省人化や人手不足が慢性化する製造・物流業界では、無人搬送車(AGV)の導入が生産性と安全性の向上に直結する手段として広がっています。
とりわけ、重量物の搬送に関わる負荷は作業者にとって大きく、1回あたりの移動距離や物量が多い現場では、肉体的な負担のみならず、業務全体のボトルネックにもなり得ます。
四恩システム株式会社が開発を進める牽引型AGV「PULL(プル)」は、そうした現場の課題に対応すべく、最大1トンの牽引力と多様な誘導・充電オプションを備えた、高機能・高柔軟性のモデルです。
本記事では、「PULL」の仕様と機能を詳細に解説し、自動搬送ソリューション導入の検討に役立つ事実情報を整理していきます。
PULLの基本仕様:最大1トンを牽引可能な牽引型AGV
最大1トンの牽引に対応した堅牢な構造設計
AGVによる重量物搬送では、走行中の安定性や制動性能、被牽引物との連携性が問われます。「PULL」は、全長1330mm・全幅830mm・全高880mmというコンパクトな車体サイズでありながら、最大1,000kgの荷物を牽引できる設計がなされています。これは、一般的なパレット(1,100×1,100mm)に積載された完成品や素材を1回で搬送できる能力に相当します。
機体は前進専用で設計されており、牽引時のトラブル回避や操舵制御の安定性向上に寄与します。特に狭い通路やカーブの多いレイアウトでも、ルート設計を単純化することで、搬送の確実性と安全性が向上するのがメリットです。
運用時間と速度のバランス設計
搬送の頻度や距離によって必要な連続稼働時間と速度要件は異なります。「PULL」は満充電で約6時間の稼働が可能です。これは、平均的な現場の午前〜午後シフトにおける断続的搬送をカバーするのに十分な時間であり、夜間充電運用とも相性が良い設計です。
速度設定についても、最低0.36km/h、最高3.60km/hまで調整可能となっており、作業者が歩行する速度(平均3〜4km/h)とほぼ一致しています。これにより、人との協調走行や作業者の横を走るような構成にも適しており、混在運用における安全性を担保します。
PULLの誘導方式と移載機構:多様な運用スタイルに対応
多様な誘導方式に対応した柔軟性
「PULL」の最大の特徴の一つが、多彩な誘導方式への対応です。具体的には以下の5方式に対応しています。
- 磁気テープ誘導:床面に敷設した磁気テープをセンサーで読み取り、経路に沿って走行する。初期導入コストが低く、ルート変更はテープの貼替えで対応。
- 磁気スポット誘導:ポイントごとの磁気タグを読み取り、経路認識や分岐制御が可能。中規模現場に向く。
- V SLAM(Visual SLAM):カメラを使って周囲環境を認識し、自律走行。倉庫レイアウトの柔軟性を維持できる。
- L SLAM(Laser SLAM):レーザーセンサーで壁や棚などの輪郭を認識。精度の高い自律走行が可能。
- F SLAM(Fusion SLAM):カメラとレーザーを併用し、安定性と精度を両立。複雑な現場レイアウトにも強い。
これらの方式の選択により、既設施設への適応から、新築工場・物流センターまで、様々なシナリオでの運用が見込めます。
運用に応じた移載オプション
AGVとトレーラー、台車などとの切り離しは、運用の自動化レベルを左右します。「PULL」は基本構成で手動切り離しに対応しており、台車のカプラーに手動で接続・解除するスタイルがとられます。これは、設備導入コストを抑えたい中小規模の現場や、作業者が常駐するラインに適しています。
一方、オプションで自動切り離し機構を搭載することで、特定エリアでの自動脱着が可能となり、完全無人搬送が実現します。これにより、搬送区間の始点・終点を人手不要とすることが可能となり、工程自動化の核としての役割を果たします。
PULLの充電方式とバッテリー仕様:現場に合ったエネルギー管理を実現
充電方式は3タイプに対応
充電スタイルも現場の運用形態により選定が分かれます。「PULL」では以下の3方式に対応しています。
- 手動充電:人の手で充電ケーブルを接続する方式。初期導入が容易で、日中に稼働、夜間に充電という単純運用に適します。
- 自動接触式充電:決められた位置でAGVが自動的に接触端子にドッキングして充電する方式。中間充電を挟むことで連続稼働時間を拡張可能。
- 自動非接触式充電:誘導充電により、物理的接点なしで電力を供給。水や粉塵に敏感な環境での運用に適しています。
このように、充電の自動化が進むほど、管理工数の削減や運用の連続性が高まり、より高密度な自動化ラインの設計が可能となります。
選べるバッテリータイプで柔軟な選定が可能
「PULL」は電源として、鉛密閉型バッテリーとリチウムバッテリーのいずれかを選択できます。鉛密閉型はコストパフォーマンスと信頼性が高く、環境耐性にも優れています。一方、リチウムバッテリーは繰り返し充電回数が多く、自己放電が少ないため、稼働率の高い環境において優位性があります。
選定は、搬送回数や運用時間帯、年間通しての稼働頻度を踏まえ、トータルコストやメンテナンス性を考慮して行うのが望ましいといえます。
PULL導入時の留意点:開発中モデルゆえの確認事項
「PULL」は現在、開発中の製品であるため、仕様の一部が今後変更となる可能性があります。導入を検討する企業は、最新のスペックやオプション対応状況について、四恩システム株式会社への確認が必須です。
また、試作機のデモ運用やレンタル対応の可否についても直接問い合わせることで、自社のレイアウトや工程との適合性をより具体的に評価できます。実地でのテスト走行によって、安全性や導入効果のシミュレーションが可能になるため、慎重かつ計画的な検討が重要です。
PULLまとめ:次世代牽引型AGVとして注目の一台
四恩システム株式会社の「PULL」は、最大1トンの搬送能力と高い運用柔軟性を兼ね備えた牽引型AGVとして、省人化・省力化を加速させたい現場にとって非常に魅力的なソリューションです。
磁気誘導から最新のSLAM方式まで対応し、バッテリーや充電スタイルも選択可能であるため、現場特性に最適化した導入が可能です。現在は開発中の段階ですが、今後の展開と製品化が待たれる注目モデルです。
本フォームでは、用途や現場環境に応じて最適なモデルをご案内しております。
ご希望が明確な場合は該当製品を、まだ決まっていない場合でも仕様や条件に合った候補を複数ご紹介可能です。
いただいた情報をもとに、必要に応じてメーカーから直接ご連絡させていただく場合がございます。(1~3社程度)
比較検討の判断材料として、まずはお気軽にご相談ください。
※通常1〜3営業日以内にご返信いたします。
※フォーム送信後、自動返信メールが届きます。
個人情報の取り扱いについて
ご入力いただいた情報は、資料送付および今後の製品・サービスに関するご案内のために使用させていただきます。
プライバシーポリシーについてはこちらをご確認ください。