「AGVを導入したいけれど、中身がどうなっているか分からない」
「トラブルが起きたとき、何が原因なのか見当もつかない」
こうした声は、導入現場や運用担当者からよく聞かれます。
AGV(無人搬送車)は、単なる”走る箱”ではなく、複数のユニットが連携して動く高度なロボットです。
構造を理解しておくことで、製品選定・運用・保守・トラブル対応の判断が大きく変わってきます。
この記事では、AGVの主要構成要素とその役割について、専門知識がなくても分かるように解説します。
図がなくても“イメージできる”よう、比喩や関係性を交えながら立体的に理解できるように構成しました。
AGV全体の構造はどうなっている?
擬似構造イメージ(テキスト図解)
【AGVの構成イメージ(上から順に)】
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│ フレーム・筐体(外装) │ ← 人で言うと "皮膚"や"骨格"
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│ センサー類 │ ← "目・耳"の役割
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│ 制御ユニット(コントローラー) │ ← "脳"の役割
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│ バッテリー・電源 │ ← "心臓"に相当
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│ モーター・駆動系(車輪) │ ← "足"の役割
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このように、AGVは複数のシステムが階層的に組み合わさって動いています。
すべてが独立しているのではなく、「目が見た情報を脳が処理し、足が動く」といった
“身体的な連携”に近い構造になっている点がポイントです。
1. 駆動ユニット(モーター・車輪)
役割と種類
AGVの「足」にあたる部分で、走行・旋回・停止の動作を担います。構内でのスムーズな移動や狭所での方向転換には、適切な駆動方式の選定が欠かせません。
- DCモーター:速度とトルクを制御可能で、多くのAGVで採用
- インホイールモーター:ホイールと一体型で省スペース設計
タイヤの違いと用途
AGVは、走る地面によってタイヤ選定が重要になります。
- 小型キャスター:滑らかな工場床向け
- ノーパンクタイヤ:段差や屋外に対応
- 全方向駆動(オムニホイール):真横移動やその場旋回に最適
搬送対象の重量や床材の状態、走行ルートの曲がり角の有無など、現場ごとに適した駆動方式を検討する必要があります。
2. 電源系(バッテリー・電源制御)
バッテリーの種類と特性
AGVの稼働時間や可動率を大きく左右するのが、バッテリーの性能です。
- リチウムイオン電池:急速充電・長寿命・軽量で主流化
- 鉛蓄電池:コスト面で優位だが、重量や交換頻度が課題
給電方法
AGVは稼働を止めて充電が必要になるため、運用効率を高める充電方式が求められます。
- 自動充電ステーション:ルート上に設置し、自動でドッキング
- ワイヤレス給電:停止せずに少量ずつチャージ(一部機種対応)
導入時には「連続稼働時間」と「充電頻度」「充電インフラ配置」のバランス設計が重要です。
3. 制御ユニット(頭脳)
コントローラーの役割
AGV全体の司令塔。以下のような情報を統合し、瞬時に判断を下します:
- 地図と現在位置の照合(ナビゲーション)
- 目的地までのルート生成
- 障害物検知時の停止・再ルート
使用される制御装置
- PLC(シーケンサ):信頼性重視の産業用規格
- ROS(Robot Operating System):柔軟性・拡張性が高く、近年はAMR等で採用が増加
操作パネルや管理システムと連携し、AGVの動作状態やトラブルログも収集できます。
4. センサーと安全機構
主なセンサーとその役割
センサーはAGVの“目と耳”であり、安全性と自律性の要です。
- LiDAR:レーザーで周囲の障害物を検知(広範囲)
- 超音波センサー:近距離物体や人を検出
- 3Dカメラ:立体物・段差の認識に対応
- エンコーダ・ジャイロ:走行距離や回転角度の把握
安全機能の例
- 衝突回避機能(ソフト停止/急停止)
- ISO 3691-4等の国際規格に準拠した安全設計
- 非常停止スイッチの配置(本体/リモコン両対応)
5. 通信・ナビゲーション
通信方式
AGVはクラウドや上位システムと常時接続され、制御指示や運行状態のフィードバックを行います。
- Wi-Fi:屋内での安定通信に適する
- LTE/5G:広範囲・屋外でのリアルタイム接続を担保
- BLE:短距離センサー群やビーコン連携に利用
ナビゲーション方式
- 磁気テープ/QRコード:経路固定型でコストを抑えられる
- SLAM:自己位置推定でフレキシブル運用に対応
- GNSS/RTK:屋外や長距離搬送向け
ナビ方式は、現場の変化頻度・障害物の多さ・精度要求に応じて選定します。
6. フレーム・筐体構造
材質の違いと選定ポイント
- 鋼製フレーム:重搬送・耐久性重視の構内物流用
- アルミ・樹脂製筐体:軽量・デザイン性・省電力向け
筐体の堅牢性は、事故時の衝撃吸収やメンテナンスのしやすさにも影響します。
フレーム設計における工夫
- 点検口や操作スイッチの配置で整備性アップ
- IP54〜IP65対応で屋外利用時の安全性を確保
- LED表示灯や音声アラートなどの視認性向上
AGVの構造はタイプによってどう違う?
AGVタイプ | 構造的特徴 | 備考 |
---|---|---|
牽引型 | 高トルク駆動、連結器装備 | 重量物・長距離搬送に強い |
下潜り型 | 本体低床+リフター内蔵 | パレット搬送に最適 |
フォークリフト型 | 昇降・爪・荷重センサー一体構造 | 人手作業の代替に近い |
各タイプごとに「強みを発揮する場面」が異なるため、構造の理解が導入判断に直結します。
まとめ:AGVの“中身”を理解することで、現場の選定力が上がる
AGVの構造は複雑そうに見えて、各パートには明確な役割があります。
それぞれが「足・心臓・目・脳」として連携して動いていると考えると、理解しやすくなります。
導入前に構造を理解しておくことで、「どのタイプが現場に合うのか?」「トラブル時にどこを見ればいいか?」といった判断が格段にスムーズになります。
“構造を知る”ことは、ただの知識ではなく、自動化の設計者になる第一歩です。
現場の声に応えるAGVを選ぶには、表面的な機能ではなく、“中身”から見極めることが重要です。