「倉庫内のピッキング作業にAMRを入れたけれど、止まる・通れない・うまく動かない──」そんな導入後のトラブルが、今まさに現場で多発しています。
スペックは十分、価格も予算内。なのに“現場で使えない”──その原因の多くは、「選定ミス」ではなく、「すれ違った現場理解」にあります。
この記事では、ピッキングAMRの導入でありがちな“落とし穴”と、その回避策を徹底解説。選定前に見ておくべき視点、失敗パターン、事前チェックリストを図解とともにまとめています。
導入を検討している方こそ、今読んでおくべき内容です。
ピッキングAMR導入で起きがちな“見落とし”とは?
スペックだけでAMR選定してしまうリスク
多くの現場で見られるのが、「最大速度」「可搬重量」「連続稼働時間」といったカタログ数値をもとに比較・選定してしまうケースです。
しかし実際のピッキング作業では、安全のために速度を制限したり、搬送物が軽量なために大出力が不要だったりと、スペックを持て余すことがしばしば起こります。
カタログ記載と実地運用のズレ
センサーの認識範囲や対応棚高さについても、記載内容は“理想条件下”での話。現場の照明環境、棚のレイアウト、通路の傾斜や凹凸といった“微妙な違い”が誤作動を引き起こす温床になります。
スペックと実運用のズレ例
判断材料 | 実運用でのズレ例 |
---|---|
最大速度 | 安全確保のため現場では1/3しか出せない |
可搬重量 | 軽量物ピッキングには無駄なスペック |
棚高さ対応範囲 | 下段棚を認識できずピッキングできない |
倉庫内作業とAMRタイプの“相性ズレ”事例集
通路幅に対する誤判断で走行不可
一見広く見える棚間通路でも、AMRが“方向転換”を必要とする場合には、実際の通行幅が足りなくなることがあります。導入してから「通れない」と気づき、ルート変更や棚移動で追加コストが発生した例も。
作業者との動線衝突によるトラブル
人とロボットが同じ動線を使うと、停止頻度の増加や誤作動の発生、ひいては作業者のストレスや安全リスクにもつながります。
棚の高さ・位置によるセンサー誤動作
センサーの視野角や死角はAMRごとに異なります。特に下段や端棚など、センサーが届きにくい位置にある商品はピックミスの原因に。
【典型的な相性ズレパターン】
【通路幅の失敗】
棚間距離:800mm/AMR必要幅:850mm
→ 通過不可でルート再設計が必要に
【動線衝突の例】
作業者 →← AMR
→ 交差点で停止・接触リスク増加
失敗を引き起こす3つのAMR導入パターン
現場検証を省略したまま選定
カタログと図面上の条件だけで「これで大丈夫」と判断。現場の段差や照度のばらつきが検証されずに見逃されるケースが多く、導入後にトラブルが頻発。
導線設計を再構築せずに導入
現場の既存の動線を前提にしたままAMRを追加した結果、人とロボットが交錯する場面が生まれ、稼働中に停止が頻発。
作業者教育を軽視して稼働開始
「簡単だからマニュアル不要」と考えがちですが、緊急時対応・メンテナンス対応・運用上の注意点などを理解していないと誤停止や事故につながる可能性も。
原因別に見る失敗と対策
失敗原因 | 起きた問題例 | 適切な対応策 |
---|---|---|
検証不足 | 照明・段差で誤認識・停止 | 仮走行+現場検証の実施 |
動線設計不足 | 人とAMRが干渉し業務混乱 | 動線の分離/ゾーン設計 |
教育不足 | 操作ミス・保守対応の混乱 | 導入前に操作研修+マニュアル整備 |
失敗を避けるためのポイントを理解した上で、導入に成功した現場の実例も参考になります。詳しくは、以下のページをご参照ください。
→ 【導入事例】ピッキングAMRで倉庫作業を効率化|現場に合わないタイプを回避した選定ポイント
AMR導入前に確認すべき“落とし穴チェックリスト”
倉庫環境に合うAMRを選定するには、スペックだけでなく“現場条件に耐えられるか”を多面的にチェックする必要があります。
AMR導入前のチェックポイント一覧
チェック項目 | 確認内容 | 注意度 |
---|---|---|
通路幅マージン | AMR幅+100mm以上あるか | ★★★ |
人とAMRの交差ポイント | 頻度・タイミング・回避策があるか | ★★ |
棚構造のセンサー影響 | 下段/角棚でも認識精度が保てるか | ★★★ |
光環境の影響 | 照度・反射・逆光による誤検知がないか | ★★ |
教育・対応体制 | 説明資料やトレーニングが準備されているか | ★★ |
まとめ|AMR成功導入のカギは“現場とのすり合わせ”にあり
ピッキングAMRは、倉庫の自動化・人手不足対策として有効ですが、現場とAMRとの“相性”を見極めずに導入すれば、逆にトラブルの元になります。
失敗を防ぐには:
- 図面やカタログではなく、現場での仮走行や検証を実施する
- 人とAMRの動線が重ならないよう、設計を見直す
- 作業者が安心して使えるように教育とマニュアルを整備する
という3つの視点が不可欠です。
「AMRを導入すること」ではなく、「AMRを活用し、現場に定着させること」こそが本当の目的です。
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