AGV(無人搬送車)を導入する際、数多くの製品の中からどれを選ぶべきか迷う現場担当者は多くいます。搬送経路の長さや荷物の重さ、運用時間など、現場によって条件が異なるため、汎用的な選び方では最適な機種を見つけにくいのが現実です。
そこで本記事では、AGV選定の重要な3つの比較指標「速度」「搬送能力」「稼働時間」に焦点をあて、それぞれの現場に最適なAGVを選ぶための視点を徹底解説します。初めて導入を検討する企業にも、すでに試験導入済みの現場にも役立つ内容を目指しています。
なぜこの3つの指標が重要なのか?
AGV選定における3つの基本指標
AGVの基本性能を比較する際、多くのカタログで最も目につくのが「速度」「搬送能力」「稼働時間」の3要素です。これは、運用効率、対応荷物、そして稼働の安定性に直結するためです。
比較軸 | 意味 | 主なチェックポイント |
---|---|---|
速度 | AGVが移動する最大スピード | 最大速度(m/s)、加減速の滑らかさ |
搬送能力 | 1回で運べる荷物の重量やサイズ | 最大積載重量、対応荷姿(パレットなど) |
稼働時間 | 連続稼働できる時間 | バッテリー容量、充電方式・時間 |
たとえば、搬送距離が長い工場では速度が、重量物を扱う物流倉庫では搬送能力が、24時間稼働の生産ラインでは稼働時間が特に重要になります。逆に、これらの要素が合っていないAGVを導入すると、搬送の遅れや頻繁な充電、人手との混在などで効率が落ちてしまいます。
速度重視の選定ポイント
速度が重視される現場とは
AGVの速度は、単に速ければ良いというわけではありません。搬送対象や現場構造、安全確保とのバランスも重要です。
- 部品供給ラインなど、タクトタイムが厳しい工程では高速性が求められる
- ピッキング作業が多い倉庫では、往復回数が多くなるため移動速度が作業効率に直結する
- 無駄な待機時間が生まれやすい工程では、速度向上が全体最適に貢献する
判断基準と目安値
現場タイプ | 推奨速度(m/s) | 備考 |
---|---|---|
製造ライン(短距離) | 0.8以上 | 加減速性能とのバランスが重要 |
倉庫内搬送(中距離) | 1.0以上 | 直線区間が多い場合に有効 |
長距離搬送 | 1.2以上 | 安全装備との連動確認が必要 |
導入時の注意点
速度が速くなると、停止距離も長くなり、搬送物が揺れたり、停止精度が下がることがあります。また、安全エリアや人との協働エリアでは、法令・ガイドラインで速度制限が設定されていることもあるため、AGV自体が減速制御に対応している必要があります。
搬送能力で選ぶ際のポイント
搬送物の重量・サイズを正しく把握する
AGV選定において見落としがちなのが、実際に運びたい荷物のサイズ・重量と、日々の変動要素です。例えば、定常的に500kgの荷物を運ぶ現場では、600〜700kgの余裕を持った搬送能力を選ぶことで、安全性と耐久性を確保できます。
タイプ別の対応荷姿と搬送力
AGVタイプ | 最大積載量 | 対応荷姿 | 用途例 |
---|---|---|---|
搭載型 | 300kg前後 | 小型パレット・コンテナ | 部品搬送・完成品移動など |
けん引型 | 1000kg以上 | 台車、パレット | 重量物・多品種混載の搬送 |
フォーク型 | 1000kg以上 | パレット(標準/大型) | 自動倉庫やラック入出庫 |
使用する荷物の「重さ」だけでなく、「長さ」「高さ」「安定性」も選定基準に含めることで、導入後のトラブルを回避できます。
稼働時間を軸に考える場合
稼働時間と充電方式の関係
AGVの稼働時間は、業務の継続性を左右する重要な要素です。しかしカタログに書かれた稼働時間は理論値であり、荷物の重量や床面状態、加減速の頻度によって実働時間は2〜3割減少することもあります。
そのため、次のような運用に合わせた充電戦略を検討すべきです。
稼働時間別の選定目安
稼働パターン | 目安稼働時間 | 推奨AGV仕様 |
---|---|---|
日勤(1交代制) | 5〜6時間 | 手動充電 or 自動充電ドック型 |
2交代制運用 | 8〜10時間 | 大容量バッテリー搭載型 |
24時間運用 | 連続稼働+自動充電 | 自動充電+充電ポイント複数設置型 |
特に24時間運用を目指す場合は、稼働と充電を交互に回す設計(ゾーニングやタイミング制御)を前提に機種を選定する必要があります。
用途別の優先判断チャート
フローチャートで選ぶ比較軸
搬送物は重いか?
├─ はい → 搬送能力を最優先
│ └─ 稼働時間も長い? → バッテリー性能も要確認
└─ いいえ
└─ 走行距離は長い?
├─ はい → 速度・稼働時間を重視
└─ いいえ → 速度重視で回転率UP
このチャートを活用すれば、担当者が現場のニーズに応じたAGV選定の方向性を短時間で判断できます。
AGVスペック比較表(代表機種)
代表的なスペック構成を理解するために、仮想モデルを使って比較した表を掲載しています。速度・積載量・稼働時間のバランスを見たい方に最適です。
※以下は比較解説用に設計された仮想モデルです。
モデル名 | 最大速度(m/s) | 最大積載(kg) | 稼働時間(h) | 特徴 |
---|---|---|---|---|
AGVX-100 | 1.2 | 500 | 8 | バランス型・中規模向け |
AGVX-300 | 0.8 | 1000 | 10 | 重量物対応・長時間稼働 |
AGVX-050 | 0.5 | 200 | 6 | 小型・狭小現場に最適 |
現場別おすすめ組み合わせ例
以下の表では、代表的な現場タイプごとに優先すべきスペック軸と、具体的な構成例をまとめています。選定のヒントとしてご活用ください。
現場タイプ | 優先軸 | 推奨構成例 |
---|---|---|
中小製造業 | 速度 | 速度1.0m/s以上、積載300kg前後、手動充電型 |
大型物流倉庫 | 搬送能力 | 積載1000kg以上、けん引型、自動充電+2交代対応 |
食品・医薬品工場 | 稼働時間 | 稼働10時間以上、清潔対応機種+自動充電構成 |
用途ごとに優先軸が明確になることで、予算やレイアウトの設計もスムーズに進みます。
まとめ:現場に合った「優先指標」を明確にすることが選定の第一歩
AGVを選定する際には、「全部入り」を求めるのではなく、現場の課題と運用目的に応じてどの指標を優先すべきかを見極めることが最も重要です。優先順位が明確になれば、機種の絞り込みも容易になり、導入後のギャップも減らすことができます。
本記事の比較ポイントやチャートを活用し、自社にとって最適なAGVを選定しましょう。