「2Dと3D、どちらのSLAM方式を選べば失敗しないのか分からない…」
「カタログでは“高精度”と書かれていても、自社の現場で本当に使えるのか不安」
「屋外や段差のある現場でもマッピングが安定するAMRを選びたい」

SLAM方式の選定は、AMR導入の“成否”を左右すると言っても過言ではありません。
それにもかかわらず、多くの現場では「LiDAR?カメラ?」「2Dと3Dは何が違う?」といった基本的な判断軸が曖昧なまま選定が進んでしまうケースが少なくありません。

この記事では、そんな悩みを持つ現場担当者の方に向けて、
2D/3D SLAMの構造的な違いから、精度・適用環境・対応機種までを徹底比較。

単なる用語の解説やカタログスペックの列挙ではなく、
“自社の環境に本当に合うAMR”を選ぶための実践的な判断基準を、図解や比較表を交えて分かりやすく解説します。

SLAMとは?AMRにおける基本技術をやさしく解説

SLAMとは?地図生成と自己位置推定の技術

SLAMは「Simultaneous Localization and Mapping」の頭文字。
自己位置推定 + 地図生成を同時に行う技術です。

たとえば、倉庫内でAMRが自分の現在地を常に把握しながら、障害物を避けて動き、マップを更新していく。こうした“自律的な移動”を可能にするのがSLAM技術です。

なぜAMRに必要なのか?

当初、AGVは磁気テープやQRコードで設定されたルートを路線通りに移動するしかありませんでした。
SLAMを搭載するAMRは、環境を自分で分析して自らの通るべき道を選択することができるため、レイアウト変更や人的作業との共存に強い柔軟性を発揮します。

これにより、導入現場での即応性が高まり、ロボットの汎用性が格段に向上するのです。

2D SLAMと3D SLAMの違いを徹底図解

2D SLAMとは?

  • 使用センサー:2D LiDAR(水平面のみに照射)
  • 特長:床レベルの障害物を検知し、簡易マップを構築
  • 弱点:棚や段差、天井構造の認識ができない

比較的静的なレイアウトや障害物の少ない工場・倉庫内に適しています。

3D SLAMとは?

  • 使用センサー:3D LiDAR、深度カメラ、ステレオカメラなど
  • 特長:点群データから3次元マップを構築。立体的に環境を捉えられる
  • 弱点:高コストかつ高負荷なため、ハードウェアスペックも必要

人の出入りや高さのある障害物が多い現場では、3D SLAMが安定した自律走行に貢献します。

2D vs 3D SLAM比較表

比較項目2D SLAM3D SLAM
 センサー構成2D LiDAR3D LiDAR/カメラ
マッピング範囲水平方向のみ空間全体(高さ・奥行き含む)
精度中(反射や遮蔽に弱い)高(構造物も立体で認識可能)
コスト低〜中高め(センサー価格+処理能力)
処理負荷軽い重い(高性能CPU/GPUが必要)
推奨環境シンプルな屋内現場段差・人・障害物の多い現場

現場タイプ別|どちらが向いている?選定マトリクス

実際の現場で「どちらが適しているか」を判断するには、環境や運用条件をマトリクスで整理すると分かりやすくなります。

現場環境推奨SLAM方式理由
屋内/レイアウト固定2D SLAM安価でシンプル。段差や高さが不要
段差あり/多層棚3D SLAM高さ・奥行きを認識する必要がある
屋外運用あり3D SLAM+補正技術道幅の変化・光の乱れに対応しやすい
狭小空間・人と共存3D SLAM+カメラ柔軟な障害物回避と安全性が求められる

AMRを選ぶ際には、単にセンサー方式だけでなく「走行ルートの自由度」「棚の配置変動」「作業者との併走」など、総合的な判断が必要です。

SLAM方式別 対応モデル比較(2025年版)

2D SLAM対応モデル

モデル名メーカー最大積載量特長
LD-250OMRON250 kg頑丈・複数台連携対応。屋内向けの定番
MiR250MiR250 kg小回りが効き、狭小倉庫に最適
Thouzer BasicDoog120 kg追従機能も搭載。簡易な屋内外で活躍

3D SLAM対応モデル

モデル名メーカー最大積載量特長
LMR-400Hikrobot400 kg3D SLAM対応。点群処理で高精度マッピング
AIV-800Geek+800 kg3D LiDARで多層棚の搬送も可能

各モデルとも公式スペックに基づいており、方式ごとに用途や性能が明確に分かれています。

導入時によくある失敗と対策【現場の声あり】

よくある失敗例

  • SLAMマッピングが不安定。反射物や透明な障害物に反応しづらい
  • 自己位置がズレる。初期マップ生成時の精度不足
  • PoCは問題なしでも、現場に持ち込むと止まってしまう

対策のポイント

  • PoC段階でのマップ作成は、実運用環境に限りなく近づけて実施
  • 高精度SLAMを求めるなら、LiDARに加えカメラ搭載型も検討対象に
  • 棚や壁が頻繁に移動する現場では、定期的なマップ再学習を前提に選定

導入現場での“あるある失敗”を事前に知っておくことで、選定後の後悔を防げます。

まとめ|SLAM方式を見極めて自社に最適なAMRを選ぶために

2D SLAMは平面が主な屋内向け、3D SLAMは複雑な構造や屋外を含む現場に適しています。
方式ごとに対応するモデルを比較し、自社の現場条件に合った方式・機種を選ぶことが成功の第一歩です。

とくに3D SLAMはコストがかかる一方で、マップの安定性や障害物回避能力に優れており、環境変化が激しい現場では強力なパートナーになります。

一方、シンプルな搬送に徹する場合は、2D SLAM搭載機でも十分な成果を発揮できます。

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