「AGVを導入したいけど、現場が狭くて大きな機種は使えない」
「ピッキング作業の自動化を進めたいが、通路幅がネックになっている」
そんな課題を抱える製造・物流の現場において、注目されているのが“小型AGV”です。近年では、従来の大型AGVでは対応できなかった狭小空間に対応したモデルが次々と登場しており、特に中小メーカーの独自開発による製品も増えています。
本記事では、小型AGVの基本から活用が進む現場例、主要メーカー(大手+中小)の製品比較、そして導入事例までを体系的に整理し、現場の省人化・自動化を実現したい方へ向けて具体的な選定のヒントを提供します。
小型AGVとは?|特徴と活用の背景
小型AGVの定義と特徴
AGVの中でも、小型AGVは「設置スペースや走行ルートに制限がある現場向け」に開発されたモデルです。具体的には、以下のような基準で分類されることが多いです:
- 本体幅:600mm以下
- 搬送能力:最大300kg程度
- 走行方式:台車型、積載型、牽引型など
これらの機種は、狭小空間や人との共存環境でもスムーズに走行できるよう、旋回性能・安全センサー・静音性などの設計が工夫されています。
なぜ今、小型AGVなのか?
中小企業にとって、設備投資のハードルや現場スペースの制限が大きな課題となります。従来のAGVは「大きすぎて使えない」「導入費が高い」といった声もありました。
しかし近年、小型AGVは以下の理由から注目を集めています:
- 手押し台車やハンドリフトの代替として“現場の当たり前”を自動化できる
- フォークリフトでは対応できない狭い通路に対応可能
- 必要最低限の機能を備えた中小向けモデルが増加
- 導入コスト・保守コストが大幅に抑えられる
小型AGVが活躍する現場とは?
小型AGVが導入されやすい現場の特徴
以下のような現場では、小型AGVが特に効果を発揮します:
- 構内に通路幅1000mm以下の場所が多い
- 搬送対象が200kg未満の中軽量物中心
- 搬送距離は短いが、1日あたりの搬送回数が多い
- 作業員の動線と搬送ルートが交差している
人手不足のなか、1回あたりの搬送時間や手間を削減する手段として小型AGVは“最も現実的な自動化手法”とも言えます。
搬送イメージ(テキスト図解)
[部品棚] → [組立セル1] → [検査エリア] → [梱包エリア]
↑ ↓
[作業者動線] [リネン・空箱回収]
このように「人との共存が前提」であり、「一方通行ではない」現場においても、小型AGVなら柔軟に対応可能です。
小型AGVメーカー比較|大手+中小の注目モデル
下記の表では、大手~中小までの代表的な小型AGV製品を比較しています。サイズ・機能・設計思想においてそれぞれ特徴があるため、導入現場の条件に合った選定が重要です。
メーカー名 | 製品名 | 搬送能力 | 本体寸法 (L×W×H) | 特徴 |
---|---|---|---|---|
オムロン | LDシリーズ | 最大130kg | 約963×718×383mm | 高精度センサー搭載、自己位置推定対応 |
ZMP(CarriRo) | CarriRo AD | 最大150kg | 約650×930×240mm | 台車型、追従モードと自律移動モードを搭載 |
シャープ | TYPE GL-CUBE(小型) | 最大100kg | 約400×400×460mm | 2D-LiDAR-SLAMによる自律移動方式+磁気誘導方式 |
Mujin | T800 | 最大800kg | 950×680×247mm | QRコード/慣性誘導方式、リフト高さ56mm |
KKS | 低床型AGV H500M-L | 最大500kg | 1470×550×180mm | 低床で500kgのリフト機構搭載、スピンターン可能 |
株式会社エス・エス・イー | 小型無人搬送車(AGV) | 非公開/要問い合わせ | 非公開/要問い合わせ | 小型で小回りが利き、シンプルな設計でローコストを実現 |
株式会社ヘッズ | HR-Sシリーズ | 非公開/要問い合わせ | 非公開/要問い合わせ | 自律走行型AGVで、ガイド無しでの走行が可能 |
四恩システム株式会社 | 牽引型AGV『PULL』 | 最大1000kg | 非公開/要問い合わせ | トレーラーなどを後ろに牽引して運ぶAGV |
株式会社匠 | TiTra G500 | 最大500kg | 非公開/要問い合わせ | リフト型AGVで、商品ピッキングの生産性向上を実現 |
株式会社リンクス | L-AGV-600LQ-CE | 最大600kg | 非公開/要問い合わせ | AMRトータルソリューションを提供 |
小型AGVの導入事例
事例1:部品供給用の搬送を自動化(中小製造業A社)
- 課題:台車での搬送に作業者の時間を奪われていた
- 解決策:MobiGO Mini導入によりライン間搬送を自動化
- 成果:作業者の移動がゼロに。生産性20%向上、ミスも削減
事例2:倉庫のピッキング拠点間搬送(物流会社B社)
- 課題:人がピッキングした荷物の搬送待ちで出荷が遅れる
- 解決策:CarriRo AD導入により連続搬送を実現
- 成果:出荷待ちゼロ、年間200時間の作業時間削減に成功
事例3:医療施設でのリネン搬送(福祉法人C)
- 課題:夜間帯のスタッフ不足と階層間の搬送負荷
- 解決策:AST-Drive Micro導入+EV連動
- 成果:静音搬送・夜間無人化に成功。利用者満足度も向上
小型AGVを選ぶためのチェックリスト
導入時の比較検討では、次のような観点から製品を選定しましょう。
- 導入エリアの通路幅と本体サイズは合っているか?
- 旋回スペースの確認(最小回転半径はどれくらいか?)
- 搬送物の重量とサイズに対応しているか?
- 稼働時間(連続稼働・バッテリー寿命)は問題ないか?
- 通信・制御系は既存設備と干渉しないか?
- サポート体制・導入実績・納期対応など、中小メーカーならではの強みも評価
小型AGVの選定ポイントが見えてきたら、導入に向けたステップ全体も整理しておくとスムーズです。
→ AGV導入ステップ【検討〜稟議〜試験導入〜本格展開まで】
まとめ|“狭いからこそ”AGVが活きる現場へ
大型AGVでは対応できなかった構内搬送を実現できるのが、小型AGVの魅力です。特に中小メーカー製のモデルは、柔軟性・価格・納期面での強みがあり、現場の課題解決により即した選択肢となり得ます。
「自動化したいけど、うちの現場にはムリだ」と感じていた方こそ、今こそ小型AGVを活用すべきタイミングかもしれません。中小規模の製造業・物流倉庫こそ、小さな一歩から自動化を始められる現場です。