「雨が降ると搬送が止まる」「スロープで台車が滑る」「屋外と屋内をつなぐ自動化ができない」――
そんな現場の課題を抱える製造・物流・倉庫の担当者にとって、いま注目すべきキーワードが“屋外対応AMR(自律搬送ロボット)”です。

本記事では、実際の現場で「雨天でも動く」「段差を越える」「傾斜路を登る」といった性能を持つAMRを厳選。
全10機種を、用途別・性能別に比較しながらご紹介します。

自社に合うAMRを探すヒントがきっと見つかるはずです。

屋外AMRが注目される理由とは?

屋外での搬送は、屋内以上に多くの物理的・気象的な制約が発生します。たとえば、構内の建屋間にある段差、荷捌き場の傾斜、突然の降雨などは、従来のAGVや屋内用AMRでは対処が困難でした。

そうした中で、以下のような要件を満たす「屋外対応AMR」が注目されています:

  • 全天候対応(雨天稼働/防水構造):排水性・密閉性を確保した筐体と制御回路設計
  • 段差・傾斜対応の車体構造:大径タイヤ、サスペンション、4WDなどの走破性向上技術
  • 高精度な位置推定:RTKやSLAM方式により、屋外でも数cm単位の自律走行が可能

こうした技術革新により、工場構内の屋外搬送、倉庫〜駐車場間搬送、さらには農地や仮設現場への応用が一気に広がっています。

屋外環境は「ちょっと過酷だけど、なんとかしたい」と感じていた領域。そこにこそ、AMRの進化が活かせるタイミングが来ているのです。

屋内AMRやAGVでは対応しきれない“現場のリアル”

  • 雨や水たまり、ぬかるみが搬送を妨げる
  • 出入口の段差、構内間の傾斜スロープが障害になる
  • 屋根なしエリアでの耐久性・防水性が問われる

全天候型AMRの登場で変わる搬送の常識

  • RTKによるcm級の高精度走行が可能に
  • タイヤ構造・駆動方式の進化により、段差・傾斜対応も標準化

技術解説:ナビゲーション方式の違い

■ RTK方式(Real Time Kinematic)

[ 基地局(固定) ]
        ↓(補正情報)
[ AMR車体 ] ← GPS信号 → [ 複数の衛星 ]
        ↓(cm単位の位置補正)
[ 地図上で正確に自己位置を認識 ]

■ SLAM方式(Simultaneous Localization and Mapping)

[ AMR車体 ]
    ↓(LiDAR/カメラ)
[ 周囲環境をリアルタイムにスキャン ]
    ↓(自己位置を同時に推定)
[ 自律走行しながら地図を更新 ]

■ センサー選択式+自律制御(YFシリーズなど)

[ AMR本体 ]
    ↓(センサー選択:超音波 or LiDAR etc.)
[ 操作方式:自律走行 or 追従 or 手動 ]
    ↓
[ 用途に応じて切替可能 ]

用途別に選ぶ全天候型AMR10モデル【比較表付き】

本記事で紹介する全天候対応AMR一覧

  • UGV-1000A-JT(JATEN)|全天候構造・高耐荷重モデル
  • EffiBOT(丸紅情報システムズ)|牽引特化・屋外対応のカスタムモデル
  • AMRキャリ太郎(GEクリエイティブ)|低コスト・防水オプション対応・台車牽引
  • Mighty-LP(Piezo Sonic)|段差対応・登坂15度・不整地仕様
  • YF-150T(GEクリエイティブ)|4WD構造・追従+自律対応
  • Capra Hircus.pro(ミツバ)|全地形対応・遠隔操作型・農地活用向け
  • A025(FDATA)|屋外走行+屋内兼用・長距離構内搬送向け
  • VNK06-CE(VisionNav Robotics)|SLAM方式・高精度倉庫搬送モデル
  • YF-80T(GEクリエイティブ)|小型・追従機能付き・整地屋外向け

※同一モデルが複数のカテゴリに登場する場合があります。

雨・水濡れ環境に強いモデル(防水・全天候タイプ)

モデル名メーカー名ナビ方式最大積載/牽引特徴
UGV-1000A-JTJATENRTK1,000kg全天候タイヤ、防水ボディ
EffiBOT丸紅情報システムズ自律+Follow-me牽引500kg大型タイヤ、全天候構造
AMRキャリ太郎GEクリエイティブSLAM+AGVモード切替牽引500kg防水オプションあり、自律+手動切替

段差・傾斜がある現場に強いモデル(不整地対応)

モデル名メーカー名ナビ方式最大積載特徴
Mighty-LPPiezo SonicRTK+センサー約20kg段差15cm、登坂15度
YF-150TGEクリエイティブセンサー選択150kg4WD、追従対応、不整地対応
Capra Hircus.proミツバRTK+LiDAR約150kg(想定)全地形タイヤ、遠隔操作

構内間・長距離搬送に向いているモデル

モデル名メーカー名ナビ方式最大積載特徴
A025FDATARTK500kg屋外オフロード対応、4WS
VNK06-CEVisionNavSLAM600kg高精度マッピング、構内対応
UGV-1000A-JTJATENRTK1,000kg長距離構内搬送、全天候対応

コスト重視・牽引中心のモデル(スモールスタート向け)

モデル名メーカー名ナビ方式最大牽引特徴
YF-80TGEクリエイティブセンサー選択80kg整地向け、追従機能あり
AMRキャリ太郎GEクリエイティブSLAM+AGVモード切替500kg自律+手動切替、既存台車流用
EffiBOT丸紅情報システムズFollow-me500kgカスタム対応、簡単導入

自社に合うAMRを選ぶための3つの視点

  • 搬送環境を確認する:雨/傾斜/段差があるか?
  • 搬送対象を整理する:積載 or 牽引、重量は?
  • 操作方法を決める:自律・追従・手動切替の必要性は?

屋外対応AMRについてよくある質問

全天候型AMRとは、具体的にどんな環境でも使えるのですか?

「全天候型AMR」とは、雨天時の屋外や凹凸のある路面など、従来のAMRでは稼働が難しかった環境に対応するよう設計された搬送ロボットです。
ただし製品によって防水等級や走破性能は異なるため、「水たまりのある屋外」「段差10cm以上」など具体的な現場条件に応じて選定することが重要です。

段差や傾斜にどの程度まで対応できるのか、目安はありますか?

段差対応はモデルによって異なり、たとえばMighty-LPは15cmの段差、登坂角は15度まで対応する仕様です。
他のモデルも「10cm未満の縁石」や「傾斜5度のスロープ」など、仕様やタイヤ構造によって対応可能なレベルが違います。比較表の「特徴」欄をご確認ください。

屋外対応AMRでも補助金を活用できますか?

はい、多くのAMR製品は「ものづくり補助金」や「省人化投資補助金」などの対象になり得ます。
ただし、導入内容(自律走行の有無、設備連携など)によって可否が分かれるため、導入計画書や見積とあわせて専門家に相談するのが確実です。

まとめ:屋外対応AMRは「現場」で選ぶ時代へ

  • 雨・段差・傾斜など、AMR選定において見落とせない要素が増加
  • 用途別比較を通じて、自社現場とマッチするタイプを把握可能
  • 単なるスペック比較ではなく、現場視点での選定が失敗しない導入の鍵

現場の環境条件や搬送ニーズに応じたAMR選定を進めたい方へ。

「自律走行の基本」「屋内外対応の考え方」「段差・傾斜・雨天対策の比較ポイント」など、導入検討を整理する上で役立つ情報をまとめたガイドをご用意しています。

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