ登録が可能なため、現場主導での設定変更がしやすい点も、中小事業者にとっては大きなメリットです。
導入コストはどれくらい?Hikrobot製AMRの価格帯と費用構成
本体価格の参考レンジ(モデル別)
Hikrobot製AMRは、機種や積載能力、構成オプション(バッテリー容量、センサー構成、ナビゲーション方式など)により価格が大きく異なります。日本国内では正規代理店での取り扱いが主であり、公式には価格を公開しておらず「個別見積もり」が原則です。
参考までに、海外公式製品の市場価格や代理店取材情報をもとにした目安レンジは以下のとおりです。
- 小型モデル(60〜100kg積載):約300万円前後
- 中型モデル(300〜600kg積載):約450万〜600万円
- 大型・牽引型モデル(600kg超):600万円〜1,000万円以上
これらはすべて導入時の「本体価格(税別・保守別)」の目安であり、ナビゲーションマップ作成、導入支援、保守契約などの費用が別途発生します。
導入にかかるその他の費用構成
Hikrobot製AMRの導入にあたっては、単なるロボット購入ではなく、現場への適合調査やシステム連携、保守運用まで含めた「総合導入」が必要です。以下に一般的な費用構成を図で示します。
Hikrobot AMR 導入費用構成(参考値)
費用項目 | 内容(参考) |
---|---|
本体価格 | 300万〜1,000万円(モデル・構成で変動) |
システム構築費 | 30万〜100万円(マップ生成、設定など) |
設置・試運転費 | 20万〜50万円(現地設置、導入支援) |
保守契約費 | 年額30万〜100万円(24h対応・交換部品含) |
実用的な導入検討のポイント
Hikrobotは中国本社の海外メーカーながら、国内代理店による技術支援体制も確立されつつあります。そのため、「単価が安いから海外製」ではなく、日本国内での保守・サポート体制とあわせて導入可否を判断することが重要です。
また、搬送距離が短く、工程が明確なケースほどROI(投資回収率)が高まるため、AMR単体の価格比較ではなく、「工数削減」「稼働安定性」「人員削減効果」などを含めた総合評価を行うべきです。
現場が証明する実力|Hikrobot製AMRの導入事例とその効果
Hikrobot製AMRは、物流・製造業・海外生産拠点など、運用環境や課題の異なる現場において、着実な成果を上げています。特筆すべきは、単なる搬送自動化にとどまらず、作業効率・安全性・省人化といった多面的な効果を実現している点です。ここでは3つの実例を通じて、実運用での成果を具体的に確認します。
事例1:物流倉庫(小型棚搬送型)
大手物流企業の拠点では、Hikrobotの小型棚搬送型AMR(CMRシリーズ)を複数台導入し、ピッキング支援と仕分けエリア間の移動作業を自動化。導入前は作業者が商品棚間を移動していたが、AMRにより棚ごと作業者の元へ移動するスタイルへ転換。結果、作業者1人あたりの処理件数は約30%向上。ピッキングミスの減少や、労働負荷軽減にもつながっています。
事例2:製造工場(牽引型)
国内の電子部品工場では、部品供給用の台車搬送をFMR(牽引型AMR)に置き換え。工程間にまたがる移動を、従来の人力搬送からAMRが代行することで、人の移動時間が大幅に削減。作業者が自工程に専念できる環境を実現し、稼働率と安全性の向上に直結しました。
事例3:海外拠点(屋内外併用型)
東南アジアの自動車部品工場では、複数の建屋間で部品を搬送する必要があり、従来は屋外走行が可能なフォークリフトが使われていました。ここに全天候対応型のAMR(Q7シリーズ)を導入し、屋内外の連続搬送に対応。人員を大幅に削減しつつ、台車の削減・燃料費削減・CO₂排出削減など、環境・コスト両面の最適化を実現しています。
Hikrobot AMR 導入事例まとめ
業種 | 使用モデル | 導入目的 | 効果 |
---|---|---|---|
物流倉庫 | 小型棚搬送型(CMR) | ピッキング支援 | 作業時間30%削減、移動負荷軽減 |
製造業 | 牽引型AMR(FMR) | 工程間搬送 | 工数15%削減、安全性・稼働率向上 |
海外拠点 | 屋内外併用型(Q7) | 建屋間搬送 | 台車削減・省人化・搬送コスト最適化 |
Hikrobotは、機種の柔軟性と拡張性により、現場ごとの課題に的確に応えることができるAMRベンダーです。導入目的を明確にしたうえで、初期段階から成果指標を設けることで、短期間で効果を体感しやすいのも大きな利点です。国内・海外を問わず、確かな実績に裏打ちされた導入価値を持つAMRとして、引き続き注目されています。
失敗しないAMR選び|Hikrobotを導入する前に知るべき判断基準とは?
