「通路幅さえクリアしていれば、AMRは問題なく動くだろう」——そう信じて導入した結果、初日から停止トラブルが頻発し、現場は混乱。
実は、“通路幅が足りているかどうか”という基準だけでは、AMRの安定稼働は保証できません。旋回スペース、停止精度、センサーの誤検知、段差、照明干渉……。
導入前には見えなかった“狭小スペース特有の落とし穴”が、次々と浮き彫りになります。
この記事では、現場で実際に起きた失敗例をもとに、「なぜ通路幅だけでは不十分なのか」「事前に何を確認すべきか」を徹底的に解説。
“想定外”を防ぎ、安心して導入するための視点がここにあります。
“通路幅”だけでは不十分?見落とされがちなAMR選定ミス
「走行可能」=「安定運用できる」ではない
AMRのカタログを見て「最小通路幅600mm対応」とあれば、それだけで「うちの現場にも導入できそう」と判断してしまうケースが後を絶ちません。しかし実際の現場では、機体が通れることと、安定して稼働できることはまったく別問題です。カーブでの旋回、障害物との干渉、停止位置の精度など、考慮すべきポイントは多岐にわたります。
通路幅はクリアしていても、なぜ停止トラブルが起きる?
たとえば幅600mmの通路に本体幅550mmのAMRを導入したケースでも、停止位置の誤差が毎回10〜20mmズレるだけで棚と接触し、AMRが緊急停止することがあります。停止精度に加えて、積載物の重さによる慣性や床面の状態まで含めて検討しなければ、トラブルの原因となります。
AMRが「通れる」=「使える」ではない
【テキスト図解】
多くの現場で誤解されがちな通路幅とAMRの挙動の違い:
┌─────────────────────────────┐
│ ◯────→ 通路幅600mm ←────◯ │ ← 通過は可能
│ ↻ ↻ │ ← 旋回は困難・衝突リスクあり
│ ◯←──── 停止位置ズレ ────◯ │
└─────────────────────────────┘
▼よくある誤認
「通路に入る」=「安全に曲がって止まれる」ではない!
→ 旋回半径・停止精度・周辺干渉が導入の成否を左右する
失敗事例から学ぶ、AMR導入の“落とし穴”
段差・床材の影響でAMRが走行不能になった例
ある工場では、わずか1.5cmの段差によりAMRが停止してしまう事象が発生しました。導入前のシミュレーションでは問題なかったものの、実際の床材が滑りやすく、段差で空転する結果となりました。このように、床材の素材や摩擦係数がAMRの走行性能に影響を及ぼすことは少なくありません。
照明や反射物がAMRのQR/カメラ認識を妨げた例
別の物流倉庫では、蛍光灯の光がQRコードの反射に干渉し、読取エラーが連発。昼と夜で環境光が大きく変化する倉庫では、時間帯によって安定性が著しく異なるケースもあります。光の反射や影の入り方が予期せぬ誤認識を生むリスクとなります。
走行ルート上の死角でAMRのセンサーが誤作動した例
柱の影や壁の凹凸、パレットの出っ張りなど、人間の目では問題のないレベルでも、AMRのセンサーには大きな“死角”となります。特にSLAM方式では、地図にない障害物が突如現れることで自律判断に支障をきたし、誤停止や誤動作の原因となります。
代表的なAMR導入トラブルと原因・対策
トラブル事例 | 主な原因 | 具体的な対策 |
---|---|---|
床の段差で走行不能になる | ナビゲーションが段差に非対応 | 導入前に床レベル・傾斜を確認 |
QRコードの読み取りエラーが頻発 | 照明反射・汚れ・影の干渉 | コード貼付面と照明環境を調整 |
曲がり角でセンサーが誤反応 | ルート設計とセンサー配置のズレ | 旋回余裕+障害物除去の再設計 |
停止位置が毎回ずれて棚に接触する | 停止精度と制御設定が不十分 | 試験走行で制御チューニングを実施 |
見落としを防ぐための確認ポイント
ナビゲーション方式ごとの要注意ポイント
- 磁気誘導:あらかじめルートを床に埋設した磁気テープで誘導するため、ルート変更に弱く、段差や床の浮き沈みにも敏感です。
- QRコード誘導:QRコードの位置精度や貼り付け面の汚れ、光の加減に大きく影響されます。運用開始後も定期的な清掃と再貼付が必要です。
- SLAM方式:高い自由度が魅力ですが、周囲環境の変化(人の移動、荷物の増減)に地図が追いつかず、定期的なマップ更新が必要です。
施工・設置前にチェックすべき5つの要素
- 床材・段差の確認(素材、傾斜、耐荷重)
- 照明条件と反射の影響(直射光・スポットライトなど)
- ルート構造の死角(カーブ、T字路、棚配置)
- ナビ方式との相性(動作範囲、視認エリア)
- 試験走行と精度検証(仮設置と実走行テスト)
AMR導入前の5ステップチェック
STEP1|床材と段差の確認
└ すべり・凹凸・傾斜・段差を現地測定
STEP2|照明・反射物の影響確認
└ QRやカメラナビに干渉する環境光を把握
STEP3|ナビ方式ごとの動作確認
└ 磁気/QR/SLAMなど方式別に現場相性を確認
STEP4|走行ルートの死角・障害物チェック
└ カーブ・分岐・交差の物理干渉ポイントを洗い出す
STEP5|仮レイアウトでのテスト走行
└ 実機による仮設ルート運用テストで問題を可視化
まとめ:通路幅に加えて見るべき現場条件とは?
AMRは「使えるか」ではなく「使いこなせるか」で判断を
AMRの導入で最も重要なのは、“導入できる”ことではなく、“導入後に安定して使えるかどうか”です。通路幅のスペックチェックだけでは不十分であり、実環境との相性・死角・段差・光源・干渉物など、現場ならではの要因を徹底的に洗い出すことが、成功導入の鍵となります。施工会社やAMRベンダーにすべてを任せず、自社でも基礎知識を持ったうえで選定・検証に取り組むことが、安全な運用につながります。
資料ダウンロードはこちら
「通路幅は問題ないはず」──その油断が、初日からの停止トラブルを招く。
現場での“見落としやすい落とし穴”を避けるためのチェックガイドを、無料でご用意しました。AMR導⼊を成功させるために必要なことを、すべて事前に確認できます。