「人がやっていた搬送作業を、ロボットが自律的にこなす時代」。
そんな未来を現実のものにしているのが、近年急速に導入が進むLiDAR方式AMR(自律走行搬送ロボット)です。
特に製造業や物流の現場では、レイアウトの複雑化や人手不足といった課題に直面する中で、従来のAGV(無人搬送車)ではカバーしきれなかった“柔軟性”や“精度”が求められるようになっています。
そうした中で注目されているのが、LiDARセンサーを搭載したAMR。
LiDAR方式AMRは、空間を360度リアルタイムに把握しながら、自己位置を正確に推定して走行できるという特性を持ち、「障害物の多い倉庫」「ルートが頻繁に変わる製造ライン」「屋内外の移動がある現場」など、これまでロボット導入が難しかった現場にも対応可能な存在として注目されています。
ただし一方で、
「LiDAR方式」と書かれていても、搭載されているセンサーや制御アルゴリズムはモデルによって大きく異なる
という現実があるのも事実です。
本記事では、“LiDARの目”に着目した比較という、これまでにない視点から、
高精度マッピングが可能なAMRモデルを現場ごとにピックアップ。
さらに、センサー性能と実運用のマッチングという実践的な観点で、選び方のポイントや導入時の注意点までを網羅的に解説します。
「自社に合うAMRがどれか、なぜ“それ”なのか」
その判断材料を得られる一冊として、ぜひ最後までご覧ください。
LiDAR方式AMRとは?|他方式との違いと注目理由
LiDARとは?SLAMとの関係を整理
LiDAR(Light Detection and Ranging)は、レーザー光を使って周囲の距離情報を取得するセンサーです。
対象にレーザーを照射し、跳ね返ってくる時間や角度から周囲の構造をリアルタイムで認識します。
AMRでは、このLiDARを活用して周囲環境のマッピングと自己位置推定を同時に行う「SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)」技術が多く採用されています。
SLAMの仕組み(簡易フロー図)
[センサー入力(LiDAR・カメラ)]
↓
[自己位置推定(SLAM)]
↓
[最適経路算出・走行制御]
このように、SLAMはLiDARのデータをもとに自己位置を推定し、地図を構築。これによって、固定の誘導線がなくても自律走行が可能になります。
LiDARと他ナビゲーション方式の違い
方式 | 検出方法 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|---|
LiDAR | レーザー距離測定 | 高精度・全方位検知 | 倉庫・工程搬送全般 |
カメラ | 画像解析 | 光量に左右されやすい | 認識補助や補正向け |
磁気・QR | 床に敷設した誘導線を読み取る | 安価・ルート固定 | 単純往復・定型ルート |
LiDARは特に「周囲に動的な障害物が多い環境」「レイアウト変更がある工場」「柔軟な運用が求められる倉庫」などで力を発揮します。
現場で異なる、LiDAR方式AMRの最適モデルとは?
使用環境によって求められる精度・設置性は異なる
AMRにおいて、LiDAR性能は「どんな現場でどう使うか」によって活かし方が変わります。
例えば、狭い通路の倉庫では“停止精度”が重視され、製造工場では“ライン変更への柔軟性”が求められます。
現場別マッチング表
現場タイプ | おすすめモデル | 理由・特徴 |
---|---|---|
倉庫(棚間ピッキング) | Lexx500 / SEER AMR | 狭小空間・停止精度が求められるため、複合センサー搭載機が有利 |
工場(部品供給) | AMR-600-CE / S-CART-V100 | 工程変更や柔軟ルート対応にはSLAM搭載LiDARが有効 |
屋内外混在 | S-CART-V100 | 環境変化の多いルートに強い構成 |
レイアウト未確定の現場 | iRAYPLE AMR / Lexx500 | 設置自由度と調整性に優れるモデルが適す |
このように、現場の種類によって最適なセンサー構成と走行アルゴリズムは異なります。
高精度マッピングに強いLiDAR搭載AMR 5選【国内モデル】
製品別の特長とスペック比較表
No. | 製品名(メーカー) | 設置の簡単さ | 精度 | 保守性 |
---|---|---|---|---|
1 | AMR-600-CE(スタンダード・ロボット) | 現場改造不要で簡単導入 | 前後2つのLiDAR+SLAMで360°検出 | 自己診断・運行モニタリング機能あり |
2 | iRAYPLE AMR(リンクス) | 既存レイアウトに組込可能 | LiDAR+ToFカメラで角度自動調整 | 多様な障害物検知で安全性◎ |
3 | Lexx500(LexxPluss) | 既存台車使用可、1台から導入可能 | LiDAR+超音波+深度カメラ | API/I-O連携で保守も容易 |
4 | SEER AMR(PLiBOT) | 3Dカメラ+3D LiDARで柔軟設置 | 全周検知+360°セーフティー | 自動調整・自動認識機能あり |
5 | S-CART-V100(ニデック) | ガイドレス設置で工場向け | 3D-LiDAR+SLAMで高精度マップ | センサー性能で保守頻度低減 |
導入後の安定稼働や保守負担も踏まえると、「ただ高精度」なだけでなく「現場にフィットするか」が重要な選定ポイントになります。
導入時の注意点と失敗しない選定のヒント
導入前に確認したい3つの視点
- センサーの視野角・検知精度が現場に合っているか?
- 狭い通路や複雑な分岐が多い環境では、360°全周検知タイプが有効です。
- 環境(照明・構造物・床材)との相性
- 屋外や照明の変化が激しい環境では、LiDAR+ToFなどマルチセンサーモデルが安定します。
- 設置・設定にかかる手間と保守体制
- 実証実験や小ロット導入ができるモデルを選ぶと、スムーズな立ち上げが可能です。
まとめ|LiDAR方式AMRは精度と柔軟性で選ぶ時代へ
LiDAR方式AMRは、その検知性能と自己位置推定力の高さから、多様な現場ニーズに応えられる存在です。
特に、「レイアウトの変更に強い」「地図作成が不要」「人と共存できる安全性が高い」といった特性は、従来のAGVとは一線を画します。
導入前には「どんな現場で何を求めるか」を明確にし、センサー構成と適合モデルを慎重に選定することが重要です。
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