選定時に確認すべき4つの観点
AMRの導入は単なる機械購入ではなく、現場環境との適合性、システム統合性、維持管理まで含めたトータルの最適化が鍵となります。特に以下の4つの観点を初期段階で明確にしておくことで、後の追加コストや運用トラブルを回避できます。
- 使用エリア:屋内専用か、屋外対応も必要か
Hikrobot製AMRは基本的に屋内使用を前提としており、屋外走行には非対応のモデルが大半です。段差・傾斜・屋外床材などに対する耐性は限定的です。 - 搬送物と重量:搬送対象が軽量物か、パレットなどの重量物か
モデルにより最大積載荷重は異なり、60kg対応の小型機から1,000kg以上の牽引モデルまで幅広いラインナップがあります。導入前には「将来的な荷重変動」も考慮する必要があります。 - 連携システム:既存WMSや設備との接続要件があるか
Hikrobotは独自SDKやAPI連携をサポートしていますが、国内では代理店がシステム統合を担うため、カスタマイズ要件やWMS仕様とのマッチング確認が重要です。 - メンテナンス体制:導入後の対応体制と保守費用の確認
保守体制は代理店経由で提供されるため、対応スピード・部品供給体制・サポート範囲にばらつきがあります。国内メーカーに比べて「即時対応性」に課題があるケースもあります。
他社製AMR(オムロンなど)の導入事例や注意点について知りたい方は、こちらの記事も参考になります。
プロが見る比較ポイント|Hikrobot製AMRを他社製品とどう見極めるか
以下の表は、Hikrobot・中小国内メーカー・大手国内メーカーそれぞれの特徴を整理したもので、導入検討時の判断材料として活用いただけます。各評価項目の違いを把握することで、自社ニーズに最も適したAMRの選定につながります。
評価観点 | Hikrobot | 中小国内メーカー | 大手国内メーカー |
---|---|---|---|
本体価格 | ◎(量産×低価格) | 〇(やや高) | △(高コスト) |
モデル展開 | ◎(1,450機種以上) | 〇(用途特化) | ◎(豊富ライン) |
保守体制 | △~〇(代理店頼み) | ◎(即対応可能) | ◎(全国・24h対応) |
カスタマイズ性 | 〇(機能高いが実装依存) | ◎(現場重視調整) | △(標準仕様中心) |
国内導入実績 | 〇(国際展開は強い) | 〇(中小現場多数) | ◎(全国数百拠点) |
評価観点ごとの再評価と実用的示唆
本体価格
Hikrobotは中国本社による大量生産体制を背景に、価格競争力が非常に高い点が特徴です。海外展開を前提とした製造・流通体制により、同スペックの国内製品よりも安価に導入できるケースが多く、「◎」評価としています。
中小国内メーカーは少量生産であるため、やや割高にはなるものの、安定した価格帯で提供されています。一方、大手国内メーカーは高品質・高信頼性を保ちながらも、人件費や設計コストが価格に反映されやすく、相対的に高価格となる傾向があり「△」評価です。
モデル展開
Hikrobotは1,450種類を超える多彩なモデルを展開し、軽量小型から重量牽引型まで幅広いラインナップを有しています。この点で、業種・搬送対象を問わず対応可能な柔軟性が評価され、「◎」となります。
中小国内メーカーは用途特化型の製品が中心で、モデル数は限られるものの、特定ニーズに対する対応力は十分にあります。大手国内メーカーは複数分野への対応力と開発余力があり、同じく「◎」の評価です。
保守体制
Hikrobotの保守は基本的に日本国内の代理店経由で提供されます。導入拠点の拡大に伴い改善傾向にはあるものの、部品供給やトラブル対応の即時性には課題があり「△~〇」評価です。
中小国内メーカーは開発元と技術者が近く、現場訪問や柔軟な修正対応が可能で、評価は「◎」。大手国内メーカーも全国に拠点を持ち、24時間対応や広域保守体制を整備しており、同様に「◎」評価です。
カスタマイズ性
Hikrobotは高度なSDKや無線充電などの技術オプションを備えており、技術的ポテンシャルは高いと評価できますが、実装は代理店主導となるため、柔軟性には一定の制約があります。これにより「〇」評価となります。
中小国内メーカーは現場ごとに最適化した個別開発や仕様変更に柔軟に応じることができる体制があり、「◎」評価です。大手国内メーカーは標準パッケージ提供を前提とした製品展開が多く、細部の仕様変更が難しい場合があるため、「△」評価としています。
国内導入実績
Hikrobotはグローバルでは大規模な導入実績を持ちますが、日本国内での導入数は増加傾向にあるものの、まだ発展段階にあります。このため、国内に限った実績では「〇」評価となります。
中小国内メーカーは中小企業や工場での着実な導入が進んでおり、特定業界での安定的な実績があります。大手国内メーカーは大規模倉庫や製造業への多数の納入事例があり、「◎」の評価となります。
比較検討を進める際は、こちらの記事もぜひ参考にしてください。
まとめ|AMR選定の最前線:Hikrobotが切り拓く自動搬送の可能性
Hikrobot製AMRは、コストパフォーマンスや技術力、多様な導入実績を武器に、ますます注目度を高めています。無線充電対応などの先進機能を含め、価格と性能を両立できる選択肢として魅力的であることは間違いありません。
しかしながら、AMRの導入は単なる製品選定ではなく、自社の運用環境・人材・工程といかにマッチするかを見極める「現場最適化」のプロセスです。その成否は、機能一覧や価格表ではなく、実際の運用・サポート体制・カスタマイズ可否といった“現場での再現性”をどこまで具体的にイメージできるかにかかっています。
もし今、Hikrobot製AMRに少しでも可能性を感じたなら、ぜひ一度、実際の製品資料や活用事例を手に取り、数字では伝わらない“現場感”を確認してみてください。
そこに、御社の課題を解決するヒントがきっと見つかるはずです。
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