「人手不足」「生産性向上」「現場の自動化」——。
これらは今や、物流業界や製造業が避けて通れないキーワードです。その解決策として急速に注目を集めているのが、「AMR(自律走行搬送ロボット)」です。

フォークリフトの代替として、あるいは人と協働しながら作業を行う“現場のスマートパートナー”として、AMRの導入はすでに多くの現場で始まっています。しかし、いざ選定に入ると「種類が多すぎて比較できない」「何を基準に選べばよいかわからない」といった声が後を絶ちません。

本記事では、2025年時点で注目すべき国内外のAMRメーカー20社以上を厳選し、それぞれの製品の特徴や導入事例を一覧で分かりやすく整理しました。また、「どのメーカーが自社に合うのか」を判断するための視点や、現場ごとの選定ポイントも徹底解説します。

“カタログを集める前に読むべき1本”として、導入検討の第一歩にぜひお役立てください。

AMRとは?AGVとの違いも簡潔に理解する

AMRとは何か?

AMR(Autonomous Mobile Robot)とは、センサーやカメラ、AIを活用して周囲の環境を認識・判断しながら、目的地まで自律的に移動するロボットです。地図を自ら作成し、障害物を回避しながら柔軟に走行できる点が最大の特徴です。人との協働も可能で、より複雑な現場や変化に富んだ作業にも対応できます。

AGVとの違い

AGV(無人搬送車)は、あらかじめ設置された磁気テープやQRコードなどのガイドに沿って走行する方式です。これに対しAMRは、環境をリアルタイムで認識しながらガイドなしで走行可能であり、運用の柔軟性が高く、レイアウト変更にも対応しやすいという利点があります。

国内のAMRメーカー比較

日本国内には、グローバルに展開する大企業から、ニッチな技術で注目される中小企業まで、AMRを開発・提供しているメーカーが多数存在します。以下では、代表的な国内AMRメーカーを一括で比較できるように一覧表として整理しました。

国内のAMRメーカー比較一覧表

メーカー名製品名特徴導入事例
トヨタL&FSLAM KEY CARTSLAM技術で自律走行、連結ユニット豊富倉庫のレイアウト最適化に貢献
パナソニックHOSPI病院内搬送に特化、安全設計医療機関で導入実績あり
三菱電機OTTO MotorsシリーズLiDAR SLAM方式の高可搬モデル製造・物流に導入実績あり
ダイフクFAV全方向移動、レーザーガイド式工場内の搬送最適化に貢献
Industry Alpha株式会社Kaghelo超薄型・高可搬・FMS連携可製造業、物流現場に導入済み
株式会社セキュリティデザイン潜り込み式自動搬送ロボットリフトアップ式、障害物回避あり倉庫・工場で稼働実績あり
丹波貿易株式会社カスタムAGV/AMR長尺・斜度・屋外対応のカスタム型物流・冷凍施設などに対応
浜田製作株式会社HIKROBOT社製AGV多業界向けAGVを提供食品・医療・自動車業界などに導入
株式会社モノリクスBegin⁺JIG搬送ロボとアイテム連結冶具倉庫・製造業で導入事例あり
Gaussy株式会社Mushiny最大1.5t搬送、-20℃対応製造業・物流倉庫に採用事例あり
住友重機械工業株式会社smartris高精度ドライブパッケージ各種工場で実装実績あり
株式会社東京機械製作所V2000悪路対応・屋外利用可屋外搬送に活用事例あり
Chinoh.Ai株式会社潜入型AGVパレット潜入型、最大1.5t積載製造現場で導入実績あり
矢崎化工株式会社AGV磁気誘導式、レイアウト変更対応可生産ラインで採用実績あり
株式会社リンクスiRAYPLE AMRToF+LiDAR、高速バッテリー交換製造業で導入増加中
株式会社匠TiTra SSLAM式リフト型、協働設計製造・物流に導入多数
株式会社ヘッズHR-Sシリーズ自律走行・障害物回避可能工場・倉庫にて活用中
株式会社タナカエンジニアリングD-PORTERハンドリフト型AMR製造現場にて稼働実績あり
株式会社豊電子工業HIKROBOT工場内構内搬送ロボット大手製造工場に導入済み
四恩システム株式会社PULL牽引型AGV、最大1000kg対応自動車部品の搬送などに利用

海外の注目AMRメーカー

グローバルに展開するAMRメーカーは、先進技術や大規模物流への適応力を武器に、日本国内でも採用が進んでいます。代表的な企業は以下の通りです。

MiR(Mobile Industrial Robots)

  • デンマーク発のグローバルブランド
  • 安定したSLAMナビゲーション
  • 高い安全性と柔軟な拡張性

Geek+

  • 中国発、ピッキングAMRに強み
  • AIで全体最適化制御
  • 日本国内でも大手倉庫導入実績あり

Locus Robotics

  • 米国発、作業者追従型ロボットで有名
  • 拡張性とフリート制御に優れる
  • 大規模3PLでの導入が進む

メーカー選定のポイント【現場別に整理】

AMRは単なるロボット製品ではなく、業務フローそのものを変える“現場変革ツール”です。目的や現場環境に応じて適切なメーカー・機種を選ぶことが重要です。

以下では、代表的な導入シーンに応じておすすめのメーカーを紹介します。

小規模倉庫・初期導入に向いているメーカー

初期導入においては、「簡単に使えること」「設置が不要なこと」「低価格で始められること」が大切です。PoC(概念実証)をしやすいメーカーを選べば、試験導入から本格稼働までスムーズに進められます。

  • Doog:人や台車を追従するタイプで、設置工事が不要。スモールスタートに最適。
  • Preferred Robotics:スマホアプリで操作できる低価格モデル「kachaka Pro」が特徴。オフィスや店舗の小規模搬送にも対応。

屋外や特殊環境に強いメーカー

屋外や建設現場、あるいは粉塵・振動・水濡れがある環境では、筐体の耐久性や走行安定性が求められます。環境対応型のAMRを選ぶことで、長期安定稼働が可能になります。

  • テムザック:トンネル、下水道、インフラ点検分野で活躍。多脚型や水濡れ対応型も展開。
  • :重荷重・傾斜対応・屋外走行など、多様なカスタマイズが可能。中小製造業の導入実績多数。

ソフトウェア連携・拡張性が高いメーカー

既存の倉庫管理システム(WMS)や生産管理システム(MES)と連携できるかは、大規模運用を見据える上での大きな鍵です。複数台の群制御やダッシュボードでの一元管理など、運用のスマート化が可能なメーカーを選びましょう。

  • MUJIN:協働ロボットやマテハン設備と連携した複合制御を得意とし、ソフトウェアレベルでの拡張性が非常に高い。
  • アイオイ・システム:独自UIとWMS連携のしやすさで、多数の倉庫業務に対応。物流DXの起点となる機能が充実。

導入のステップ全体を把握したい方は、AMR導入の手順を完全解説|検討・設計から現場稼働までのステップガイド をご覧ください。

まとめ

AMRの選定においては、スペックだけでなく「誰が、どの現場で、どのように使うのか」を明確にすることが欠かせません。今回紹介した国内外のAMRメーカーは、それぞれに強みがあり、導入企業のニーズによって選択すべき機種が変わります。

特に中小企業にとっては、PoC対応やアフターサポートの手厚さも重視されるポイントです。自社の課題や業務フローに合った一台を見つけるためにも、比較表を参考に、ぜひ最適な選定を進めてください。